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第13章 「欠けていた過去…そして、共に歩む未来!」

「あ、あの…皆さん!」

 意を決したかのような、英里奈ちゃんの叫び。

 その上品な叫び声に、すっかり頭の中が打ち上げモードになっていた私達は、一斉に振り向いたの。

「うん…?どうかしたの、英里?」

 マリナちゃんの問い掛けに、英里奈ちゃんは校門を指差して応じたんだ。

「あの…せっかくですから、登校の時と同じように、タイミングを揃えて校門を潜りませんか?この御子柴中学校の校門を(わたくし)達が潜るのも、これが最後になってしまいますし…」

 このように言い終えた英里奈ちゃんの指の先では、校舎と同様に、西陽で赤く照らされた校門が、夕闇迫る中にボンヤリと浮かび上がっていた。

「そっか…いよいよ、これで最後なんだね…」

 私達が在校生として潜る機会は、もう2度と訪れない。

 そう改めて考えてみると、校門を潜るって事が、物凄く重みを伴った行動に思えて来ちゃうよ。

 今までは、当たり前のように繰り返してきたのにね。

「それは良い考え方だよ、英里奈ちゃん!」

 そう思った私は、二つ返事で賛成したんだけど…

「しかし…登校時と全く同じというのも、いささか芸がございませんね…」

 ちょっと待ちなさいよ、英里奈ちゃん…

 そんな発言を言い出しっぺがしたら、台無しだよ。

「あっ、そうだ!」

 こう言いながら、こっちがビックリするような勢いと音量で、両手をド派手に打ち鳴らしたのは、京花ちゃんだった。

「いきなりデカい音を出すなよ、お京!驚くじゃないか…」

 マリナちゃんが文句を言うのも、無理もないよね。

 正月の寄席番組や支局の忘年会のラストで行われる一本締めでも、ここまで大きな音は出さないよね。

 声だって、手拍子に負けず劣らず、随分と大きかったし。

「ああ…ゴメン、ゴメン!だって、急に良い事思い付いちゃって!」

「全く、しょうがない奴だな…じゃあ、その『良い事』とやらは何なのか?言ってみなよ、お京。」

 呆れ顔で促すマリナちゃんに向かって、京花ちゃんは自信満々と頷いたんだ。

「どうかな、4人で、『ホップ、ステップ、ジャンプ!』のリズムに合わせて、校庭と歩道の境目を踏み越えてみようよ!」

「最後にジャンプして境目を踏み越えるの?要するに、『七緒、報告します!』のOPみたいに?」

 水曜深夜に放送している萌え系日常アニメを例えに出すなんて、我ながら想像力が偏っているなあ…

 でも、複数人数の女の子が御揃いで跳び跳ねる様子を、他の比喩表現で上手く言い表す事なんて、果たして出来るのかな?

 私には、ちょっと自信がないなあ…

「そう!『ホップ』と『ステップ』には『御子柴中からの旅立ち』を、『ジャンプ』には『来るべき御子柴 高校での学校生活への飛翔』って意味合いを込めてさ!どうかな、このアイディア?」

 右目を軽く閉じ、右手の親指を力強く立てたポーズで、京花ちゃんが私達の同意を求めてくる。

 爽やかキャラをアピールしてのポージングなのかな、それって…

「京花さん…その、いかにも京花さんらしい着想ですね!」

 ああ、女子力というか、ヒロイン力が高いね、英里奈ちゃんったら…

 両手の指を胸元で組み合わせた姿勢で、京花ちゃんの提案に賛同しちゃうんだもの。昔の少女漫画の表紙なら、瞳の中に星が光っているだろうね。

「ああ!お京にしては、悪くない発想だよ!」

上の句へのアクセントを殊更に強調した発音だね、マリナちゃん。

「ちょっと、マリナちゃん…!『お京にしては』は、一言余計じゃない?」

 苛立たしそうに抗議しながら、肩に置かれたマリナちゃんの左手を振り払う京花ちゃん。

 だけど、その怒りが本気でない事は、仲良し同士の間柄なら明白だね。

「ハハハ…悪かった!取り消すよ、お京!本当の事を言うと私、お京のそういう爽やか青春路線って、結構好きなんだよね!」

 そういう今のマリナちゃんも、なかなかに爽やかな笑顔じゃない。

 私見だけど、充分青春してると思うんだよね。

「もう、マリナちゃんったら…最初から素直にそう言えばいいのに…」

 今の京花ちゃんの方こそ、素直に喜べばいいんじゃないかな。

 照れ隠しに、マリナちゃんの脇腹に肘鉄を決めるより、その方がいいよ。

「と言う訳で、お京の提案には私も1票!どうする、ちさ?」

 マリナちゃんが賛成票を入れた事で、現時点での有権者の支持率は75%か。

 多数決の原理では、これで採決なんだけど…

「じゃあ、私も賛成票に1票。込められた意味合いにも納得だし、ケチをつける理由も思い当たらないからね。」

 私が高々と右手を挙げた事で、京花ちゃんの提案もまた、文句無しの満場一致と相成った訳だよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] き○らジャンプ……その名称考えた人は天才だわ( ´∀` )
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