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私はナターシャ

※このお話しは異世界転生・転移モノではありません。




「……」



天井がやけに遠い…と気付いた途端にここは教会だと気付いた。

やけに冷たい床は大理石で、そこは生涯の誓いをする際に神父の立つ教壇。

なんてところで横になってたんだと覚醒した意識そのままに頭を上げようとすると、暗闇から現れた腕が私の顔の両側に置かれた。

壁ドン…いや、これは床ドンか。

冷めてゆく思考と共に自分が誰なのかとハッキリ意識して「なんのつもり?」と問い掛けてみた。



「いやあ、普段と違う事をしたら少しでもドキッとしてくれたりしない?」


「しないよ、敵意も無く悪意も微塵も感じない相手からされたって」


「この距離だし可能性はあるかもじゃん?

今だってこの状況を誰かに見られたら間違いなく誤解されちゃうわけだし?」



にっこりと笑みを浮かべて私の服の端を掴むと「ほーら、ね?」と怪しく笑った。

しかし、こいつも懲りないなと小さく溜息を吐き出すと「退けよ」と自由な脚で男の腹を押し上げる。



「ぐえ」


「潰れたカエルみたいな声出たけど。

それで、目的の物はあったの?」



再び胸の上で伸びている男は「あーあ、今日もダメだったかぁ〜」と情けない声で「無かったよ」と両手をあげてさらに胸に埋まって行った。

目的の物がここに無いと言う事はおそらく既に持ち出された後だったのだろう。

急いで追えば間に合うだろうかと思案していると、ガシッと腰を掴まれたので「おい」と低い声で脅した。



「さっさと回収するぞ、そもそもお前のミスだろうが」


「ええ〜、ナターシャ冷たい〜。

少しは意識してくれても良いでしょ〜」


「あーしてるしてる、めっちゃしてるから早く行くぞ」


「信じらんないくらい冷たい〜!

でもそんなナターシャが好き〜!」


「はいはい私も好きだから早く行くぞ」



情けない声を上げる男の頭を叩いて起き上がらせると、私を簡単に抱き上げた。

地面に降り立ち教会を後にしながら「こんなに懐かしいもんだっけ」とどこか冷静な頭で考える。



暗闇に乗じて馬車を奪い、荷台の頭を1文字に切り結ぶ。

ちょうど首から上が開いて快適になったので荷台へと乗り込むと、エネクも嬉々として御者台に座った。

馬を落ち着かせながら走らせるその様は見事としか言い様がなく、本当に普通にしてたらただの有能な奴なんだけどなと眺めていると「ナターシャ?」と声だけが心配そうに届いた。



「なに」


「あの…やっぱり怒ってる?

俺がヘマした事……」


「別に?取り返せば問題無い」



翡翠のネックレス、時価数億ガイルとも言われる宝石はクウィンデル国の秘宝だ。

それを盗み出したのは数年前、王妃の生誕祭に展示されると聞いて白昼堂々盗んだ。

クウィンデル国と言えば剣士を育成する王国立のアカデミーが有名で、そいつらを出し抜けるかどうかのテストでもあったのだが上手いこと撹乱させて盗み取れたのは私の誇りでもある。

それをこいつが「汚れてるから」と街の古美術店に清掃を頼んだらそれはもう見事に取られた。

あの宝石の価値を知っている奴が居たかと感心したものの、エネクと言えば自分の不注意で私の宝を盗まれてしまった事を盛大に反省しており、ひとまず取り返して来ると言うので私も着いて来た次第だ。


別に取り返す事さえ出来れば特に問題は無いのだが、自身の不注意で起こった今回の事は余程肝が冷えたらしい。

事ある毎にこう聞いてくるので、そろそろ飽きて来た。



「エネク、今回お前が1人で取り返せたら褒美をやろう」


「え?僕がしでかした事なのに?」


「これを盗み返す事で名誉挽回して見せろ。

まあ今後も同じミスを繰り返すのなら望みは無いが」


「…うん、分かった。任せてよ」



静かに決意の乗った声で応えたので、私は「期待している」と返して黙った。

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