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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介と見る霞町
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道士のフェイ・ユー

 さくらたちが狼男と遭遇した翌日。山国町議会議員の事務所はいつもと雰囲気が違っていた。一際立派な椅子に山国町議会議員が座っている。以前の町議会の時のように、顔にヴェールはつけていない。

 事務所の中には風貌の悪いやくざのような男達がたむろしていた。彼らは皆はぐれ退魔師だった。風貌の悪さは化け物退治という荒事を行うゆえにそのような風貌だと彼らは言うだろう。実際に様々な手口で化け物を退治するが、非合法な報酬を請求する彼らはいわゆる裏世界の稼業の人間だった。やくざとのつながりも深い。

 山国議員が一同を見回した。


「諸君。この町の退魔師の連中が狼男と遭遇したらしい。おめおめと逃げられたようだがな。そんなやつらに任せていてはいつまでたっても事件は解決しないと思わんか?」


 ガラの悪い男達の中に柔和な笑顔の男が一人混ざっていた。黒い胴着にサングラスの、人懐っこい雰囲気をした男だった。その男が一人前に進み出る。


「山国サン。私が動けば直ぐに解決するネ。この町の町長殿から我々の活動の許可は降りましたカネ? 権力者に筋を通さねば、後々面倒になるんでネ」

「フェイ・ユー。その心配は無用だ。この町に古く居る退魔師がしくじれば、正式に我々の活動の場が出来る。今は静観を決め込んでいても問題ないが、諸君らがやつらのようにふがいない真似をしないことを願う」


 フェイ・ユーと呼ばれた男は禍々しい笑顔を浮かべた。黒い胴着に身を包んだ男。彼はチャイニーズ・マフィアとつながりのある道士だった。


「山国サン。あなた不思議な事言うネ。まるでわたしが彼らと一緒のように思っているネ?」


 フェイ・ユーが周りに居たやくざ同然の男達を見回して言った。


「なんだとぉ?」


 そんなやくざのごとき退魔師の一人がフェイ・ユーに凄んだ。その様子を山国議員が片手で制する。


「まぁ、まて。フェイ・ユーは私にとっては客人でもある。なぁに、互いに良好な関係を築ければ、私にとってはなんであっても問題はない。今は古くから居る体制派の連中がへまをしたと、ただそれだけで十分だ。ところでフェイ・ユー。この町の退魔師は道術にも長けている。道士であるあなたと果たしてどちらが上かな?」


 山国議員は意味ありげにフェイ・ユーに語りかけた。


「そういう事カ。イイネ。物事はわかりやすい方がイイネ。しばらく出かけるヨ」


 フェイ・ユーは愉快そうに笑って、部屋を出て行った。新たなる驚異が現れ、探偵事務所の先行きは不透明なままだ。



 その日のさくらは不機嫌だった。いつものようにバイトに出て行って、朧木良介に昨日の顛末を話したが、反応が予想外だったからだ。


「もう少し心配してくれてもいいのに!」


 朧木良介の話もろくに聞かずに飛び出し、自分から囮役を買って出て囮捜査を始めた者が言うには面倒すぎる乙女心だった。

 朧木良介にとっても昨日の話は予想外だったようだ。ただ、「間に合わなかったか」と一言呟いたのみだった。

 そんな朧木良介が口を開いた。


「心配だから猫まんを付けたんだよ。まぁ、結果的にはもう一人の専門家も居たのに狼男には逃げられた、と言うわけか」

「仕方なかったじゃないですか。その時こっちはそれどころじゃなかったんですから!」


 朧木良介はさくらの話を聞いて笑っている。


「悪質なナンパにひっかかったんだって? 全く、とんだ囮役を餌にしたもんだ!」

「笑い事じゃないです! 大変だったんですから!」


 朧木良介の笑いは止まらなかった。


「まぁ、狼男が裏で動いているという裏付けは取れたから良かったかな」


 朧木良介の言葉に、さくらが意外な表情をした。


「朧木さんは狼男が今回の件に絡んでいると思って居なかったんですか?」


 さくらの言葉に、朧木良介はしばし考える。


「んー、そうだねぇ。気になる点はあったからね。もっともその点も踏まえて、打つべき手は打っているつもりだよ。君の考えた手段も一つの手だとは思うけれどさ・・・・・・おや、なんだ?」


 朧木の様子がおかしかった。難しい表情で椅子に座っている。

 と、その時、コンコン。と事務所のドアがノックされた。

 さくらが玄関を開けると、そこにはフェイ・ユーが立っていた。

 フェイ・ユーは応接室に通された。所長室に座る朧木良介のもとにさくらがかけより、小声で話しかける。


「今日の面会予約は無かった筈ですが・・・・・・」


 以前の亜門が訪れた時と同じようなやり取りだった。


「急な依頼かもしれない。僕が話を聞こう」


 朧木良介は応接室で茶を飲んでいるフェイ・ユーの正面の席に座った。


「やぁ、始めまして。アナタ、ここの責任者カ?」


 フェイ・ユーがニコニコしながら朧木良介に話しかける。


「そうです。僕は朧木探偵事務所の4代目所長。朧木良介と言います」


 朧木良介はすっと名刺を前に差し出した。フェイ・ユーは目を細めて名刺を眺める。


「ほう、探偵ですカ。あなた、裏の顔を持っているネ?」


 フェイ・ユーの言葉に、名刺を差し出した朧木良介がピクリと動きを止めた。


「・・・・・・えぇ、そうですが、どこでそのことを?」


 朧木良介の質問に、フェイ・ユーが「くっくっくっ」と笑いながら、スーツの懐から何かを取り出した。

 それは紙切れだった。人型の紙切れ。それが左肩から袈裟切りに破られている。


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