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朧木探偵社  作者: ペテン師Mark
朧木良介と見る霞町
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依頼者たち

「あ、いらっしゃいませー!」


 さくらは割烹着姿のままで飛び出し、とびっきりの笑顔で客を出迎えた。

 訪れたのは近くにある櫻田神社の神主だった。


「やぁ、お久しぶりです。神主さん」


 朧木は立ち上がって挨拶をした。さくらは神主を応接用の席へ案内する。神主はロングソファーの中央に座った。


「やぁやぁ、朧木さん。ご機嫌いかがかな。本日は折り入って頼みがあってやって来た」

「おや、僕にお願いとは何か困りごとですか?」


 朧木は神主の対面の椅子に座った。そのタイミングでさくらはすかさずお茶を差し出す。


「そうです。実は・・・うちの神社にあった刃物の一部がなくなりまして・・・」


 朧木は意外そうな表情をする。


「刃物? 詳しく伺えますか?」


 神主は頷いた。


「ええ。まぁ、なんと言いますか、古くからある刀でして…」

「どのような刀です?」

「銘は加州清光。その切っ先だった物なんです」


 神主はそういうと写真を一枚出した。そこには折れた刀の切っ先が写っていた。朧木は写真を覗きこむ。


「これはまた変わった失せ物探しですね」

「そう思いますでしょう。うちの神社に縁のある方の所持品だったものであるため好事家も多く、もしや盗まれたのではないかと考えまして……」


 朧木は顎に手を当てる。しばし思案する。


「ふぅむ、なるほど。探すのに苦労しそうな一品ですね」

「謝礼は弾みますので、引き受けてくださいませんか? ……これは前金で」


 神主は札束を三つほどテーブルに置いた。朧木はそれを見てキリッとした表情をした。


「引き受けましょう。色々失せ物探しのつてもありますので、お任せください」


 朧木はにっこり笑った。


「なるほど、話は早い! ではお任せしましたぞ! 失せ物は大事な奉納品だった物ゆえに、野放しにはできんのです」

「ほぅ。奉納品、ですか」

「まぁ、朧木さんにお任せする流れでうすうすご承知でしょうが、『発生する出来事への対処』も含めてお願いいたします」

「・・・それはどういう・・・」


 朧木が何かを言いかけようとしたところ、神主は立ち上がる。


「では、わたくしは折れた刀のもう片方の鎮護の役目がありますのでこれで」


 神主はそういうとそそくさと事務所を出て行く。


「ありがとうございましたー」


 玄関をくぐって出て行く神主にさくらはそう声をかけた。

 朧木はソファーでウームと唸っている。


「なにやら含みのある依頼内容だな。報酬の羽振りが良いだけになおさら気にかかる」


 朧木は顎に手を当て思案にふける。どうやら引っかかる点があるようだった。

 さくらが手の付けられていないお茶を片付ける。


「お話はあっという間でしたね。朧木さんはこの仕事は解決できそうなんですか?」

「なんとも言えないな。犯人がただの好事家ならば、似たような仲間内で自慢をすると思うから探しやすいんだがね」

「報酬を前金で頂いちゃって大丈夫なんですか?」

「必要経費込みで置いて行ったようだ。駄目でもともとで探すつもりのようだな」

「盗難なら警察に届け出ればいいのでは?」

「……恐らくはその上で僕のところに来たのだろう。まずはその手のマーケット辺りを探してみるか……銘を聞いてピンと来たよ。確かにこれはあの神社には重要なシロモノかもしれない。これはあの有名な」


 と、朧木が何かを言いかけた時、再びチリンチリンとドアの呼びベルが鳴った。

 訪れたのは男一人と女一人。男は黒いスーツを着た恰幅の良い姿で、頭髪は整髪料をたっぷり使っているのだろうオールバックだ。手にはビジネスバッグをぶら下げている。…中間管理職クラスのサラリーマンを思わせるような全体像だ。

挿絵(By みてみん)

 かたや女性は白と紺色の修道女のような姿だった。顔立ちは美しく、日本人離れしていた。わずかに覗く髪の毛は亜麻色で、どうもハーフかなにかであるようだ。彼女は鞘に入った剣とマスケット銃らしきものを持っている。……一見すると何かしらのコスプレのように見えなくも無い。

 とても奇妙な組み合わせだった。

 さくらは客人を応接室の客席まで案内する。

 朧木は居住まいを正して所長椅子に座りなおしていた。

 さくらはお茶を淹れ直して客人に出した。差し出したのは玄米薫るお茶。そしてさくらはちらりと朧木を見る。

 朧木は頷いた。どうやら知り合いのようだった。さくらは自席へと戻る。こうして立て続けに来客対応に追われる朧木だった。

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