表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
107/228

猫の集い

 ※ここからは猫の言葉を人間の言葉に翻訳してお送りいたします。


「みんな揃ったかいね」


 猫まんが一番高いポリバケツの上に乗った。


「ようやく大長老のお出ましか。皆揃っておりますよ」


 キジトラの猫が猫まんを出迎えた。白猫やぶちねこなどがそこいらに香箱座りをしている。


「今日は若い衆から意見が出ていたかいね」

「えぇ、そうです。彼らの話を聞いてみましょう」


 並み居る猫達が若手の猫たちの方を向いた。

 一匹の茶トラの猫が現れる。


「お集まりの皆様。我々は人間たちの支配を受けている。我々は支配からの脱却が必要です。飼われている家から脱走するのです。外の世界で自由気ままにやりたいことをして生きる。なんとすばらしいことでしょうか。食べたい時に食べ、眠りたいときに眠る。遊びたい時に遊び、狩りをしたいときに狩りをする。その邪魔をされることなく心の赴くままに生きるのです!」


 若い猫たちから歓声が上がった。それに比して老いた猫たちの目は冷静だ。


「その意見には反対するかいね」


 猫まんは若い猫の意見に真っ向から反対した。その姿に若い猫達が蔑んだ目を猫まんに向ける。

「大長老は買い猫暮らしが長いから・・・」そんなささやき声が聞こえてくる。

「わたくし達が求めるような自由など、家の外の世界のどこにもなかった。毎日決まった時間に餌を与えられ、外敵の心配のないところで眠る。これがどれほどすばらしいかは語りつくせないかいね。みすみす自分の居場所を捨てる物じゃないねぇ」


 猫まんの言葉に老いた猫たちは皆頷いた。一度は家出をして苦労してきた猫たちなのだろう。だが、いつもと違う世界に夢見る若い猫たちには届かない。

 若者は常に変化を望むものだ。それは猫の世界でも同じだった。


「我々は旅立つ。止めるな長老たちよ!」


 茶トラが先陣切ってその場を去って行った。まだ若い、というか幼い猫達が後を付いていく。

 その場には老猫たちが残された。


「まったく、わかっていない。ばらく家出した後に、人間達が新しい猫を飼い始めて居場所をなくした猫もいるというに」

「大長老は猫たちの歴史に詳しい。その言葉には含蓄が含まれ、様々な見聞き体験した知恵が生きているというに。若い猫たちは全く話を聞きもしないとは」


 老いた猫達が口々にしゃべる。


「大長老は人の言葉をしゃべり、誰より人間の近くで暮らしている。だから人間たちの世界にも精通している。我々は人間たちの居住区を間借りして生きているだけだという自覚がないのだ。世界の中心が自分たちだと信じている。猫中心の社会などどこにもないのに」

「大長老。そういえばこの間人間に化ける黒猫の存在をお聞きしましたが」

「あぁ、あの子かいね。魔女達の黒猫という化け猫なんだよねぇ。恐らくは未来視などもできるはず。ぜひともこの集会に加えたい子なのさね」

「大長老がそこまで言われるとは。きっとすばらしい能力をお持ちなのでしょう」

「うちも勢力を拡大しないといけないからねぇ。現状維持は衰退と同じ。猫たちの猫たちによる猫たちの社会を作るというわたくしの野望はまだ途上」


 猫まんの目がギラリと光る。


「さすが大長老! 人間たちを利用しながら自らも着々と力をつけるわけですな!」


 老猫達が雄たけびを上げる。もとい激しく鳴き声をあげる。


「大長老! 大長老!」


 猫まんへのコールは止まらない。と、そこに水を差すように雨が降って来た。


「今日のところはここまでかいね。またの集会を楽しみにするかいね」


 猫まんは猫の集会を閉幕させた。集った猫達が一匹、また一匹と帰っていく猫たち。最後には猫まんだけとなった。


「ああやって夢を与えておけば、人間たちの住処から離れて無茶をやる子も減るかいねぇ。猫には猫缶が作れないから人間たちと共存するのが一番かいね」


 猫まんはぽそりと独り言を漏らした。そして事務所へと帰っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ