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給付が恐怖の頃なら

作者: 皮肉

冒頭から悪いが、俺は今ニートをしている。高校卒業以来、毎日パソコンの前で惰性に任せ時間を消費する毎日。面白いことも無いが、辛いこともないのでこの生活は悪くない。世の中が不況の雰囲気に飲み込まれている今、働く方が不幸に決まっている。だが、そんな俺の生活にも陰りが見え始めてきた。


「いつになったら働くんだ」


「もうお前をこの家に置いておくことは出来ない」


最近になって両親のこの様な言葉が多くなってきたのだ。確かに俺も心の奥では分かっている。あまり裕福な家庭でもないので、俺がこのままこの生活を続けるのは両親にとってかなりの負担となるだろう。


だが、このご時世である。世の中の大部分の人間が大学を出ている中、大学すら行っていない俺である。たとえ、そんな俺が就職活動をしてもブラック企業にさえも採用されないだろう。今働くことが出来る職場となれば、体力を使う工事現場くらいだ。


そこで俺は重い腰をあげた。


「働くからその前に大学へ行かせてくれ」


大学に行きたいがために世情やネットの世論を根拠にごね続け、なんとか両親を説得することに成功した。しかし、数年間勉強に触れていない俺だ。当然まともな大学には行くことは出来ず、試験などない、ただ授業料が高いような大学への入学となった。


言うまでもないが、こんな所には底辺のような人間しか集まってこない。


「アイリにだけは行きたくねぇよなぁ」


「大学さえ出てれば流石にアイリはないよな、、、、?」


そんな会話が聞こえてくるくらいだ。


『アイリ』とは、本当に働く所がないようなクズ人間達が集められ、強制的に労働させる所だ。噂では、食べて寝て仕事しての繰り返しで、人権すら危うい程キツイらしい。



そんな中で大学生活を始めた俺だが、伊達に数年間引きこもっていない。授業などほとんど出ておらず、邪魔する親がいない快適なニート生活を続けていた。


「大学生は最高だなあ」


そんなことを思い、全てから目を背けながら。そんなことだから当然、卒業に必要な単位など取れるはずもなく2留が確定した所だ。申し訳ないと思ってはいるが、親からの連絡は遮断している為、俺に親からの苦言は届かない。


そんな中、ある月から急に仕送りが無くなった。次月になっても振り込まれない為、意を決して俺は親に連絡することに。


何時間も逃げたい気持ちと葛藤した後、生きるには仕方ないと電話を取った。


「おかげになった電話番号は、現在使われておりません。」


???間違えたのかな、と考えもう一度掛けてみる。


「おかけになった電話番号は、現在使われておりません。」


どういう事だろう。電話が繋がらない。ヤバい。資金は尽きている。親がいないと生きていけない。働こうとしても、最底辺大学へ行き、さらに授業にも出ずに2留している人間だ。働ける場所など…


もう後先考えている場合ではない。直接実家へ赴くことにした。


「そろそろつくな」


だが、実家へ着いた瞬間俺は愕然とした。


家が売られている。


どういうことだ??俺は混乱した。近所の人間に聞いてみると、どうやら俺の両親は多大な借金を作ってしまい、数ヶ月前にそのまま自己破産したらしいのだ。


自己破産。


自己破産などしてしまったら恐らく彼等は社会から弾かれるだろう。仕事を見つけることすら不可能に近いはずだ。


そんなことを考えたのも束の間、俺は自分の事で頭がいっぱいになった。


「働かなきゃ。」


仕事を見つけなければならない。仕事を見つけなければ。



様々な所を回った。一日中仕事を探した。しかし、アパートを追われ、まともな服すらも買えない人間である。さらに、大学の事もある。こんな人間雇いたいと思うところなどなくて当然だった。



仕方ない。生きていくには、仕方ない。





数年後、俺は変わり果てた姿の父親に会うことになる。



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