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これが世界の全て

※異世界転生・転移モノではありません。



それは別の意識の中での事だった。

ちょうど目を覚ます場所の中間地点、あちらでもこちらでもない場所。

聞き覚えのある声に振り返る。



「余計な事言うなよ」


「…何故?」


「何故?意識の統一を測ってる最中に余計な茶々を入れるなんてお行儀がなっていないんじゃない?」



怒りを孕んだその声色に、今度はこちらから声を掛ける。



「そもそも意識は分裂を繰り返している。

自分以外の自分、今の自分には無いものやあの世界では出来ない事。

希望と欲望に飢えているあの子には想像と言う無限の可能性があるんじゃ無かったのか?」


「それを統合させようって話しだろ?

お前が邪魔をするせいで予定がどんどん先延ばしになってるんだよ!!」


「本人の意識をほぼ無理矢理に奪っておいてよく言う」


「けれど最終的には彼女自身が同意した!

それに無理矢理なんかじゃない、きちんと選別をした後に現実を突きつけてやっただけだ!」


「それを無理矢理と言うんだ」


「うるさい!」



癇癪を起こしたアイツに、俺はふとため息を吐き出した。

この場所では何を言っても無駄なのは分かっているのに、突っかかられると思わず言い返してしまう。

あちらも同じなのかさらに言葉尻が攻撃的になったのを自覚してようやく落ち着いて来たようだ。



「…はー、まさか、お前が出て来るとは思ってなかった」


「まさか?この中でバランスを取るとするなら確実にこの選択肢は現れるだろう」


「この子の中のバランスって本当によく分からないよ。

自分犠牲にして助けてくれって言うのなら分かるけど……わざわざ悪い意味の要素を大きくする?

自分の中の悪害を大きくして自分自身の容量を削るなんて…僕に取って変わられるスピードが早くなるって分からないものかなあ?」



白くモヤがかかった世界に、苛立った様な声が響く。

初めに呼び掛けた時、分類が悪となった彼は大きくため息を吐き出す。



「俺はこの子が望む形のまま平和になる様に心の中を整理しているだけなのに」


「それがあの子にとっては余計なお世話なんだろう」



分類上善とされた彼もため息を吐き出した。



ここは隔絶された意識の中だ。

ここには多くの意識が渦巻いており、全てが別のフォルダに別れるように枝分かれ、その先にはそれぞれ別の意識が世界を構築し続けていた。

ひと1人の脳では処理し切れないデータ量は記憶として蓄積されて行く。

しかし、ここは様々な意識の渦巻く台風の目の様な場所となっており。

様々な夢を管理し護る場所でもあった。


普通の人間であれば、許容量を越える前に古い記憶から消えて行く。

夢は夢として架空のものと処理され、現実には有り得ない事も全てモヤの中に消えて行く。

しかし選ばれた者達の中には全ての夢を現実にしてしまう存在が居た。

それは神でも、天使でも悪魔でも、勇者でも魔王でもない。

それらは人が人として想像出来た存在の名称でしか無かった。

人は人でしかない。

それは現実を生きる人間達が年齢を重ねて行く上で自然と自覚して行くものだった。


自身の中に宇宙を作り、パラレルワールドと言う言葉を借りた場所で別人格を構成した、と言ったら分かりやすいだろうか?

彼等は意識を別のパラレルワールドに送る事で新たな人生を夢の中で行き来する事が出来る。

それは夢と言う仮想世界で、色や温度、痛みや匂い、嗅覚や聴覚と言った「生きている」と言う感覚を別の場所で認識出来る事を意味する。

トリガーは、眠る事・目を閉じる事。

彼女は彼女自身の中に宇宙を作り、膨大な記憶容量を他のパラレルワールドに写し取り、そこで自分とは別の人物に成る。

夢を通じてそれらの人物と切り替わる事で別人格とは違う、自分の側面を無限に想像して行く事でその場その時の自分自身の記憶を元に作り出す。


それらは彼女自身のストレスや欲望を糧に無限に増殖して行くものであり、留まることを知らない。

彼らはそんな意識下での「防衛本能」として、この白いモヤに包まれた世界で存在していたのだった。


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