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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
30/228

特別な何か

 朧木は・・・・・・後ろに跳躍した。同時3箇所の突きを見切れるなんて思っちゃいなかった。突きが来るというのを大前提に間合いを外した。

 ヒュカカカッと朧木がいた場所に突き込まれる刃物。


「前世がなんであろうが通り魔行為は通り魔行為。君の前世の時代ならこう言うのかな? 神妙にお縄に付きやがれ、とね!」


 朧木が破軍を沖田へと振り下ろす!

 キィン! 一際高い金属音。沖田総司は破軍を払いのけた。そしてすばやく朧木との間の間合いを詰める。

 ヒュカカカッ!

 すばやく繰り出される高速の突き。朧木は破軍で受け止めようと構える。

 カカッドガッ!

 一件軽そうに見えた沖田の突きはとても重く、鋭く破軍に突き込まれる。

 カランカラン・・・・・・カラカラカラ・・・・・・。

 朧木は沖田の重い突きを受け止め損ねて破軍を弾き飛ばされた。破軍は乾いた音を立てながらからからと転がっていった。

 朧木は後方へと跳躍し、沖田との間の間合いを広げた。


「ハハハ! 残念だったな。現代人。お前の剣技では俺には敵わないよ」


 沖田が高らかに笑った。


「・・・・・・まぁ相手が相手だ。こうなる事は予測できていたな」


 朧木は冷静に落ちた破軍を見つめていた。


「なんだ。負け惜しみか? この間の狼男よりはよくやった方だと褒めてやろう」


 朧木はにやりと笑う。状況は悪いはずであるのにもかかわらず、だ。


「・・・・・・諸天善神に願い奉る。陰にひなたに歩く道。市井の者の静謐を守らんが為、我が行く手に勝利を」


 朧木良介は戦勝祈願の祝詞をあげた。そして行うのは反閇。


「なんだなんだ。この期に及んで神頼みか。ではその神様とあの世でよろしくやるんだな!」


 沖田がナイフを構えた。

 朧木は人差し指と中指を立て、前方にくるりと円を描いた。


「月魄刃!」

 

 人差し指と中指の間に青白く輝く三日月の輪光。朧木はその輪光を沖田へと投げつけた。

 ヒュヒュンヒュヒュン!

 すばやく飛ぶ三日月の輪光が沖田総司を切り裂く。

 シュパッ、カカッ!

 沖田総司は加州清光を輪光に弾かれた。そして鋭く切り裂かれた右腕を押さえて蹲る。


「ぐわぁぁぁぁ! なんだ今のは!」

「道術、月魄刃。陰陽道のルーツである道術にも多少覚えありでね。己の魂魄を三日月の形に変えて飛ばす術だ。そうそう。言い忘れていたよ。僕の職業はゲームで言うところの魔術師。剣士じゃないんだよ。剣士まがいの戦い方もするけどね。・・・僕は・・・『この時代の僕が魔術師』なんだ。前世がどうとかというんじゃあなく、今の自分が既にこうなのさ。これが君との違いかな」

「そんな・・・・・・」


 沖田総司は呆然としている。


「転生というオカルトに触れておきながら、その他のオカルトは信じないとか? まさかねぇ。さて、僕は君に深入りするつもりは無い。この時代の法の裁きを受けるが良い」


 遠くから警官達が駆けつける音が聞こえてきた。腕を押さえた沖田総司が無念そうにその場に座り込んだ。

 警官達が沖田総司を捕縛し連行する。

 少し遅れて刑事がやってきた。


「やぁ、朧木さん。お手柄でしたな。朧木さんにとっては相手がなんであろうが問題ないようで。怪貝原議員には私のほうから伝えておきますんで。お疲れ様でした」


 朧木は疲れたようにその場に座り込んだ。


「刑事さん。沖田総司は赤いドラッグを服用していました。最近出回っているD-4に間違いないかと」

「押収して調べましょう。最近ひそかに出回っている前世帰りを目的としたドラッグでしたな?」


 刑事が捕縛された沖田を見ながらそう呟いた。


「とんでもないものが出回る時代ですよ、ほんと」


 朧木は一仕事終えたと言った様子で一息ついた。色々と個人的な問題も解決し、晴れ晴れとした表情でいる。


「では、通り魔は我々が預かりましたので」

「ええ、僕は今日のところは失礼させてもらおうよ。流石にいろいろと疲れた・・・」


 朧木は刑事に向かって後ろ手に手を振り立ち去っていく。疲れたと言いながらその足取りは軽かった。

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