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二部 その9 (王子様、現る!1)

ある晴れた日の早朝に、ドアがトントンと鳴ったので、眠気眼を擦りながらドアを開けたらそこにはおとぎ話から抜け出てきたような美丈夫が立っていた。

羽付き帽子からこぼれる金髪が朝日を受けてきらきらと輝き、澄んだ青い瞳、肩から裾まで刺繍の縫い込まれた上着と首元のフリルという一目で貴族とわかる風体。(しかもかなり上位の。なぜなら布地がいいから。ティナの買い物をするうちに布地やレースにも詳しくなっていき、上等の布地を誂えて正装している貴族というのは一握りのもの、ということがわかってきたから)

王子様然とした優し気な風貌のその青年が口を開いた。

「ティナ殿はここにいらっしゃるか?」

「・・・あ、ああ、・・・いるけど」

いかにもお貴族様という格好のこんな奴に見覚えはない。青年は帽子を脱いだ。

「申し遅れた。私はリン・シュタッドの従兄弟で、アルベルト・ハインリッヒ・スタインという。ティナ殿に用があって来たのだ。会わせてくれるか?」

ちょうどそのとき、寝間着姿のティナも眠い目を擦りつつ部屋から出てきた。髪もぼさぼさ、寝起きで半分目も開いていないというひどい恰好である。それを見た青年の目が見開かれた。

「ティナ!」

ダっと家の中に駆け込みティナの手を取った。

「やっと、やっと、お会いできました。この日をどれほど待っていたことか!再びお目にかかれて光栄です、ティナ嬢」

その言葉のまま、水色の瞳は喜びであふれていた。

驚いていたティナだが、あなた・・・ペル?とティナの唇が動いた。どうやらティナには覚えがあるらしい。

「そうですそうです!覚えていてくれましたか!あのペールです!やはり本物のティナ嬢だ!こんなにうれしいことはない!」

「あのー、いいんだけどよ、・・・オレら起きたばっかで」

これは失礼した。戸口で待たせて頂こうと青年はあっさり退散した。ふたりして視線を合わせ、とりあえず着替えようとそれぞれの部屋に戻った。

オレはさっさと身支度を整え、オーブンの火を起こした。フライパンを温め、卵を焼きながらヤカンもオーブンに乗せる。ヤカンから音を立てて湯気がでるようになってから待ち人を迎え入れた。

テーブルに着いた青年にお茶を出してやる。

自分はオーブンの火で軽く温めたパンの上に卵を乗せ、齧り付いた。ティナはまだのようだ。やがて気に入らないという顔で出てきた。髪がうまくできなかったようだ。

「あとでしてやるから、とりあえず飯くえ」

ティナにも同じものを出し、茶を入れてやる。

待ち人は朝食が終わるまで話をする気はないらしい。明後日の方に視線を向けて黙っている。

しゃくしゃくとティナも食べ始めた。

朝食の皿をかたずけ、お茶をもう一度入れ直したところで青年はこちらに向き直った。

「約束もなく早朝のお訪い、申し訳なかった。わたしはアルベルト・ハインリッヒ・スタイン。こちらのティナ嬢に話があって来た。」

わたし?とティナは不思議そうだ。

「遅くなって申し訳ない。あの約束を今、果たしてもいいだろうか?」

お前、なんか約束したのか?とティナを見るがティナは首をかしげるだけだ。

「あのとき渡した花束はお気に召しただろうか?」

嫌な予感がした。花束?あるよ、とロイが止める間もなくティナは席を立って部屋に戻った。

すぐに出てくると、手に小袋を持っていた。青年の前にそれを置くと、口を縛っていたリボンを解いた。中から乾燥した花びらが出てくる。ポプリらしい。

青年はリボンを手に取ると感慨深げに見つめた。そして徐に立ち上がるとティナの前に片膝をつき、胸に手を当てティンを見上げた。

「このアルベルト・スタイン、今、ここでティナ嬢に結婚を申し込む!」

・・・・・・はい??????


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