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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
51/228

犯人の特定。そして……

 三十分後。ホテルのロビーに人が集められた。

 一同を前に朧木が前に出る。


「皆さん。よくお集まり頂きました。今回の事件。ようやく犯人を知る事ができました」

「あなたは…刑事さんと一緒にいた…」

「ようやく私達は開放されるのね!」

「じゃあ、犯人は捕まえられたのか!?」


 など、どよめきが走る。


「まぁ、落ち着きください。この度の一件。実は巧妙に犯人に外部の者の犯行に見せかけられていました」


 朧木は周囲をなだめながらそう説明した。

 高梨が一歩前に出る。


「そうは言いますが、我々は十八時頃に被害者から夕飯の誘いのメールを受けました。それ以後はそのままその場で過ごし、誰も一人きりにもなっていない。いつ内部の人間が犯行を行うんです?」


 朧木はやはりそう思うかと言わんばかりにため息をついた。


「そのメール。たしかWebメールだとおっしゃいましたね?」


 朧木は高梨に尋ねる。


「そうだが、それが何か?」

「Webメールはアカウントのログイン情報があれば誰でもメールを送信できます。夕飯時に時間の指定をしたのは犯人にもわかる動向の内容、かつ事件発覚までのアリバイ工作の為でしょう。単刀直入に言います。被害者はその時刻には既に死んでいる可能性があります!」


 朧木の言葉に一同は驚いた。


「そんなバカな! では松葉さんはいつ殺害されたと言うんです!」


 木藤さんが取り乱している。それもそうだろう。事件が内部犯の仕業で、十八時には既に被害者が殺害されていたのならば、自分達は殺人犯と談笑していた事になる。


「木藤さん。それはですね。あなた方が松葉さんと別れてから十八時までの間でしょう。犯人はWebメールもアリバイ工作に用いようとしている」


 明日が朧木と木藤の会話に割って入る。


「待った! 犯行現場はどうなるの? ホテルの従業員がやってくるまでは鍵がかかっていたのよ? 犯行現場は密室になっていたのよ。それはどう解決するわけ?」


 明日が一気にまくし立てる。


「その点が今回の問題点ですね。犯人の最大の失敗は人外のモノの仕業を疑われた事」

「なんですって!?」


 明日は衝撃を受けているようだ。朧木は周囲の警官たちを見回しながら口を開く。


「犯人最大の失敗は被害者の殺害方法。まずは被害者の首をねじ切るという点。さらにある痕跡を隠蔽しようと遺体を損傷した点。これは犯人が残された痕跡から特定されるのを防ごうとした為。つまり犯人にはかなり都合の悪い話となる」


 誰かがゴクリとつばを飲む音がする。その所業、人間にとっては化け物はまさしく化け物だということだ。


「そういえば、あんたは一体何者なんだ?」


 青木が朧木に尋ねた。


「申し遅れました。僕はこの街で退魔師をやっている探偵の朧木良介と言います」


 一同にまたしてもどよめきが走る。当然だろう。退魔師というのはあまり一般的でない。殺人事件がただの殺人事件ではなくなったのだ。


「まて、退魔師だと? ではこの事件は初めから化物絡みが疑われたということか…」


 高梨が何かを言いかける。一般人にはまだ知らされていなかったのだ。今回の事件が化け物絡みの事件であると。


「そうです。今回の事件には人外のモノが絡んでいる。犯人の最大の失敗です。その犯人は、あなた方の中にいる!」


 朧木はズバッと言い切った。


「あ、あの、朧木さん。あなたは化物の正体が何なのかわかったのですか?」


 刑事さんが横から朧木に尋ねてきた。


「可能性の一つですがね。その正体は西洋の吸血鬼。ヴァンパイアです。奴らは霧にもコウモリにも化けられる。些細な隙間から部屋を出入りできるのです」


 朧木がそのように告げた時、被害者の同行者は皆それぞれから距離を取った。誰もが疑心暗鬼になっていた。


「お、朧木さんは誰がそのヴァンパイアであると?」


 刑事が恐る恐る朧木に尋ねた。


「事件で犯人に疑われそうな関係者の中で、犯行から最も遠く疑われなさそうな立ち位置を取り続けている…明日光さん。貴方です」


 その場にいた誰もが明日光を見る。


「待ってよ! 何を根拠にそんな…」


 明日光は弁明しようとしている。


「メールが来たという十八時には被害者はすでに死んでいたことになります。ならば殺されたのはその前。木藤さんは外出していて街中の街頭カメラに写っているので宿泊施設にいなかった。他の二人にはアリバイがある。一人きりでアリバイもなく、どこで何をしていたかもわからないのは明日光さんだけだ。…実は僕、先ほど厨房である食材を確保してきました」


 朧木は脇においてあった袋をガサゴソと漁る。中からはニンニクが出てきた。


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