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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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仕事開始

 翌日。朧木は児童相談所を訪ねていた。児童相談所は役場のようにコンクリートで打ち立てられた建物の中にあった。

 朧木が窓口を訪ねると一人の担当の女性が回されて来た。応対用の別室に案内される。どうやら表で話せる内容ではないからだ。


「はじめまして。僕は朧木良介。探偵をやっています。今回は町議会議員の政治秘書である亜門からの斡旋で仕事の依頼を受け、微力ながら助力できるのではないかと思いやって参りました」


 朧木は深々と頭を下げた。


「なるほど。はじめまして。私はこの児童相談所で働いています玖珠木と申します。今回はご依頼を受けていただきまして誠にありがとうございます」


 玖珠木も頭を下げる。灰色のスーツに身を包んだ女性は児童相談所の一般職員だった。


「さて、いくつか御伺いしたいことがありまして。まず、今回児童が行方不明になったというのに捜査協力をされたのはあなた方ですよね。子供の親御さんは一体・・・」


 玖珠木はどうしたものかといった表情で考えたが、やがて口を開いた。


「今回の事件。ニュースになるほどあれだけ大騒ぎになりましたが、親御さんはいなくなっても仕方がないと考えているというか、なんと言うか無関心なんですよ。元々ネグレクトが問題で我々に通報がありまして、我々としては何とかできないかと母親の方には何度か連絡していたんです。今回の捜査依頼は親御さんを通してはおりません。というもの、親御さんは警察に任せ切りで特に他に動こうとはなさっておりませんでした。やむを得ず我々が動いた次第にございます」

「なるほど。流れはわかりました。相談のあった児童と母親は不仲だったのでしょうか?」

「それがですね。児童は母親を必要としておりました。母親が児童に対して冷徹に振舞っていたんです。・・・この話は今回の行方不明事件にどう影響しますか? 関係がない話ならよそ様の家庭の問題を第三者にべらべらとしゃべってしまっている事になって、後々問題になるのは避けたいのですが」


 玖珠木は自分の立場が危うくなるのを心配していた。それもそうだろう。


「あるかもしれません。なにぶん、頂いた資料だけではわからないことも多い為、些細なことでもいいんです。何か気づきにつながることがあれば。今、手がかりはないに等しいのですから」


 朧木は敢えて笑顔を作った。とにかくここは玖珠木に信用されなくては駄目だからだ。


「そうですか。難しいですね。警察の方も捜索していますが見つかっておりませんし、やはり難しいでしょうか・・・」

「ご安心ください。僕はこう見えても人探しは慣れておりまして。少なくとも一般人よりは違った探し方が出来る点が僕の強みです」

「そうでございますか。なら我々は我々のできることをやりましょう。さて、他に何かお聞きしたいことはありますでしょうか」

「少年には知人、親戚、友人など親しいものはいましたでしょうか?」

「少々お待ちを・・・ええと、少年には母方の親戚はおりますが、そちらには現れていないようですね。警察の方からお聞きしました。知人、友人と呼べるような親しい相手はいないようです。家庭不和を抱えている子は学校の人間関係でも苦労するケースがあるんです。もっと年齢が高ければ素行不良な仲間が出来るケースもよくありますが、小学生の段階ですと孤立するケースが多く、打ち解けられる相手は誰もいなかったようです」


 玖珠木は事前に用意していた資料を見ながらそのように答えた。少年に関する児童相談所として受けていた相談についての調査資料のようだった。


「ううむ。なるほど。わかりました。行方不明になる直前、児童は誰かにそのことをほのめかすようなことなどはなかったでしょうか?」

「少なくともこちらでは把握しておりません」

「そうですか。後はそうですね。行方不明児童が過去に家出したことなどはなかったでしょうか?」

「それはこちらで把握している限りではなかったと思います」

「となると、今回の事件は突発的にある日突然起こったという事ですか」

「そうなりますね。こちらとしても何度か児童とお話をしたことはあるのですが、今回のような事になるような予兆などは掴んでおりません」

「ふぅむ。実は三日前に少年の目撃情報があったらしいじゃないですか。少なくともその間少年はどこかで生活していたことになります。誰か親しい者の所に世話になっているのではと考えたのですが」

「それは警察の方も考えていたようなのですが、どう捜査してもそのような存在は見つからなかったそうです」

「なら少年は3週間近くの間、どこでどうやって過ごしていたのでしょうね。僕はそこが重要な気がして」

「確かにそれはありますね。警察の方はその点も捜索しているようなのですが、全く手がかりはないらしいです」

「ふむ。なら今回の件はそこを明らかにする事で解決するでしょう」


 朧木は顎に手を当てて思案しながらそう答えた。


「朧木さんはなにか確証がおありで?」

「今はまだ確かなことは言えませんが、少年が目撃された街を調査すれば何かわかるかもしれません。少年の行動範囲がどれくらいかはわかりませんが、小学六年生が一人で出歩けるような距離ならば、何とか僕の力で捜索できそうです」

「それは心強い限りです」

「さて、伺いたいことはすべて伺いました。後はフィールドワーク。と言いたいところですが、児童の母親にもお会いしてよろしいでしょうか?」

「今回の件は母親の方を介さずにご依頼してしまいましたからねぇ。難しいですがこちらから話を通しておきます」

「ご協力感謝いたします。では、これにて失礼致します」


 朧木は最後に深々と礼をしてその場を後にする。

 正直朧木が知りたかった情報は得られなかった。だが、親と不仲と言うならば家出の線はやはり濃厚だ。協力者の存在さえ掴めれば行方は追える筈だと言う確信が朧木にはあった。朧木は念の為、少年の母親にも当たっておこうと考えた。児童相談所を出た足で、そのまま資料に記載のある住所を目指した。


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