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朧木探偵社  作者: 神島世判
朧木良介の受難
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弁明する朧木

「不可解な点ですか? なんでしょう」

「キャシー梅田さんが殺害されたのは彼女の住居のマンションなんですが、出入り口のセキュリティは万全でオートロックが掛かっており、監視カメラでも不審なものの出入りは無かったんですよ。キャシー梅田さんが時代劇に出てくるような誰かを連れて帰ってきた点以外は」

「浪人が被る笠を被ったやつですか。彼らが影法師。地獄を住処とする人間の魂です」

「あぁー、○特案件だったか。その影法師ってやつがですね。キャシー梅田さんの部屋に入るところまでは監視カメラの記録もあるんですが、出てくるところは無かったんですよ。事件が発覚するまで同じ部屋にいたはずなんですが、影も形も無い」


 刑事は非常に困ったような表情だ。あからさまに怪しい格好をしたやつが監視カメラに映っていた。その相手がどうも見つからないらしい。


「それはやつらが異界と繋がる穴を行き来しているからでしょうね。影法師が関わるのは人に害を為す妖怪が絡んでいる証拠です」

「まぁ一応他の超常現象専門家の話をきちんと聞いて見ますがね。朧木さんは今回の件では重要参考人なので、事件の捜査協力を依頼するわけには行きません。わかりますね?」

「それは当然でしょう。僕も疑われている事ですし、それは当然と思っています」

「朧木さんはキャシー梅田さんのマンションへ出入りしたという形跡が残っていないというだけで、特殊な能力のある朧木さんのような方ならなんらかの術か何かで殺害現場へ出入りしたりできたりしないでしょうな?」

「僕は忍者かなにかですか!? 僕は一応魔術師に分類はされますが、そのような術に覚えはございません」


 朧木は冗談のような話をしているなと思った。状況はとても冗談を言えるようなものではなかったが。


「朧木さんのような特殊技能所有者ですと、そのような技能がないという立証が必要となるんですよ。どういったことが可能なのかはきちんと取り調べさせていただきます」

「わかりました。僕としても身の潔白は証明したいところ。積極的に協力いたします」


 朧木は根掘り葉掘り陰陽道の事を聞かれることとなった。使える術等を全て洗いざらい話すこととなる。その聴取は一時間以上に及んだ。

 聞き取りが一通り終わり、一息つく形となる。


「朧木さんには捜査協力させていただいている事もあるので疑いたくは無いのですが、これも仕事ですのであしからず。・・・前回は警察関係者にも犠牲者の出た吸血鬼がらみの事件でご協力いただいていたとか」

「えぇ、あれは厄介な魔物が相手でした」

「朧木さんのご協力が無ければどうなっていたかわからなかったと聞いていました」

「そんな・・・僕は出来ることをやったまでですよ。それにあの時の吸血鬼はきちんと捕らえるべきだったと後悔しています」

「警察官の死者も出てしまいましたし、あれは仕方が無かったと思いますよ。その朧木さんの視点で、今回の事件の犯人は何者だと予想されますか? 捜査協力いただくわけではないのですが、興味本位で伺いたく」


 刑事が真剣な面持ちで朧木に尋ねる。朧木が顎に手を当てて考える。


「キャシー梅田さんの死因が全身を針で刺したかのような傷が元の出血多量、部屋へ出入りしたものが影法師だけという事実。影法師は人をそのような方法で殺すとは考えにくいですので、状況証拠から判断するに高度の魔術、呪術によって呪殺されたのではないかと考えます」

「その際はどうやって犯人を特定しますか?」

「人を殺傷するくらいの呪術ですとそれなりに大々的に行わなければなりませんし、事件現場に何かしらの痕跡は残るものです。今回の件。呪術対策が必要と思われますので、そういった専門家にご相談されると良いかと」

「そうですか。一応心にとどめておきます。ともかく今日は捜査協力頂きありがとうございます。今日はもう帰って頂いていいですが、くれぐれも怪しい行動や事件の捜査への介入はお控えください」

「はい、わかりました。この件は警察と今後協力されるであろう特殊案件の専門家達にお任せします」


 朧木が警察署から開放されたのは夕方過ぎくらいになってからだった。

疲れた表情で帰宅する朧木。探偵事務所に辿り着いた時、事務所には明かりがついていた。


「ただいまー。いやー、疲れた! まさか僕が取調べを受けることになるとは」


 事務所にいたのはさくらだった。


「お帰りなさい、所長。今日は大変でしたね。猫まんに所長が警察に連れて行かれたと聞いた時には驚きました」


 朧木はコーヒーを入れて一息ついた。




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