昨日言ったじゃん。
掲載日:2019/11/06
「昨日言ったじゃん。」
小学生の頃、友人に言われた台詞だ。
何を言われたっけ。思い出せない。いらっとくる台詞だった。
その後も何度も何度も思い出そうとした。その日は眠れなかった。
「昨日言ったじゃん。」
実に不愉快な台詞だ。
私は社会人になってからもその台詞が脳にこべり付いていた。
部下を叱責する時。
妻や生まれた子供を叱責する時。
あの時の事を思い出しながら、その台詞を使った。
「昨日言ったじゃん。」
私が言うと相手の目玉が泳ぎ出す。
昨日の事を思い出しているのだ。
相手が困っている。
それを見ているだけ幸福感があった。
気を晴らすのにいい台詞だ。
いつの日か私の日常にこの台詞は欠かせなくなっていた。
そして最期の日
幸せだった。
天井を見る私を沢山の人が囲っている。
とても悲しんでいる。
かわいいかわいい孫たちも私を見ている。
視界がだんだんと明るくぼやけてくる。
これが終わりの時なのか。
最期の言葉だ。最期の言葉を言おう。
[これまで世話になったな。]
「昨日言ったじゃん。」
いらっとして死んだ。
いらっとしないで死のう




