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世界最強の武器は「スポンジ」?無限強化で洗い殺す?! 〜スポンジに憑りついたポンコツ精霊と目指す、いつか最強の物語〜  作者: Reone
第二章 初めてのダンジョンは危険がいっぱい

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第42話 見えたなら、潰せる

「……二体!」


声が漏れた瞬間、手前のゴブリンが一段と吠えた。

片腕がないくせに、やけに気迫がある。いや、だからこそか。


(先に、手前を落とすか?)


――違う。


見えた“もう一体”は、壁の陰。

待ち伏せ役なら、こっちの背中を取るつもりだ。


つまり、ここで手前に集中したら負ける。


「……ジュリさん」


『なに!? いま忙しいんだけど!?』


「忙しいのは俺だ」


一歩、わざと前へ。

手前のゴブリンの意識を引きつける。


そして――足元の塵を、蹴った。


「っ!」


ゴブリンが目を細める。

その一瞬で、俺は体の向きを変えた。


「〖清掃〗グライド!」


床を“滑る”ように、横へ。

加速の感覚はまだ慣れないけど、いま必要なのは完璧さじゃない。


“位置”だ。


次の瞬間。


壁の陰から、もう一体が飛び出した。

手には、細い槍みたいなもの。


「やっぱり!」


俺が横に動かなければ、背中に刺さってた。

見えた時点で、勝ちだ。


『ユーリ! そいつ、体液の跡ない! 別個体!』


「わかってる!」


槍持ちのゴブリンは、軽い。

動きが速い。狙いがいやらしい。


こいつが本命。


片腕ゴブリンは、“囮”。


(やられたら、終わるやつだ……)


俺は一息で距離を詰めた。

槍が突き出される。


――来る。


来るなら、決める。


「〖清掃〗――!」


発動の瞬間、意識が“掃く”方向へ向く。

雑菌液が欲しいわけじゃない。

床でもない。


狙うのは――槍の穂先。


「……ッ!」


空気が弾けたみたいな感触。

槍の穂先が、ぬるっと滑って軌道を変えた。


「今!」


剣を振る。

浅い。だけど、確実に当てた。


槍持ちゴブリンがよろける。


『よし! そのまま!』


「言われなくても!」


追撃――と見せかけて、俺は一歩引いた。


片腕ゴブリンが、背後から突っ込んでくる。

こいつは、力任せ。


「……読めてる」


床を滑るように、斜め前へ。

突進が空を切る。


壁にぶつかって、ゴンッ、と鈍い音。


「はい、終わり」


振り下ろし。

首のあたりに刃が入る。


片腕ゴブリンが崩れた。


一瞬、静かになる。


でも、終わってない。


槍持ちが、距離を取っている。

目が、焦ってる。


(逃げる気だな)


逃げられたら、また報告される。

また対策される。


それだけは嫌だ。


「……させない」


俺は息を吸った。


ネックレスの石が、微かに熱を持つ。

あの“見える”感覚が、まだ残ってる。


(距離、角度……)


わかる。

逃げる方向が、わかる。


「〖清掃〗グライド!」


全力で踏み込む。

床が短くなるみたいに距離が縮む。


槍持ちは振り向いて、槍を振った。

牽制。時間稼ぎ。


――それも、読める。


俺は剣を低く構え、槍の間合いの“外”へ。

そして、槍の柄を足で払う。


バランスが崩れた瞬間。


「……ごめん」


言って、刺した。


槍持ちゴブリンは、短く呻いて倒れた。


『……勝った?』


「勝った……はず」


倒れた個体が動かないのを確認して、ようやく息を吐いた。

汗が背中を伝う。


「……危なかった」


『危なかったじゃないわよ! 危なすぎよ!』


「言うな、わかってる」


剣を拭う。

雑菌液……じゃなくて、血。

地味に嫌だ。


それでも。


“二体目”の存在が見えた。


あれは――ネックレスの効果だ。


(守る系じゃなくて、索敵系……)


「助かった。ありがとう」


『……えっ? いま、私に言った?』


「言った」


『……ふ、ふーん。まあ? 当然よね?』


「照れてんの?」


『照れてない! 勝ち誇ってるだけ!』


適当すぎる。

でも、こういうのが、いまはありがたい。

―――

倒したゴブリンから、ドロップが出た。


片腕ゴブリンは、小さめの魔石。

槍持ちゴブリンは――革袋と、細い札みたいなもの。


「また紙?」


『紙、多くない? この世界、紙が強いの?』


「知らないよ……」


札に触れた瞬間、あの“読まされる”感覚。


《簡易刻印札》

《対象:装備/武器》

《効果:一時的な認証/小効果付与》

《使用回数:1》


「……使い捨ての刻印札?」


『これ、さっきの取説と繋がってる感じじゃない?』


「たぶん……」


そして革袋。

中身は、銀っぽい硬貨が数枚。


「……貨幣?」


『お金!? やったじゃん!』


「やったけど……」


こういうのは、換金しないと価値がわからない。

でも、街に戻る理由はできた。


宝箱の小瓶もある。

ロッドもある。

ネックレスもある。


いまの俺は――持ち物が不釣り合いに豪華だ。


「……帰ろう。鑑定する」


『賛成! あと、今日はもう帰って寝よ!』


「俺もそうしたい」


通路を進みながら、ふと足を止めた。


体液の跡。


さっきは途中で途切れていた。

でも、その先に、うっすらと新しい跡がある。


「……?」


『なに? まだいる?』


「いや……」


跡が、“引きずった”感じじゃない。

細い。点々としている。


(誰かが、わざと残したみたいな……)


背筋が冷える。


さっき倒した二体が、すべてじゃない可能性。


あるいは――もっと上の存在が、近くにいる。


隻眼のゴブリンが言っていた“勇者”。

その単語が、脳裏をよぎる。


「……帰る。早めに」


『うん。帰ろ。やばい匂いがする』


俺たちは足を速めた。

ダンジョンの出口が、やけに遠く感じた。


そして。


出口の光が見えた瞬間。


ネックレスの石が、また淡く光った。


(……今度は、何が見えた?)


見えたのは――


“人影”。


入口の外側に、誰かが立っている。


待っているみたいに。

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