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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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陰陽師のお仕事

 世は平穏そのものだった。行方不明児童の捜索を行ってから三週間が過ぎようとしていた。しかし、朧木に新たな仕事が来る気配は相変わらず無かった。


「すばらしい事に、今日も来客の予約がゼロですよ所長!」

「うむ! これで他の退魔師達が商売繁盛でもしてようものなら嫉妬で狂いそうになるな!」

「所長以外にも妖怪退治をしているような人っているんですか?」

「いるとも。ただ、本業は別の形をとっていることが多い。心理カウンセラーだったり占い師だったり不動産関係、地上げ屋だったり」

「・・・なんだか最後におかしな職業の方が含まれたような」

「地上げ屋はともかく不動産関連も霊能力者が関わっていることが多いんだ」


 さくらが小首をかしげる。


「なぜなんです? 関わりなさそうなんですけれど」

「事故物件の御払いさ」


 さくらが合点いったという風に頷いた。


「確かにそれはありえますねぇ!」

「後はビルの建設予定地の地鎮祭などを執り行ったりもする。これは神主が大半だが陰陽師がやる事もある。これも大事な行事なんだよ」

「それは少々古風ですね。効果はあるんですか?」

「もちろんあるとも。陰陽道でも立派な一部門で語り継がれている。陰陽道は天地の動きを観測する事で占う。天の動向を占うことを天文と呼び、地の吉凶を読み取る事を相地という。相地の本場は中国なんだ。中国では都城や邸宅、個人を祭る霊廟などを建設する際、事前に土地にまつわる禍をこうむらないよう相地を行う。日本でもこれらの思想と技術は取り入れられているんだ。西暦七〇八年の平城遷都の才などにその痕跡がみてとれる。それくらいに古い歴史のある分野なんだよ」

「うーん、なんだか難しそうな話ですね」

「これらは立派な技術、学問だったからねぇ」

「じゃあ、所長にもそういったお仕事が来たらいいのに」

「僕としてもお呼ばれされたいところではあるがさ。まー、これは現代においては神主さんがやるのが主流になっちゃったからね。なんともはや、祓い清めるというのは強い。場所を選ぶという発想じゃあないからね。自分たちに都合のよい土地に作り変えちゃうというのは望んだ場所に目的の物を建設する上では大変に便利だからなぁ」

「不動産関連にも需要のあるお仕事なのはわかりました。心理カウンセラーが妖怪退治する事もあるというのはなんなんです?」

「心の病、気の病と言うのは妖怪の仕業であることが多く、その原因を取り除くために相手をすることもあるらしい」

「現代の療法士も大変ですね」

「昔から怪異に遭遇して気が触れるなんて逸話はたくさんある。そんな怪異を相手にすることもあるんだからご苦労なことだよ」

「じゃあ、私が知らないだけで結構様々な職業に関わっているんですね」

「そう。普通に生きている分には関わらない世界だからね」

「じゃあ、所長の商売敵って結構多いんですね」

「住み分けは出来ているかなぁ。僕の場合はもっと直接的に人に害を為す妖怪の退治だからね」

「だから仕事の依頼がないのは良いことなんですね。誰も困っていない」

「そのとおりさ。昔ほど物騒な世の中じゃなくなったのも大きい」

「世の中には必要な御仕事なんでしょうが・・・」


 と、さくらが何かを言いかけた時、コンコンと玄関がノックされた。


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