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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
58/228

式神招来。きませり、花の精

 降りた先には影法師が待ち構えていた。朧木がエレベーターから降りたところへと斬り掛かる!


「月魄刃!」


 朧木の立てた2本の指より飛ぶ三日月。光輪は影法師を切り裂く。


「ぐわぁぁあ!」


 影法師は絶叫を上げて黒い塵となって消える。

 唐突に聞こえてくる拍手。


「やるじゃないか。退魔師のほうかい。だが、この人数差を相手にどこまでやれるのさ!」

「やってみせるさ!」


 朧木は月魄刃をクルクルと回転させ、自分の体の周りを周回させる。


「セイヤァー!」


 叫びながら影法師達が斬りかかってくる!


「月は廻る。全天を廻る」


 朧木がそう叫ぶと、月魄刃が地球を公転する月のように朧木の周りを回転する!

 ドガッ! 月魄刃が影法師を弾き飛ばす。

 その光景を見た入り口にいた女が一歩前に出た。


「影法師じゃあ相手にならないのかい。ならアタイが相手になろうかね。アタイは鈴鹿御前の転生者。そこらの者とはわけが違うよ!」


 鈴鹿御前は刀を手にしていた。

 影法師達が朧木の周りをぐるりと取り囲みながら道を開ける。

 影法師達は朧木の逃げ道を塞いでいた。


「また転生者か。君たちはなぜに前世にこだわる!」


 鈴鹿御前が一気に間合いを詰めて切りかかった。朧木はバックステップをしながら月魄刃を放つ!


「軌道は読めている!」


 鈴鹿御前はそう叫び、刀を前に構えた。

 カキィン。月の刃が鈴鹿御前の刀とかち合う。


「沖田君は倒せたのに、君のほうが強いというのか?」


 朧木は驚愕した。転生者とはいえ人間だ。その人間が術を見切り打ち破る。


「まさか! あの子は最近覚醒したばかりの子。本来ならあんたみたいな陰陽師に敗れるような者じゃあ無いでしょ」


 ヒュカッ! 横から影法師が朧木に斬り掛かる!

 ザスッ! 刀が軽く朧木の腕を切り裂いた。


「くっ、多勢に無勢!」


 式神を召喚するスキも無かった。魔術師の類が肉弾戦をしているのだ。健闘したほうだろう。


「飛んで火にいるなんとやら。その力、発揮される前に潰させてもらうわ!」


 鈴鹿御前は油断なく間合いを詰める。絶体絶命。狭い屋内に圧倒的な人数差。


「油断も慢心も無いか……」


 朧木は斬られた腕を抑えてうずくまる。

 と、その時であった。

 バタン!と勢い良く非常階段の扉が開け放たれる。


「朧木良介、何をやっているの!」


 魔紗だった。あっという間に近くにいた影法師を切り捨てる。

 鈴鹿御前は新たに現れた敵に気を取られ、朧木へのマークが緩んだ。

 今だ! 朧木は立ち上がる。


「・・・・・・諸天善神に願い奉る。陰にひなたに歩く道。市井の者の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を」


 朧木良介の覚悟。自らを奮い立たせる。踏み出されるステップは呪術的歩法の禹歩。


「なんだい。小粋にステップなんで始めちゃってさ! 何を見せてくれるっていうの?」


 鈴鹿午前が笑う。

 朧木は構わず掛け声を続ける。


花勝負(はなしょうぶ) いずれがアヤメ かきつばた 十二ひとえに 美しかりけり」


 女を花に見立てた花勝負。花の菖蒲と掛けて歌うはアヤメかカキツバタ。

 源頼政が鵺退治後に菖蒲前と言う美女を宮中から賜る際に、十二人の美女の中から菖蒲前を当てなくてはならなくなり和歌を歌った。朧木は十二単で宮中の女性を表現しながら、十二人がひとえに美しかったと故事を歌う。

 朧木は式神の召喚符を投げ払った。ひらひらと舞う召喚符は光り輝き、やがて菖蒲柄の十二単を着た女性の式神が姿を表す。


挿絵(By みてみん)


「式神ってやつか……。これはちょいと予想外だけれど、その程度で!」


 鈴鹿午前ははじめこそ驚いていたが、すかさず刀を構えなおす。


「花の精、あやめ!」


 朧木は式神の名を呼んだ。

 花の精は刀を手にしていた。刀を持った花、鈴鹿御前との花勝負。

 朧木の呪術的布陣は整った。その場の流れは一人の陰陽師が掌握していた。


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