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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
23/228

それぞれの思惑

 一時間後。

 事務所で待っていたさくらの前に戻ってきたのは朧木だけだった。

 狼男は教会関係者と遭遇するのを嫌がったので、一旦は自由にさせることにしたようだ。

 さくらが朧木を出迎える。


「おかえりなさい。朧木さん。あれから何か状況は変わったんですか?」

「今は警察の動向待ちさ」

「ほんとうに朧木さんって消極的ですよね!」

「通常は警察の捜査権限に任せるのに越した事はないんだよ。一般人では出来ないような事もできるんだから、任せるところでは任せるに限るのさ」

「なんか変なところだけ妙に現実的で・・・」


 それは朧木の性格の問題ではなかった。現実では狼男の方は見つかったが、通り魔の方は再びただの人間の可能性に逆戻りしてしまったのだ。こうなってしまうと朧木良介に捜査件は無い。このことが苦しい現状を作り出していた。

 要するに、動くに動けないのだ。

 出来ることといえば自由になった狼男の協力を得て、通り魔を追いかけるだけ。


「現実的にならざるを得ないんだよ。まぁ、捜査に進展があっただけましだと思いたい。しばらくは警察の仕事に任せておくに限るよ」


 朧木は所長デスクの椅子にどかっと座った。休憩モードだ。


「あー、誰でもいいから通り魔事件を解決して、犯人の持っていた刃物だけ持ち主に返してくれないかなぁ」


 朧木は誰にとも無くそう呟いた。


「安楽椅子探偵って、他力本願探偵のことじゃあないですよね!?」


 さくらのツッコミもどこにとも無く向けられる。


「神様頼みも他力本願。こうなったら神様にでもお願いしようか。事件だけ解決してくれますように、と」

「じゃあ、櫻田神社がいいですよ。ご近所ですし丁度いいですよね」

「この仕事はその神社の神主からの依頼でもあるんだよ。ある意味神様からの頼みごとみたいなものじゃないか!」

「まぁ、前金で報酬を頂いちゃいましたし、やるしかないですよね?」

「うーん。先払いされるとそこがネックだよねぇ」

「ご依頼人には何て報告するんですか?」

「今巷を騒がせている通り魔が盗人である可能性が高いです、と」

「ご依頼人の当初の話では、派生する事件の解決も頼む。でしたでしょうか?」

「うーん。そうなんだよねぇ。こうなる事がわかっていてうちに頼んだとしか思えないんだよなぁ」

「おまわりさんが事件を解決しちゃうと、刀の方は証拠物として押収されちゃうんじゃないですか?」

「そうなる可能性もあるんだよなぁ。あぁー、関わりたくない案件だ」

「この間みたいに式神とやらをばーっと出してばばばばばっと見つけたり出来ないんですか?」

「術というのもそこまで万能じゃあないんだよ。星占いでもしてみようかな」

「え、占いですか!!」


 さくらが吹き出すように笑った。


「丼副君、なぜそこで笑うのかね?」

「困ったから占い頼みだなんて意外すぎて・・・」

「占星術等占いは過去からあったんだが、時の為政者でも依頼することがあったんだから侮れないんだよ。星を見るというのは大事な事さ。特に陰陽道では方角と言うのはとても重要なんだ」

「東西南北にそんなに意味を見出せるものなんですか?」

「あるんだなぁ。目的地に向かうのでも、一旦違う方角に向かってから向かう事を『方違え』という。この事件も方違えが必要なのかもしれない」


 そういうと朧木は深くため息を付いた。

 事件が更なる進展を迎えるには別の要因が必要かもしれなかった。



 それはとある町議会の会議室。

 真っ暗闇な部屋の中。黒づくめの男達がろうそくの明かりの中で無言で座っていた。最後に部屋に入ってきた町長が上座に座る。

 その時黒づくめの男達は印を結び、皆一斉に口を開いた。


「「のうまく さまんだ ばざら だん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらたかんまん」」


 最後に「おーん!」と皆が声を上げた。

 町長が厳かに挨拶を始める。


「皆、健勝のようで何よりだ。さて、件の通り魔事件のほうで動きがあったようだ。怪貝原議員子飼いの男が狼男を見つけだして捕縛したらしい。だが、犯人ではないとし、今は自由にさせているとか」


 町長の言葉に一人の議員が激昂し、他の議員達も後に続いた。


「わざわざ捕まえておきながら手放すとはなんとおろかな真似を!」

「そうだそうだ!」


 そんな議員達を町長が片手で制した。


「まぁ、待て。確かに証拠不十分であるし、狼男が通り魔でないとする意見にも一定の理があるようだ。しかし、そうなると事件は一般の人間が犯人説に逆戻りする為、怪貝原議員の子飼いの男には事件を追うことが難しくなる、そうであるな? 怪貝原議員」


 町長が言葉を促した先には怪貝原議員が座っていた。


「左様でございます。通り魔が人間であるならば、事件は警察の管轄。だがしかし、事件で使われた凶器は妖刀の類との報告も上がってきております。これはいまだはっきりとはしていませんが、そうなればあるいはまた状況も変わるかと存じます」

「怪貝原議員、このままお前の子飼いの男に任せていても良いものかね? 動かせる駒がほかに居るなら、使わぬ手は無いのだが」

「町長。我が手の者どもを用いれば、この件。あっという間に解決して見せましょう」


 そう返したのは山国議員だった。


「強気であるな? 山国議員。今回の事件。相応に準備していたであろう?」

「はっ、お声をいただけましたら直ぐにでも!」


 町長がここで一呼吸置いた。


「山国議員。君が持ち出した陰陽寮というのはこの国の古い伝統だ。この町の古い体制を更なる古い伝統で君は覆そうとしている。たいしたものだ」

「はっ、恐縮にございます!」

「ならば手段は問わぬ。一刻も早く事体を解決に導くのだ」


 山国議員は深々と礼をして顔を下げた。


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