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しめじ三郎 幻想奇談シリーズ

しめじ三郎 幻想奇談〜絶対に受ける薬〜(888文字小説)

作者: しめじ三郎

 お笑いコンビ「ヘーイタクシー」のボケのアナコンダ卓司は下積み生活が十年を超えている。同期の「りったんばっこん」や「天の原よしこかおり」がテレビで活躍しているのを見て焦っていた。

(このまま終わるんやないか?)

 卓司は相方の平井ゲルマニウムと話をしようと思い、連絡した。

「バイトが忙しいから無理や」

 芸人としての将来よりもバイトに穴を開ける事の方が重大になっている平井に絶望した卓司は、

(ピンでいこう)

 あっさりと決断した。平井の役割は、

「なんでやねん」

「もうええわ」

「ええ加減にせい」

 その三つの台詞しかなかったので、ピンになっても何も困らないと思った。そしてアパートの部屋ですぐにピン用のネタ作りを始めたが、思いつくネタは下ネタばかりでライブでは使えても、テレビでは無理なものだった。

(こんなんやといくら受けてもライブハウス止まりや)

 卓司は書き下ろしたネタ帳をゴミ箱に叩き込んだ。そのせいでゴミ箱の底が抜け、中のゴミが散乱した。卓司は仕方なくゴミ箱を買うために近くのリサイクルショップへ出かけた。ゴミ箱は手頃なものがすぐに見つかり、卓司はレジに行った。

「む?」

 レジに立っている店主の背後に気になるものを見つけた卓司は、

「それ売り物ですか?」

 「絶対に受ける薬」と書かれている茶色い瓶を指差した。店主は面倒臭そうにそちらに目を向けると、

「ちゃいます。何や知らんうちにそこにありましてん。欲しければあげまっせ」

「ほんまでっか」

 卓司はその瓶を譲り受けると、ゴミ箱を抱えてアパートに帰った。

「一日一錠厳守か」

 卓司は用法用量を確認して蓋を開けると生ゴミの腐ったような臭いが噴き出し、思わず瓶を投げてしまった。中からいく粒もの黒い錠剤が転がり出して部屋に異様な臭いが充満した。

(たまらん!)

 卓司は窓を開けて換気をした。それでも我慢できなかったので部屋を出た。

(臭いが取れへん)

 卓司は自分の身体に付いた悪臭に顔をしかめた。周囲の人は卓司を見て腹を抱えて笑っている。中には引きつけを起こして倒れる老人もいた。

(俺は笑われるより笑わす芸人になりたいねん!)

 行く先々で爆笑された卓司は涙を流して走り続けた。

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