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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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歓談?

 意外そうな表情をしたのはフェイであるが、話を聞いていたさくらも同じ表情だった。


「日常的・・・そうか。ならそれでお願いするネ・・・あとできっと後悔するヨー」


 フェイはぼそっと小声で言葉を付け足した。


「プライベートな相談と思っておくよ」

「頼んだのが朧木サンでよかったよー。実は日本にはあまり知り合いがいないネ。あの女には朧木サンは仕事上の付き合いのある相手だと伝えておくネ」


 仕事上の付き合い、間違ってはいない。たとえ切り結んだ相手同士であったとしても。


「しかし君も隅に置けないな。彼女さんを故郷へ残して日本に来たのかい」

「それはないネ! そんないいものじゃないヨー!」


 突如フェイが慌てた。一体話に上がる女性とはどういう関係なのだろうか。


「全く話が見えないままの気もするが・・・ま、なんとかしよう」


 朧木はフェイの頼み事を侮っていた。よくある男女の仲違いの仲裁をすればよいのだろうくらいにしか考えていなかったのだ。そのことを後ほど彼は後悔する。


「頼みにしているネ。当日は行きつけの中華料理屋で食事をするネ。また連絡するヨ。ではではー、サイツエン!」


 フェイは何度も朧木に礼をしながら去って行った。


「・・・彼もちゃらんぽらんだからなぁ・・・女性とどのような交際をしているかわかったものじゃないぞ」


 フェイの姿が見えなくなってから不安に駆られる朧木であった。

 さくらは一貫してニマニマしながらフェイの話を聞いていた。


「所長。なんだか面白そうな事に関わるんですね!」

「面白い、面白いときたか。確かに他人の色恋沙汰は聞いている分には面白かろう」

「他人の恋バナは大好物♪」

「・・・・・・・・・」


 自らの話の場合はどうなんだと尋ねかけたい朧木であった。


「で、所長はフェイさんともうまくやっていくつもりなんですね」

「そこ気にするのか。一応彼もそれなりの人物だからね。それに人徳を積む意味でも良いだろう」


 さくらは朧木が利益至上主義者じゃないことにホッとしていた。さくらは自覚していなかったが、さくらにとって朧木はヒーローであって欲しかった。



 フェイから依頼をされた土曜日。朧木は指定された中華料理屋に来ていた。一階はランチも受ける場所として開かれていたが。朧木は二階の大部屋へと来ている。店内は赤と金色で彩られ、派手さを好む中国人にも愛用されている。

 朧木は店の外で待っていた。夕方も終わり、夜に差し掛かろうという頃。待つこと十分。フェイが一人の女性を連れて現れた。長い黒髪にスレンダーボディ。服装は紅いチャイナ服。かなり目立つ派手な格好だった。


「やぁ、朧木サン。こちらイーヌオ。私の知り合いネ」


 フェイが隣に立つ女性を紹介する。


「フェイ。シリアイダナンテナニンギョウギナ。ワタシ、ニホンゴワカラナイトデモオモタアルカ?」


 イーヌオはカタコトで日本語をしゃべっていた。


「と、とんでもないネ! 適切な距離感で説明できたと思ったヨ!」


 イーヌオはフェイの様子にむっとしたままだ。


「はじめまして。朧木良介といいます」


「アナタガオボロキサンアルカ。ハナシハフェイカラキイテイルアル。アナタウデガタツトキイタネ」


 イーヌオは値踏みをするように朧木を見た。


「まぁまぁ、こんなところで立ち話もなんだネ。この店で予約とっているから食事しながら歓談するが良いネ」


 フェイが親指で背後の中華料理屋を指差した。一向はフェイのなじみの店の二階へと通される。


挿絵(By みてみん)


 大きな回転するテーブルに座る朧木達。朧木はフェイの対面に座った。イーヌオはフェイのすぐ隣に座っている。


「オボロキサン、アナタニホンノジュジュツシカ」

「えぇ、そうです」

「朧木サンとは仕事をしたこともあるネ。腕は私が保証するヨ」


 対立関係で仕事をしていましたとは言わない。


「フェイもかなり熱心に仕事をしています。僕もうかうかしていられないくらいでして」


 朧木は嘘をつかない範囲でフェイをフォローする。だが、イーヌオは朧木の言葉に懐疑的だった。


「ソレホントアルカ? チュウゴクデハケイコヲサボッタリシテイタネ。キュウニマニンゲンニナルトハオモエナイアルヨ」


 朧木はフェイを見る。ちゃらんぽらんなのは根っからのようだった。


「そ、そんな目で見られても困るネ! チンジャオ老師も日本に来ているヨ。サボったらどやされるネ」


 フェイは慌ててイーヌオに弁明した。


「ソンナコトイッテ、コッチデハドンナオンナニイレコンデイルアル?」


 イーヌオがさらに何かを言いたげにした時、ちょうど料理は運ばれてきた。


「そ、それよりせっかくの料理をたべるのが良いネ、ネ!」


 フェイはこれ幸いと何とかごまかした。

 次々と運ばれてくる料理はフカヒレやツバメの巣などの光球食材をふんだんに使った豪華なものだった。食事の最中は静かに時が流れていく。だがやがては食べ終わるものである。


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