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とある側面の言い分

※このお話しは異世界転生・転移モノではありません。



本来であれば闇の中で馬車を操るのにはかなりの玄人であっても危険が伴う。

しかしエネクは特別夜に強かった。

だからなのか馬達もエネクを信頼してか中々のスピードで街道を走る。

まるで道案内でもあるかのように曲がり角を滑って行く様子に「行く先が分かるのか?」と問い掛けると「もちろん!」と元気な返事が帰って来た。



「ナターシャの持つ宝石やお宝には目印見たいな物があるんだ、僕はそれを感知出来るからね。

どこに居たって何に隠れて居たとしても絶対見付ける事が出来るよ」



毎度思うが相当な自信だなと小さく息を吐き出すと「今はひとつ先の村で留まってるみたいだから、夜明けまでには追い付けるはず」とある程度の距離も分かるらしい。



「眠かったら寝てていいからね、ナターシャ」


「いや、起きておく。

寝ていて奇襲にでも合ったら笑い話だからな」


「もう少し僕の事頼ってくれても良いのに〜」



不服そうな声に笑って、私はここに至るまでの経緯を思い出していた。

アジトにはしばらく戻れない事になったので連れに番を頼んだが、今この現状奴等を追って行って翡翠を取り戻せたとしても国へ向かう国境や昼間の街道には残念ながら憲兵が見回りや巡回を行っている事だろう。

出し抜く術はあるから良いとしても少し派手に動き過ぎたかと先程の教会を見て思った。


教会にあったステンドグラスに描かれていた神なる存在。

私は今の今まで幸せでとても暖かな場所に居たことを思い出した。

しかしそこは足元が氷で覆われており、足元と首元での温度の差は相当なものだ。

片や南国、片や氷山。

笑える程にちぐはぐでその全てがあやふやだった。

色は確かにあるのに視界にそれとハッキリ分かるような物が残らない。



夢を渡り歩く時特有の感覚に、ふと小さくため息を吐き出した。

私で居る時間はそう長くない。

数ある私の中で、1番自分としての側面を削ったのが私だ。

誰にも晒さない奥底に追いやった加虐心や憎悪が滲み出たのが私と言う存在だった。


常に生優しく生きている私と、どこかに居る否定したい私。

その否定したいと願っていた部分は、人を傷付けて幸福感を得る事。

人を虐め抜いて泣かせて震え上がらせて、私の存在を魂に植え付ける事。

別の側面はお人好しの頭のネジが緩んだお花畑生まれ蜂蜜育ち。

しかしそれもまた良いと感じているのも本当だった。


私はどうせ誰にも認められない。

私自身が認めたくないようなのだから仕方無い。

誰かを支配して心に恐怖を植え付けて、私はしたいように生きるのだ。

残忍であれば良い、畏怖を植え付けよう。

全て私の掌の上で。



そう考えているだけで、どこかに空いた穴が満たされる気分になる。

しかしそれは瞬く間に去って行きすぐにもっと欲しくなる、寂しくなる。

脆く崩れそうになってしまう私自身が醜くて仕方無いのだ。



私は強い、誰よりも強く望むものは全て手に入れる。

障害物は壊せば良い、他の者の手にあるのならその手を切り落として私が奪う。

私の物を奪おうとするのなら命を賭けろ、それが出来ないから大人しく消えれば良い。

凍った心は他の温度を受け入れる事を拒否していた。

他人を深く踏み入れさせるのは、怖かった。

だから私は1人になる、誰にも隙を作らない様に、誰からの視界からも消え失せる様に。

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