表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
62/228

戦いへの祝詞

「何だろう…私見てきましょうか?」


 さくらがとてとてと玄関口に向かおうとする。


「いや、待って。僕が様子を見よう」


 朧木は立ち上がると玄関に向かった。朧木はゆっくりと入り口のドアを開ける。彼が外の光景を見ると、事務所の壁にもたれ掛かるように狼が倒れていた。


「よう、メイガス。しくじっちまったぜ…」


 狼は傷だらけだった。朧木は事務所内に狼を運び、傷の手当をした。


「ヴォルフガング君、何があった?」


 朧木が狼男に呼び掛ける。


「どうしたもこうしたも、先程妖怪に襲われたばかりだよ」

「報復が来たか!」

「影法師くらいならどうとでも出来たんだが、黒衣の僧侶が現れて…やつに気をつけろ。相手の雰囲気に呑まれると身動きが取れなくなる」


 朧木は度々遭遇した黒衣の僧侶の事を思い出す。いつも圧倒感を持ち、巨大な何かと闘っているかのような錯覚をするオーラを放つ妖怪。


「初めは寺関係の妖怪と思ったが、あれは…」


 朧木は相手の正体に薄々感づいてきたようだ。


「まったく。しばらく平穏だったから、恨みを買いやすい経営者の下で働いていたことを忘れていたぜ」

「幸い傷は浅いようだ。しばらくは安静にしているといい」

「次はあんたを直接狙うようだ。気を付けるんだな」


 そう言うと狼は横たわって眠りについた。


「丼福君。君も気を付けたまえ。何をしてくるのかわからない連中だ」

「大丈夫です。と言いたかったけれど、やっぱり怖いです!」


 さくらは朧木にそう答えた。


「相手は犯罪組織だ。手段は選ばない事だろう。魔紗さんには相談済みだ。場合によっては彼女のところで世話になったら良い」

「わかりました。所長はどうするんですか?」


 朧木は壁掛けの霊剣、破軍を手に取った。


「相手は僕の周りの者を狙って恫喝しているんだろう。そんな連中に後手に回る道理はない」

「相手の居場所はわかるんですか?」

「いや、わからない。だが、即座に仕掛けてきたところから察するに近いところにいるようだ」

「そうだ。護法童子クンは? 彼にも手伝ってもらえば!」

「あー、彼なら先週付けで会社を辞めたよ」

「なんで見放されてるんですか!」

「護法童子には護法童子の人生や生活があるからねぇ」

「所長一人で相手にできるんですか?」

「厳しい相手だ。誰かを守りながらでは手が回らないかもしれない。他所に協力を仰いでいたのは正解だった」


 朧木は懐の式神召喚符の確認をした。幸い一枚あった。


「今日のところは魔紗さんのところに行きますね。なんだか帰り道が怖いです」

「教会まで送ろう」

「私も戦えたら良かったのに……」


 さくらは心底悔しそうだ。彼女は人に恐怖を与えるべく動くものが嫌いだった。


「戦えても妖怪を倒すのは楽ではない。今回は僕に任せておけ」


 朧木は戦いの覚悟を決めていた。心の中で唱えるのは、いつも戦いに赴く前に唱える前口上。市井の人々の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ