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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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事件を追えない立場

「まったくだよ!? 丼副君の運命の相手を知るまじないがとんだ事件に繋がっていたよ。ジュリアに仕事を安請け合いしたのも失敗だったな。まさかこんな面倒な事件に絡んでしまうとは」

「所長、なにやったんです?」

「何って、今朝方ニュースになっていたキャシー梅田さんという人が怪死していた事件に関してなんだが。彼女が殺される前日、僕は彼女の占いの館に行っていたのさ。丼副君が話してくれた運命の相手を知るおまじないの噂の出所としてさ。十中八九妖怪がらみだ。影法師の出迎えを受けたから間違いない。こんな事ならもっと慎重にこの件に関わるんだったよ」

「こんな事件に発展するだなんて思いませんものね」

「しかし、困った事にこの事件。僕が介入するのは警察に止められてしまった。僕自身が重要参考人だからね」

「実は所長が犯人だったら証拠隠滅されてしまうかもしれないですからね!」

「まぁそんなところだ。悔しいけどこの件には僕は深入りできないな。事件を目の前にして指を咥えてみているだけとは・・・」

「常日頃の行いが悪いからですよぉ」

「むむむ、なるべく善行を積もうと努力はしているんだがね。まぁここは同業他社の頑張りに任せよう。たぶんなんだが、キャシー梅田の本当の死因に行き当たるのはかなり困難だと思うよ。今の時点では僕も見当がつかない」

「じゃあこのままでは解決されないんですかね」

「入り口からして不可解な点だらけだからね。昨日僕はキャシー梅田を巷に広がる魔術の件で追求したばかりだ。その直後にこんな事になるとは。まるで狙い済ましたかのようだよ」


 朧木はうんうん唸っている。どうも腑に落ちないようだ。


「所長がこっそり捜査を行っちゃえばいいんじゃないです?」


 さくらがいたずらっ子のような表情でそう呟いた。


「うーむ。警察には止められているんだよ。無理は出来ないさ」

「キャシー梅田さんが殺されたかもしれない件の捜査に関わるのはダメなんですよね? 彼女のバックにいた妖怪についての捜査はだめなんですか?」

「直接の関わりがあるかはわからないようだがどうだろうなぁ。・・・手がかりは一つあるんだよ。キャシー梅田が所持していた魔道書がいま僕の手元にある。これを使って捜査することは可能さ。・・・本来なら警察に提供しなきゃならない品なんだろうなぁ」

「ならその魔術に関する調査ならどうなんです?」

「それならギリギリ問題はなさそうだな。ふむ、一つ追ってみるか」

「そうそう、それがいいですよ、わくわく♪」

「・・・なぜ丼副君がそんなに乗り気なのかね?」

「やだなぁ。そんなに乗り気に見えました? ただどんな魔術なのか気になっただけですよぉ。というか、その魔術書を拝見させてもらってもいいですか?」

「それはだめだね。君に悪影響を及ぼしそうだ。断じて断る」

「私にも出来そうな魔術があったらいいなって思っただけですよ。誰でも出来るから噂として広まったんでしょう?」

「そんな魔術がそうそうあってたまるかい! ふーむ、そういう意味ではこの魔術書は誰にでもできるようなものでありながら、これまでその存在が有名になったわけでもないという変わったものなんだな。誰にでもできるなら既に有名であってもおかしくはないのだが」


 朧木はなにか気になる点があったのか、深く考え込んでいる。


「どういうことなんです?」

「これは過去から綿々と受け継がれてきたようなものではなく、ある日突然現れたようなものなんだよ」

「じゃあ、どこからきたんでしょうね。その魔術」


 さくらも頬に指を当てて考え込んだ。


「・・・実践的でありながら無名の魔術か。時代によっては危険視されて禁書焚書にされていてもおかしくはない。これは一体なんなんだ」


 朧木は所長デスクの引き出しに入れていた魔術書を取り出した。


「その本が例の魔術書ですか。なんだか古ぼけているけれど、そんなにすごいものなんですか?」

「すごいかどうかという意味では本物の魔術書であるからすごいものではあるのだろう。ふむ、明日あたりに魔術鑑定にでも出してみるか。郵送で受け取ってやってくれる専門機関があるんだ。現代って便利なサービスがいっぱいあるよね。現代の魔術師ご用達の機関なんだ」

「所長ってたまに変な専門誌とか読んでますよね。グッドファミリアとか」

「ははは! あれは使い魔契約を結びたい人必携の書物だよ。魔術師たるもの色々なアンテナを張っておかなければ。専門情報のリテラシーは大事だよ」


 この日ようやく朧木は笑顔となった。朧木にとっては事件に巻き込まれてしまった状況。この事件は表向き警察が捜査を行っているが、結局有力な手がかりはつかめず迷宮入りするのであった。


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