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本当の事

※異世界転生・転移モノではありません。




明るい星が見えた。

シェルターを出て夜を散策するのは私の日課になりつつあったのに、どこか晴れ晴れとした気持ちに高揚する。

先程までリヒトルーチェが食べていたスープの感想を聞いていたのだが、リヒトルーチェは驚いた様子も無く私の作ったスープを飲んだ。

味付けはもう少し濃い方が良いと言ってくれたけれど、人の姿を取るのは疲れないかと聞くも「別に」と特に心配する様な事も無さそうだ。

リヒトルーチェの昔話、それは人の世界に紛れ込んだ神様の血筋だと読んだ事がある。

リヒトルーチェはこの世界を見守る種族であり、白い猫の姿を模した神の使い。

長く白いしっぽはアンテナの様になっており危険を察知するとぶわっと膨らむらしい。

後の世に「天使」と伝え聞く伝承の生き物であった。

曇りひとつ無い真っ白な体毛と空の青を写し取った瞳は、人々の繁栄を見守り時に助けたとされている。

そんなリヒトルーチェが目の前に居るのだと分かった時、様々な描かれ方をされて来た彼らはどうして私の前に現れたのだろうかと考えた。

お父様のあの物言いは嘘じゃ無いだろう、リヒトルーチェの気まぐれでここに来たのだろうか?

彼とも彼女とも付かない性別の垣根を超えた見た目に驚く事が無かったので、リヒトルーチェの方が「奇妙では無いか?」と聞いてくるほど。

しかし私は他の人達の記憶のおかげなのか大抵の事はよくある事だと流せるようになっている。

なので「驚きはしたけどそう言う人も居るよね」と答えた。

それに不思議そうに目を丸くしたけれど、特に関心も無かったのかすすめるがままにスープを飲んでくれたのでホッとする。



明日の朝はまた猫に戻って居るとのことなので、猫用のスープを持って来る約束をした。

父の話していた内容も聞いてくれたみたいで助けられた恩を返すべく私を守ろうとしてくれるらしい。

だけれど私はゆっくりと首を振って否定した。



「お父様はアナタをただの白い猫…リヒトルーチェと言う生き物を獣と言ったけれど本当は違うでしょう?

正しければ神の使いとして貴方達はこの場所に居るはずよ。

誰かに何かを伝えに来たか、それとも何か使命があるか…ここには気が済むまで居てくれれば良いわ。

その事が正しければの話しだけれど」



そう言って笑うと、今度は思案するように私を見ていた。

良かった、夢で見た彼等とやはり同じだったのだろう。

しばらく悩んでいたけれど、ここに居る限りは世話になると諦めてくれたらしい。

しかし廊下を進みながらふと気付いた。



「……あれ?でも私、リヒトルーチェの事どの場所で見たんだっけ」



いつもならハッキリとしっかり覚えている記憶を呼び起こす。

色、匂い、痛み、音、映像から得られる情報をまとめて行くが何もヒットしない。

今までこんな事無かったのになと少しだけ不安になりながらも、この時間に出歩いているのを見付かったらきっとまたアリッサにお小言を貰ってしまうし、お父様やお母様に知られたらまた心配をかけてしまう。

足早に自室に向かいつつ、テーブルランプに手を掛けた。



「おやすみなさい」



ゆっくりとふかふかのダブルベッドに沈み込む。

毎日洗濯して取り替えてくれるシーツからはお日様の匂いがしたし、肩までかけたタオルケットもお香の香りがする。

着替えた寝巻きにも同じお香の香りがした。

枕に浅く頭を置いて、見慣れたグレーの天井を見詰めた。

窓のカーテンは閉められており、天幕の白いカーテンもしっかりと引いて翌朝の朝日に備える。

今まで通り同じ動きをしているはずなのに何か忘れている気がして仕方無い。

何を忘れていたのだったっけと考え出そうとするもののゆっくりと、思考がにぶって来るので眠気が来たのだなと諦めた。


私はリューナ、この世界でゆっくりとした時間を過ごす特に特徴も無い女の子。

次に目を覚ました時は一体誰に切り替わって居るのだろうかといつも通りにわくわくとしながら眠りに付くのだった。

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