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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
39/228

戦勝祝い

 世の中の動向など全く気にも掛けていないであろう朧木探偵事務所は賑やかな場となっていた。

 狼男は狼の姿になっている。さくらが猫と狼を見比べる。


「朧木さん。ペットを増やすんですか?」

「何を言うか。彼は貴重な戦力だ。契約社員の護法童子が雇われ止めをしそうなんだ。このままでは次月更新が危うくてね。代わりの戦力が欲しかったところだ」

「誰ですか! それになぜ雇用主が力関係で負けているんですか!」


 さくらは脱力した。

 さくらは護法童子なる従業員がいることを知らなかった。だから狼男を捕えたのが護法童子である事も知らない。


「狼男君の働きで攫われた君を見つけられたんだから、大活躍だったんだよ」

「そういえば、狼男さんが通り魔じゃなかったんですよね?」

「そうだよ」

「それならば、本物の通り魔はどうなったんですか?」


 朧木は笑顔を浮かべた。余裕の笑みというものだ。


「それはもう捕まえた。この間の神主さんが依頼してきた失せ物を所持していたよ。事件は一石二鳥で解決してくれて何よりだ。まぁ、いくつかは問題があるがね」

「何です?」

「失せ物の折れた刀はナイフに加工されて、通り魔の凶器に使われちゃってた。事件の証拠品として、警察に押収されたままなんだ。事件が解決するまでは返却されないだろうから、神主の依頼が達成されるのはまだまだ後かな」

「一応、成功報酬は望めそうなんですね」

「そりゃあ、僕が前線に立って通り魔を捕縛したからね。ナイフの所持者は沖田総司の転生者らしかったが、かつての敵も味方もなくなった世界でひとり落ちぶれたものだ」

「前世が有名人でも現世では違ったんですか?」

「折れた刀は繋ぎ合わせようとも元通りにはならないんだ。同じように今生で前世の人間になどなれないものさ。で、通り魔事件については解決した。もう一つの問題は…君を拐った黒衣の僧侶が何者なのかわからなかった。影法師を従えていた事から妖怪なんだろうが、何者なのかあたりもつけられなかったよ。しかも組織で動いていると来た」

「私は気を失っていたんで、何がなんだかわからないです」

「なら、僕らは犯罪組織を敵に回したかもしれない。それを心に留めておくだけで十分かな。今回は相手が引き下がったが、次もそうするとは限らない。覚えておいて欲しい」


 さくらは素直に頷いた。内心はそんな組織、暴いてやろうと意気込んでいるが。危なかしい子だった。


「朧木さん。今日は事件解決のお祝いですか? しましょうよ!」


 さくらが話を持ちかける。朧木は笑った。


「いいね! たまにはそういうのも。みんなお腹が空いただろうし、何か出前でも取ろうか!」


 猫まんがガバッと起き上がった。


「良介。まぐろ」

「何だい、猫まん。そうだな。お寿司にしようか」


 さくらが不思議そうに首をひねる。


「猫って泳げないのにどうして魚が好物なんだろう」

「なんだい。この子ったらやぶからぼうに。猫は猫でウミネコって言うのもいるくらいだから、魚が好きでも良いじゃないか」

「猫まん、それって鳥だよ……」


 さくらが珍妙なものを見るような目つきで猫まんを見ながらそう呟いた。

 その間に朧木がどこかへ電話を終えていた。


「特上のお寿司を頼んだ。マグロ尽くしだよ。当然サビ抜きだ、猫まん」

「良介、よくやった!」


 猫まんが手ぬぐいを被りソファーの上に二足歩行で立ち上がって、ええじゃないかええじゃないかヨイヨイヨイ!と掛け声を上げて動きだす。

 ご機嫌の化け猫はキレッキレのムーブで踊りを披露した。


「騒がしいところだぜ……」


 寝そべった狼がポツリとそう呟いた。

 と、ドンドンと事務所の玄関を叩く音が聞こえた。


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