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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
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事件の調査

 十五分後。ホテルのフロントバックルームに被害者の同行者四名が集められる。朧木は椅子に座ったまま来訪者の動向を伺い続ける。刑事が質問する役となった。

 相手は正体不明だが化物の可能性もあるためだ。朧木は用心しながら訪れる人の一挙手一投足を伺う。

 一人目が青木静雄(あおきしずお)。男性。三十五歳。被害者との関係は友人関係。


「刑事さん。お話とはなんでしょう。既に必要な話はしたと思いますが」


 青木は来るなりそう言った。


「まぁまぁ。我々は事件を整理していました。もう一度お話を伺いたく思いまして」


 青木はしぶしぶ椅子に座る。


「十五時に松葉さんと別れてから十八時まではフロントロビーで高梨さんと話をしていましたよ。その後、十八時頃に女性陣と合流しました。それからは四人で夕飯時まで談笑していましたね。私が事件に気がついたのは皆と同じ、夕食の時間ですよ」


 朧木は黙って話の内容を書き留めている。


「皆と同じと言うのは、夕食時には全員が同じ場所にいたという事ですか?」


 朧木は少し意外そうな表情をした。


「そうです。事件発覚時は皆で食事をしていましたので」

「そうなると、事件発覚時は皆同じ場所にいたわけですね?」

「えぇ、いましたよ。これは他の三人に聞いても同じ答えとなるはずです。もしかして、我々が疑われていますか?」


 青木は興奮気味に尋ね返してきた。


「いやいや。状況を整理しながらお話を伺っているだけですよ。わかりました。他に何か気になる点などはございませんか?」

「他には…何も変わったこともありませんな」

「ご協力ありがとうございます」


 青木が退出し、やがて二人目がやってくる。二人目は高梨拓馬(たかなしたくま)。男性。四十一歳。被害者との関係は仕事上の関係。


「刑事さん。あれから何かわかりましたか?」


 高梨が刑事に開口一番質問を投げかける。


「只今捜査中です! 念の為、今一度お話を伺いたく」

「えぇ、良いですよ。松葉さんと別れてからしばらくは青木さんとロビーで話し込んでいました。十八時頃ですかね。後から女性二人もやってきまして。他の同行者三人といる時に、松葉からwebメールで『十九時ぐらいに皆で揃って夕食にしよう』と連絡がありまして、予定の時刻まで四人で揃って時間を潰していたのですが、松葉さんだけが来ていなくて、それで居合わせたうちの一人が部屋まで迎えに行ったんですよ。その時に松葉さんが殺されていることに気が付きました」


 朧木は少しばかり気にかかるところがあったようだ。カリカリと何かを書きとどめている。

 刑事が話を続ける。


「では、十八時に連絡がついたのを最後に、その後の様子はわからないわけですな」

「はい、そうです」

「わかりました。ありがとうございます」


 高梨が退室して三人目が入ってくる。三人目は木藤玲香(きどうれいか)。女性。三十一歳。被害者との関係は知人関係。第一発見者の一人である。


「刑事さん。まだ犯人は見つかりませんか?」


 木藤は声を震わせながら刑事にそう尋ねた。


「現在捜査中ですが、未だ足取りも掴めず…念の為もう一度お話を伺っても良いですか?」

「わかりました。協力します! 松葉さんと別れてから夕方まで、私は外出していました。十八時頃にみんなと合流しまして。私達は十九時に夕飯の待ち合わせをしていました。時間になっても松葉さんが一向に姿を表さないので、私が松葉さんの部屋まで迎えに行ったのですが、部屋のドアを叩いても全く反応が無いので、もしや具合を悪くしているのではと思い、ホテルの方に相談してマスターキーでドアを開けてもらいしました。そうしたら、変わり果てた松葉さんの姿が…」

「他に何か怪しい点はありませんか?」

「わかりません……」

「ありがとうございました」


 木藤は退室した。 


「刑事さん。彼女が外出していたという記録は?」


 刑事がフロントバックルームの監視カメラを指差す。


「このホテルは出入り口付近に監視カメラが有りまして、彼女の言うとおりの時間帯に外出して戻ってきています。また、町中の監視カメラにも彼女の姿があり、完全にアリバイがあります」


 朧木は「ふむ」とだけ呟いた。

 そして最後の四人目が入室する。

四人目が明日光(あけびひかり)。女性。二十七歳。高梨と同じ会社に所属。松葉とも交流あり。


「もう。何度もお話したと思いましたが?」


 明日は不機嫌そうにそう言った。


「まぁまぁ、そうおっしゃらず! 何卒捜査にご協力頂きたく」


 明日は面倒そうに髪をかきあげた。


「仕方ないわね。どこから話したらいい?」

「他の方と同じように松葉さんと別れてから事件発覚までの間で結構ですよ」

「松葉さんとは十五時過ぎに別れてから十七時くらいまでは一人でいましたよ。夕飯時に木藤さんが松葉さんを探しに行ったら事件発覚。あと皆さんと同じ話になるかと」

「なるほど。わかりました」


 明日は退出していった。

 被害者の同行者達は全員その場を立ち去った。


「これで同行者は全員です。朧木さん。何かわかりましたか?」

「まだ、確信は持てませんが。刑事さんの見解は?」

「本来はおなしするようなことではありませんが、朧木さんには協力頂いておりますので特別に。十八時までは被害者と連絡がついたと同行者全員が言っていましたので、事件が起きたのは十八時から事件発覚までの間。その間に被害者の部屋に向かったと言うのが第一発見者の木藤さん。今は木藤さんに疑いがかけられています」


 朧木は「うーむ」と唸った。


「気にかかる点は他にもありますが、一度事件現場も見ておきましょう」

「わかりました。案内しましょう」


 朧木は刑事に連れられて殺人事件の現場となった宿泊室へと向かった。


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