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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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妖怪の住まう世界

 異界。真っ暗闇な夜の中のような世界。朧木達は迷い家を出てもとの世界を目指して歩く。出入り口は朧木が切り拓いた為、外の世界の明かりが入り込んでいて目立っていた。道に迷う心配は無かった。だが・・・。

 とてとてとて。何かが歩く音が聞こえ始める。朧木達が警戒した。・・・建物の影から人間の子供くらいの背の高さの長い髪を持つ何かが飛び出てきた。赤く輝く双眸。長く尖った牙。明らかに人類に友好な生命体には見えない。


「なんだあれ。あんなの見たこと無いよ!」


 洸が叫んだ。明らかに怯えている。


「・・・そうか。僕が開けた出入り口の光に釣られて出てきたんだ!」

「むむむ、これはいかんね。あれは魍魎!」


 猫まんが叫んだ。その声に朧木は霊剣を握る。

 魍魎。妖怪の同義語であるが古い伝承の妖怪を呼ぶときにこう呼ばれる。『耳袋』と呼ばれる伝承の中では葬儀の最中に黒い雲となって現れて死体を奪うという。また『本草綱目』という伝承の中では亡者の肝や脳を喰らうとされる。


「洸君、僕の背中に隠れて!」


 少年は頷いて朧木の背後に隠れた。

 魍魎の数は三体。数では同じだが戦えるのは朧木だけである。


「良介、やつらは人に害を為す妖怪だ。遠慮は要らない!」

「あぁ・・・諸天善神よ。この子を護りたまえ!」


 朧木は祈りの言葉共に剣を正眼に構えた。

 魍魎どもも馬鹿ではない。それぞれが散開し、朧木達を取り囲むように動いた。


「シャアアア!」


 猫まんが牙を見せて魍魎を精一杯威嚇する。


「くっ、つくづくヴォルフガング君を連れて来れば良かったと悔やまれる!」


 朧木は剣先で魍魎をけん制する。しかし、魍魎はまったく怯まず徐々に距離をつめてくる。


「ダッシャァァァ!」


 魍魎が雄たけびを上げて一斉に朧木達に飛び掛る! それぞれ一体ずつが個別に襲い掛かった。


「滅!」


 朧木は袈裟切りに霊剣を振るう。その剣筋は正確に魍魎を捉えていた。霊剣が魍魎を抉る。だが、朧木はその魍魎は見ていなかった。

 もう一体が猫まんに襲い掛かったが、猫まんは俊敏な動きでひらりとかわしていた。危ないのは洸だ。魍魎が襲い掛かる!


「月魄刃!」


 振り返りざまに朧木は二本指を立てて洸に襲い掛かる魍魎めがけて振るった。青白い三日月の形をした刃が飛び交う。

 ひゅぱひゅぱっ。

 三日月の刃は狙い違わず洸に襲い掛かっていた魍魎を切り裂いた。ドサリ、ドサリと倒れる二つの音。朧木は同時に二体の魍魎を退治した。


「グッ、グギャアアアア!」


 魍魎が狼狽してうろたえている。同時に二体もやられたのは計算外だったようだ。


「あとはお前だけだ。観念しろ!」


 朧木は最後の一体に狙いをつけて霊剣の切っ先を向けた。


「ギャアアアス!」


 魍魎は転進し逃げ出す。やつらに仲間意識など無い。倒された仲間を見捨てて最後の一体は逃走していった。

 朧木はなおも周囲を警戒する。・・・どうやら他に物の怪はいないようだ。


「ふぅ。何とか撃退できたか」


 朧木は霊剣をぴゅぴゅんと振るった。


「すごいや、おじさん強いんだね!」


 洸は霊剣を興味深そうに眺めている。


「洸君。他にあんな感じのやばそうなやつを見かけたことは?」

「ないよ。しばらくここにいたけれど、あんな奴ははじめてだ」


 猫まんが思案する。


「いくらなんでも三週間以上こんなところにいて危険に出くわさない理由はあろうだろうね。いままで無事だったのは迷い家が遭難者の避難先として現れる点から見て、結界のごとき働きも兼ねていたのだろうよ。なんにせよ人間の子供が出歩いていていい場所じゃあなかとね」


 朧木は猫まんの言葉に頷いた。


「そうだな。ここは危険だ。先を進もう」


 朧木は帰路を促した。


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