鞘に収まる話
「おまたせネー。二人とも仲良くやっていたカ? ・・・アイヤー!?」
戻ってきて早々に仰天するフェイ。
「ヨカッタネ、イマカラコノオトコ、セイバイスルアル」
朧木は全く動けずにいた。少しでも動けば切られる。その確信があった。
「何事ネ! 今日は朧木サンと戦う予定は無いネ!」
今日は、とつけるあたり、フェイもなかなか正直であった。
「ソレモコレモフェイヲオモエバノコトネ」
フェイがわなわなと震えている。
「そんなことしなくて良いネ。お前は中国におとなしく帰るヨ!」
フェイがその言葉を最後まで言い終えるか終えないかの瞬間、ヒュンという音がする。朧木が気がついたときには剣仙の剣はフェイの鼻筋に向けられていた。
「ヤハリワタシガイルトツゴウガワルイヨウアルナ? ソコヘナオレ。ドコノオンナニイレコンデイルカキカセテモラウアル」
フェイの顔色が真っ青になっている。彼もイーヌオの剣筋を見切れなかったようだ。汗をだらだらたらしている。
「そ、そんな覚えないヨー」
と、言いつつもフェイはイーヌオから視線をそらした。
「ウソツイタアルナ?」
ヒュカッ、と一閃される剣。朧木達が食事をしていたテーブルが真っ二つに切れた。店員達がおろおろとイーヌオたちを見ている。
「もう、お前に追いかけるのは嫌なんだヨー!」
フェイがここで本音を吐露した。その瞬間、目も止まらぬ動きをする剣。はらはらとフェイの上着だけが切り刻まれて落ちる。
「ジゴクヘイクアル。カクゴスルヨロシ!」
イーヌオが剣を振りかぶった。フェイは観念しているようだった。
「待つんだ」
制する声。朧木であった。その声に動きを止めるイーヌオ。
「ナニアルカ?」
「こんな事を僕が言うのもなんだが、イーヌオさんには暫く日本に滞在する事をおすすめするね。そしてフェイのことを見極めたら良い。君に本当にフェイがふさわしいかどうかをね」
「・・・ソウネ。ワタシモモットフェイノコトシリタイアル。ゼヒソウスルアル。フェイ、オマエノトコロニイクアルヨ」
フェイは何てこと言うんだといった表情で朧木を見ていた。
「あー。これは言っていいのかわからないが、僕はフェイにイーヌオさんとの間を仲裁して取り持ってくれるように頼まれているんだ。だから彼も全く気が無いわけではないと思う」
朧木はフェイをイーヌオに差し出すほうで考えが纏まったようだ。
朧木の言葉に気をよくするイーヌオ。
「ナラハジメカラソイッテクレルトイイアル。ソレジャア、フェイ。アナタノスミカニイッテイルアル。・・・イバショハモンカセイカラキキダシタアルヨ」
イーヌオはズカズカとその場を去って行った。呆然としているフェイ。
「朧木サン、困った事になったネー」
「フェイ、君は下手にカッコつけようとせず普段どおりの姿を見せてあげたらよい。それで愛想をつかされるならそれは自然な事だ」
「格好なんてつけてないネー。でも危ないところを助かったヨ。イーヌオが本気を出していたらこっちの首がはね跳んでいたヨ。剣の腕では敵わないネ。首の皮一枚で繋がったネ」
「君もとてつもない女性に好かれたものだな。常日頃の行いの問題かね」
「うっかり一夜の関係を持ってしまったネ。若さゆえの過ちヨー」
これは全面的にフェイが悪いなと思う朧木であった。
騒がしい夜は終わったが、喧騒の日常は始まったばかりだ。




