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ただ出来る事をしよう

※異世界転生・転移モノではありません。



「おーい、これ」


「あ!忘れてましたすみません!」



声を掛けられて始めて、出しっぱなしになっていたコーンに気付いた。

片付けている最中に話し掛けられてそのままだったなと思い出しつつ持ち上げると「重くないの?」と聞かれて「重いですよ?」と眉を歪める。



「めちゃくちゃ軽く持ち上げるじゃん。

小さいのに力持ちなのかと思った」


「そりゃいつまでも持ってもらう訳にはいかないでしょ。

せっかく働かせて貰ってるんだから出来る事増やさねば!」



そう言っても持ち上げる限界はあって、ラバーコーンは5つが限界。

それだから5つずつ重ねているのに、先輩はそれを2つ重ねてしまうと10個を1度に持ち上げて倉庫まで持って行ってしまった。



「片付け忘れはそれで最後?」


「はい、ありがとうございます」


「うん。じゃあ、倉庫締めるから」



言われてじゃあ事務所前の清掃だけして帰るかと納屋へ向かうと「こら」と声を掛けられてビクッと肩を揺らしてゆっくりと振り返る。



「余計な仕事をしない、しっかり休む為に早く帰れ」


「……はあい」



職場の人達は年配の人ばかりで、私を孫扱いしながら重い物を持たせないように、危ない仕事を振らない様にと配慮してくれている節がある。

それが嬉しいと思う反面、力不足と元々の生真面目な性格も手伝って悔しさへと変わっていった。


中には先輩の様にそれに気付いて言ってくれる人も居たりして、本当に私は人に恵まれているなと苦笑する。



「出来る事だけすれば良い、頑張り過ぎて身体壊したら意味無いだろ」


「そう言いますけど、現場に足手まといを連れて行くのとベテラン連れて行くのならベテランの方が良いでしょう?」


「いくらベテランであっても性格クソな奴と行くなら足手まといを取るね、俺は」


「変わってますね……ま、先輩優しいですもんね。

色々お世話になってますし、大人しく今日は帰らせていただきます」


「帰れ帰れ」


「言い方!!!」



照れ隠しなのか、先輩は虫でも追い払うように私に手を振った。



「明日は事務所6時半な」


「はい!」


「くれぐれも早く来るなよ、6時半に来ても全然余裕な時間を予め伝えてるんだからな、せめて5分前までだぞ、それ以上早く来るなよ」


「分かりましたよ!!!」



早め早めに着いてしまう事も読み込み済みだと言われたようで、私は笑って先輩に手を振った。

こんな風に人に恵まれて生きていると、まるで自分が素敵な人になったかのように思い違いをしてしまいそうで怖い。

なので、私はあくまで私なのだと。

夢の中の人達とは違うんだぞとしっかりと言い聞かせるのだ。

夢の中の彼等は、私以上に素敵で格好良くて、優しい人達ばかり。

私の性格を考慮して居るのだろうが多少はっちゃけ過ぎる人も居るけれど、恐らく私の理想をモリモリに盛った存在達なのかもしれない。

ああなりたい、こうなりたい、理想がどんどんと膨らんで来た物が現実で見た物や今まで得た知識とくっついて生まれるのだろう。

気付けばそこに居たのと同じ様に、気付けば私だったのだ。

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