青い瞳の天使
※異世界転生・転移モノではありません。
朝起きると柔らかく白いカーテンが風に揺れていた。
まだ陽も上がり切っていない窓の外の景色をカーテン越しに見ながら、あれ?と首を傾げる。
この時間に起きるのは初めてだとカーテンの傍に見える白い髪に駆け寄った。
「どうしたの、大丈夫?」
「……」
リヒトルーチェが、窓の傍に座り込んでいた。
ちらりと青い瞳で私を見上げると「生きてた」と表情を変えずに私の手を取る。
寂しかったのかなと首を傾げると「居なくなったから」と小さな声で呟いた。
「ここは私のお部屋なんだけど、どうやって来たの?」
「ここから」
「もしかして空を飛べるの?」
「当たり前だ」
「もしかして猫の姿でも?」
「……それは無理だ」
ムッと頬を小さく膨らませるので、よく私の場所が分かったなあと私より少し小さな所にある頭を優しく撫でた。
「猫の姿じゃ無いんだね、この姿の方が君にとって楽なの?」
「本来はこちらの姿に近いからな。
けれど人の世界に溶け込むにも、獣の世界に溶け込むにも猫の姿の方が都合が良い。
あの見かけに油断してくれるからな」
「でもお父様の話しではその獣の群れからだかリヒトルーチェの群れだかからはぐれたらしいんだけれど?」
「あれはお前の父が勘違いしていただけだ。
獣の方は餌場の取り合いだし、リヒトルーチェはここ何年も自分以外見た事が無い。
要するに近くに居た猫はただの白猫だ」
「なるほどね」
「……お前は普通の人間よりも暖かい」
撫でていた手に擦り寄って来る様子が可愛くて、まるで妹か弟が出来た様に錯覚してしまう。
「寂しかったのかな?」
「別にそうではない」
「そう、会いに来てくれたのは嬉しいんだけどみんなビックリしちゃうから…今度からどうするか決めようか」
ベッドの上に呼んで座るように言うと、首を傾げたけれど私の隣に腰を下ろした。
「まずリヒトルーチェが神の使いってところは伏せようか」
「何故?」
「みんながリヒトルーチェについて詳しいわけじゃないのよ。
獣と捉える父の様な人も居ればただの白猫に見える人も多く居るわ。
だったら初めから人の姿を取るか、猫の姿を取るかを決めてしまえばこの屋敷の中では自由に出来るでしょう?」
「……なら、お前はどちらが良いんだ?」
じっと見詰められて、その愛らしい顔立ちに思わず胸が高鳴った。
しかし私の希望を優先してしまうとどうやって誤魔化せば良いんだろうと考える。
すると「お前が望むならあの父親は何とかしてくれるだろう」と表情を変えずに言うので「え?」とリヒトルーチェを見る。
「お前の妹でも弟でもどちらでも良い、人の姿の方が都合が良さそうだし。
それならお前の傍に居れるのだろう?」
「でも…君には何かやるべき事があるんじゃないの?」
うーんと窓の外を見ながら、何を考えてるのか分からない表情で「大丈夫だろう」と頷いた。
確信も無さそうだし目的が近付けば言ってくれるかなと勝手に決め付けて「それなら問題ないか」と私も頷く。
「それじゃあ後でお父様とお母様に相談に行こうか。
君が満足するまでここに居てくれて構わないよ、私も屋敷には一人で居るから」
「だからこそ、付け込まれたのかもな」
「え?」
「なんでもない、よろしく頼む」
ひとまわり小さな手のひらで手を取られ、私は嬉しさが勝って「こちらこそよろしくね」と握り返した。




