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リヒト

※このお話しは異世界転生・転移モノではありません。



「リヒト・ディバンス」


「そう、新しいアナタの名前よ!」



リヒトルーチェ…もといリヒトになった彼に合わせて作られたシャツやズボン、カーディガンを身に付けた彼は不思議そうに私を見上げる。



「なんだか落ち着かない」


「慣れて行こうね。

今日のお昼には結構気温上がるらしいから、そうなると、カーディガンは脱いでも良いかもね!」



ふふっと笑うと、ソワソワしたままにカーディガンの裾を持ち上げた。

瞳に合わせて薄い青のカーディガンは恐らく母のセンスだなと思いつつ、不安げに私を見ているリヒトに向き直った。



「リヒト、したい事は無い?」


「したい事?」


「そう!ここに居るアナタが自分の為にしたいこと。

興味のある事があったらなんでも力になるわ、もちろん…私の知っていることに限られてしまうけれど。

それ以外は他の人の力を借りながら、色々楽しんで行きましょう!」



リヒトは一瞬目を丸くすると「恐らくそう言う所なのだな」と初めて表情を緩めた。

柔らかく笑みを浮かべるリヒトは「願わくばお前の傍にいつまでも」と片膝をついた。

周りにいたメイド達が小さく叫び声をあげると、私の手を取って手の甲へと口付ける。



「この場所では少ないであろうが、悪意や敵意からお前を守ろう。

俺はその為にここに居る。

お前が全ての決断をするまで見届けよう」


「決断?」



その言葉に思考の奥の方で何かが煌めいた。

しかし鈍くモヤが周囲を取り囲み一瞬にして隠されてしまう。



「リヒトとしてお前の傍に居る。

許してくれるか?」


「…もちろん、嬉しいよ。

本当にこれからどうぞよろしくね」



私も笑顔でその手を取ると、嬉しそうに口角が柔らかく上がった。

きっと女の子でもとても美しいのだろうなと思い浮かべると「もう男で良いだろう」と表情が拗ねに入った。



「うん。まあね。

でも、きっと女の子でも似合うよね〜」


「性別など小さい事だ。

お前の様にスカートで走れる自信は無い」


「それは確かにね、慣れなきゃ大変だろうけど」



そう話しながら、ふと思い出せそうな記憶の断片を掴み取る。

そうだ…私、最近ずっとリューナのままだ。

誰とも切り替わって無いなと思い当たる。

いつもなら1日の間に2・3人と切り替わっていてもおかしくないのに…この2日の間はずっとリューナのままだ。

不思議な事もあるんだなと思い出しながらも、1週間切り替わる事も無かった事を思い出して頬が熱くなった。

クロエの時はとても大変だったな、相手に全てをゆだねて完全に甘えていた。

そんな生き方出来たんだなと自分の中の欲望がとても良く現れた場所だった。

そう言えば最近は中々見る事が無かったから、少し前に会った彼等を恋しく思った。



「うん、その調子だ」


「え?」


「リューナ、今日の予定は?」


「畑の収穫がいくつかあったから、それを収穫して…近くの教会に届けようと思っているけど」


「なら俺も行く、父母の言っていたお披露目?と言うパーティより先に人に慣れていきたい」


「そうね、一緒に行きましょう!

そこには子供達がたくさんいるんだけどね」



教会の孤児院の様子を思い出しながら、やはりダブって行く思考に少し安堵した。

ちゃんとある、私の向こうにあの子は居る。

今日目を閉じたらあの場所に行けるなと確信を持って、私はリヒトに孤児院へ持って行く野菜を口頭で挙げて行った。

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