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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
34/228

妖怪の手下

 狼が風上に向かって鼻を向けた。


「・・・・・・どうやら犯人はこの付近のようだぜ」

「ここは・・・沖田が僕を呼びつけようとした廃工場のある辺りだな・・・そうか。そこか」

「廃工場? どうやら当たりのようだ。なにやらおかしな連中が出てきたぞ」

「あれは…影法師だな。狼男君、手伝ってもらうぞ」


挿絵(By みてみん)


 影法師。文字通り人の姿をした影。本体の人の姿は無く、影だけが単独で動いていた。みな虚無僧が被る天蓋(てんがい)と呼ばれる物を身に着けている。


「そりゃいいけどよ。高く付くぜ!」

「それはうちの従業員になる意思表示と見た。では行くぞ! ・・・諸天善神に願い奉る。陰にひなたに歩く道。市井の者の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を」


 朧木良介は戦勝祈願の祝詞をあげた。そしていつものように行う反閇。戦闘体制は整った。

 朧木は布で巻かれている破軍を抜いた。

 影法師達が襲い掛かる!

 狼男は人の姿に変身していた。そして影法師の一体と取っ組み合いになっている。力勝負でなら狼男に分があるようだった。

 朧木も影法師達に向き合う。

 影法師達はそれぞれが抜刀した。

 ・・・・・・一体の影法師が朧木に切りかかる。朧木は破軍で受け止める。朧木は返す刀で相手を切り伏せた。だがあっという間に数体の影法師達に取り囲まれた。

 狼男も一体投げ飛ばしていたが、圧倒的多数の影法師に囲まれて動けずにいた。

 戦況は朧木達に圧倒的に不利だった。


「多勢に無勢だな! こうなったら式神を・・・・・・」


 朧木は七枚の式神符を懐から取り出した。朧木は目を閉じ、それぞれを指の間に挟んで両手で持って口を開く。


「負け戦 平和なひと時 七人の さむらい達よ 田植え歌えば」


 五、七、五、七、七のリズム。

 朧木は和歌と共に式神符を投げうった。式神符はきらきらと輝き、くるくると回り続ける。


「式神招来!」


 朧木が叫ぶと式神符は光り輝き、光が引いた時にはその場に七人の侍が立っていた。

 式神招来。和歌を持って式神を呼び出す平安の技法。和歌が優れているほどに式神符に入るかりそめの魂も優れているという。平安時代という同じ時代に流行った陰陽道と和歌のあわせ技だった。

 七人の精悍な顔つきの侍達が抜刀し、あるいは長槍を構える。

 朧木が呼び出した式神、七人の侍は影法師達と交戦状態となった。

 あちらこちらで切り結ばれる。

 狼男も奮闘している。

 朧木も破軍に持ち替えて影法師たちと切り結ぶ。

 総勢20体ほどの影。数ではまだまだ影法師の方が優位であったが、個々の戦闘能力では朧木達のほうが上であった。

 ガキンガキンとあちらこちらで剣と剣がぶつかり合う音がする。

 影法師達が一体、また一体と切り伏せられていく。

 だが、式神たちも一体、また一体と数を減らしていった。

 拮抗する戦場。刀を持って向かい合う者達。

 拮抗を破ったのは狼男であった。

 狼男は倒れていた影法師を掴んでジャイアントスイングをし、他の影法師たちをなぎ倒していった。


「やるな、狼男君! 影法師如きでは相手にならないようだな!」


 朧木がそう呟いた時、最後の影法師が叩きのめされた。

 戦闘が終わるころには四枚の敗れに破れた式神符が地面に落ちていた。

 劣勢を負け戦として和歌にしたためた。映画七人の侍では戦い後に田植えのシーンがあり、農民達に比べれば負け戦だなと侍たちが語り合っていた。当人は負け戦とするが全体では勝ち戦の歌になるというひっくり返す呪歌としたようだ。


「メイガスよぉ、こいつらは一体なんなんだ?」

「影法師は妖怪が使役する地獄に堕ちた人間達の魂だ。こいつらを使役する親玉がどこかにいるということだが・・・・・・」


 朧木達が周囲を警戒する中、廃工場の屋根の上に人影が現れた。

 それは黒いお坊さんのような格好をしていた。全身から黒いオーラを昇らせていて、威圧的な風格すら感じさせる。

 黒い僧侶は拍手を持って朧木達に答えた。黒い僧侶の存在にに朧木達が気がつく。


「何者だ!」


 朧木が誰何する。


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