肩の力を抜いて
※このお話しは異世界転生・転移モノではありません。
「…ごめんなさい」
「大丈夫大丈夫!
ゆっくり休んでて、リューナの気持ちはみんなよく分かってるから」
苦笑してホットミルクを差し出され、私はため息を吐き出してあくせく動き回っている人達に視線を合わせた。
頑張ると意気込んで持ったじゃがいもは、水に濡れていたせいもありつるりと滑って飛んで行く。
もう片方の手には皮剥き用のナイフを持っており、勢いそのままざっくり指を刺す。
やらかした!と思うと同時に「なんでいつもこうなのよ」と不服な思いがやって来る。
何かを決意して始めようと一歩踏み出すと、必ず何か悪い事が起こるのだ。
それはもう毎度の事でそろそろ気付こう、分かってくれと自分でも思うのだけれど盲目状態とはその事で私の意識は頑張るぞ!の方に向いたままいつも気付かなくて、こう言う事が起こってから思い知る。
「リューナ?大丈夫か?」
「うん、怪我は全然…痛いよりも情けなさが勝ってる」
「油断したからか?」
「うん」
笑ってリヒトは私のそばに座り込む。
「俺も担当の仕事は終わって、待機なんだ。
リューナの様子を見に来たんだが…落ちんでるな?」
「まあね…じゃがいもの皮も剥けないなんて」
「何を考えてたのか当てようか」
「分かってるんでしょ?」
「もちろん」
可愛らしく笑うリヒトに、むむっと眉根を寄せた。
「リューナはおっちょこちょいと言うやつだ」
「断言しないでぇ〜!
私は…レイとか、お母様みたいに格好良い人になりたいのよ」
「無理だと思うが」
「だから断言しないでよ!」
わっと喚いて肩を落とすと、リヒトは小さく笑った。
自分の情けない事で笑われているのに、その笑顔で癒されている事実もあるので少しずつ落ち込んでいた気持ちが落ち着いて来た。
「やっぱり可愛いは正義ね…リヒトの可愛さにどんどん落ち着いて来ちゃったわ」
「役に立てたなら良かった。
ほら、手を出せ」
「手?」
言われるがままに手を差し出すと、ゆっくりと傷口に温かさが集まって来る。
そう言えばお父様も、リヒトを助け出した…いや、勘違いで連れて来る時に怪我をして、治してもらったって言っていた。
どう言う原理なのかなとぱっくり開いていた傷口はすっかり塞がっている様子を見ながら考える。
「痛みはもう無いか?」
「うん、ごめんね」
「持てるものを使っただけだ、お前に怪我は付き物なのだろうが…なるべくは傷ついて欲しくは無いな」
「可愛いのに格好良いとかずるいよね、リヒト」
よしよしと綺麗な白い髪を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を閉じる。
しかし少ししてハッとすると「猫じゃない」と無理をするので「可愛いからだよ」と言って無理矢理に撫で回した。
その様子を遠巻きに見ていたカシスが近付いて来て「飯だぞ」と笑うので、立ち上がる。
キャンプは4人のグループが4つ、合計16人で構成されていた。
私とリヒト以外は全員ウィブドールの団員で、この国の内外を常に移動しているのだ。
そんな人達の手伝いを少しでも出来ることを誇らしく思うのと同時に、やっぱりもう少し落ち着いて…力になれるように頑張らねばと意気込んだ。
そんな様子を見ていたリヒトとカシスさんは、私の方を見て首を振って笑うのだった。




