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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
45/228

乱入者

 その時であった。

 パチパチパチパチ、と拍手が鳴った。

 朧木とフェイ・ユー達は拍手の方向を見る。


「道士と陰陽師の闘い、なかなかに良い見世物でした。しかし、きちんとその男の息の根を止めるところまでやっていただけないとねぇ」


 言葉の主は朧木達がいる場所から少し離れた丘の上に立つのは黒衣の僧侶。


「一体何者ネ?」

「いやいや、名乗るほどのものではございません。なにせ、あなたがたは皆ここで死ぬのですから!」


 黒衣の僧侶から圧倒的なプレッシャーが放たれる。フェイ・ユーが怯んで後ずさる。


「なぜお前がここに……」


 朧木は未だに相手の正体がわからなかった。正体を看過しなければ、相手の妖術に無防備となり危険だった。

 現にフェイ・ユー以外の門下生達は皆黒衣の僧侶のプレッシャーに呑まれて動けなくなっていた。


「久しぶりですね。陰陽師。今回は諸事情によりあなたに肩入れしようかとも思いましたが止めです。お前たちはいずれ禍根となる。やはり術師は危険だ。この場で始末させて頂きましょう。やれ、影法師!」


 黒衣の僧侶の背後から天蓋を被った影法師達がわらわらと現れ、すくんで動けない者たちに襲い掛かる!


「お前たち、何をやっているネ? じっとしていたらやられるヨ!」


 フェイ・ユーの言葉を彼の手下たちはただ聞き流す。ガタガタ震えながら黒衣の僧侶を見上げているばかりだ。気を飲まれ、ひっくり返っている者もいる。

 影法師達がそんな彼らに斬りかかる! バタバタと倒れるフェイ・ユーの手下達。影法師に斬られた者は魂を傷つけられて昏睡状態に陥る。最悪の場合、衰弱して死に至る。


「ホッホッホ! 道士共は修行が足りませぬな!」


 フェイ・ユーも黒衣の僧侶の雰囲気に圧倒されかけているが、門下生たちの手前で情けない真似は出来ぬと持ちこたえていた。

 そこにデモを行っていたリーダー格の幽霊が割り込んだ。


「貴様、さては西国の妖怪か? 何のつもりだ?」


 黒衣の僧侶がリーダー格の幽霊相手に身構えた。


「何だ貴様は、私を見ても動じないとは。さては人間の幽霊ではないな!」


 黒衣の僧侶がリーダー格の幽霊を睨みつけた。

 リーダー格の幽霊はあっという間に泥だらけの江戸時代の農民の姿に変わった。


「俺の名は泥田坊。この土地を守らんが為にここに居る。西国の妖怪よ、なんのつもりでこの地の問題に関わる? 答えろ!」


 幽霊を率いていたリーダー格が名乗った。

 黒衣の僧侶は「カカカ!」と笑った。


「答えるはずがありますまい! 下がれ、下等妖怪め!」


 黒衣の僧侶と泥田坊は睨み合う。

 そんな状況の最中、朧木はダメージから完全に立ち直り、周囲の様子を分析していた。

 幽霊のデモを先導していたのは妖怪だが、どうやら妖怪同士で揉めていた。

 戦況をひっくり返す一手を探す。

 今無事なのはフェイ・ユーと自分だけ。周囲は影法師達が囲んでいる。黒衣の僧侶は泥田坊が相手取っているので、影法師を叩ければ十分そうだ。

 困難な相手である黒衣の僧侶。朧木の脳裏に浮かぶのは三人の侍。

 朧木は戦う覚悟を決めて立ち上がった。


「・・・・・・諸天善神に願い奉る。陰にひなたに歩く道。市井の者の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を」


 朧木良介は戦勝祈願の祝詞をあげる。その台詞に迷いは無い。彼はいつだって市井の側に立つ。

 同時に行われる禹歩。反閇だ。周囲を清めて良い気をもたらす。


「三匹の おとこ集いて 舞う紙よ 悪党どもの 成れの果て」


 朧木は懐から3枚の式神符を取り出す。歌った和歌は3匹が切る! 矢坂 平四郎が悪党を切り捨てた後に刀身をぬぐった懐紙を舞い散らせる動作を真似て式神符を投げ払う!

 歌ったのは戦勝の和歌だ。

 式神符が光り輝く。そして後に残ったのは3体の式神。刀を持った式神2体と仕込み槍を持った式神が1体。


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