女の怪異
「フェイ。イツニナッタラケッコンスルアルカ?」
唐突なイーヌオの質問にフェイは口に含んでいた飲み物を噴出した。
「それは・・・自分の仕事がひと段落ついたらに決まっているネ。今は大事な時期ヨ」
朧木は、フェイのやつめ、なんだかんだ言って結婚する気なのかと思った。
「イツモオナジヨウナコトヲイッテイルネ。モウダマサレナイアルヨ」
「私仕事に目覚めたネ! もっと自分の限界に挑戦するヨ。だから他の事にかまっていられないネ!」
朧木は、フェイのやつめ、あからさまに嘘を言っているなと思った。当然イーヌオも疑惑のまなざしでフェイを見ている。朧木は口を挟めずにいた。どうもそのような雰囲気ではない。
「ワタシマチクタビレタヨ。フェイガイナクトモニホンノシゴトハウマクイクネ。ナントナクソンナキガスルアル。フェイ、イッショニチュウゴクヘカエルヨロシ」
「そんなことないネー! 私老師に必要とされてるヨー! ・・・たぶん」
「トテモシンジラレナイアル」
「本当のことネ! ・・・私トイレ行って来るヨ」
フェイはごまかし切れずに、いったん話の流れを変えようと席を立ちトイレへと向かっていった。その間、朧木はイーヌオと二人きりとなる。朧木はなんだか気まずかった。
「オボロキサン、フェイトハドウイウカカワリネ? ドウシガニホンノジュジュツシトテヲクンデシゴトヲスルトハオモエナイワルヨ」
「・・・僕とフェイは商売敵同士ですよ。ただ、今回はプライベートな問題で、あなたとの間を取り持ってもらいたいという相談がありまして協力しました」
朧木は正直に言った。下手なごまかしは不信に思われるからだ。
「・・・ナルホドソウイウコトカ。ワカッタアル・・・」
イーヌオがうつむいた。朧木はわかってもらえたのだろうかと思った瞬間、イーヌオの姿が朧木の目の前から消えていた。
シャッ!
横から朧木の首に剣が突きつけられていた。
「うわっ!」
「オマエヲタオセバ、フェイハチュウゴクニカエレルアル!」
それはそうかもしれなかった。フェイの仕事の最大の障害は朧木である。
「一体どこにそんな刀剣を・・・体が剣になっている!?」
朧木は驚いた。イーヌオは剣を持っていたのではない。腕が一本の剣となっていたのだ。そして恐ろしいほどの早い踏み込みで朧木の脇に付け、剣を朧木の首筋に向けているのだ。朧木は全く反応が出来なかった。彼女は間違いなく剣の達人である。
「ワタシ、コウイウモノネ。フェイ、イッテイナカッタアルカ?」
朧木はそんな事まったく聞いてもいないと思った。
「そうか。文献で見かけたことがある。君は剣仙と言う存在だな?」
剣仙とは体が剣で出来ている中国の妖怪だ。
「ソウアル。このキョリナラモハヤワガケン、カワセナイネ」
朧木、絶体絶命のピンチである。
と、そこにフェイがトイレから戻ってきた。




