※姫は魔王に嫁ぎたい~そしたら勇者(女)の婚約者になってしまった~
「どう言うことですの!」
ーーわたくしは叫ばずにはいられませんでした。
ある爆弾発言をした、わたくしにお父様は謹慎を言い渡しました。そこは仕方ないと理解しています。
偽りない胸のうちとはいえ、一国の姫であるわたくしが口にしてはいけない事です。
しかし、聞かれているとは思ってなかったのですわ。
だって、自分の部屋で独り言を言ってただけですのよ……?
部屋の外には護衛の騎士がいるからといってもわたくしの独り言が聞こえてるなんて思いませんでした。
地獄耳にもほどがあります。
わたくしの爆弾発言はすぐお父様に報告され、暫く謹慎しろと……実際は軟禁に近かったですが。
そのあと数日は、なんの音沙汰もなく放置されていました。
食事も部屋で一人では味気なくて……
ほんのちょっと、言わなければよかったと後悔しました。
ーー嘘です。この想いを胸に秘めていることが出来なかったからこそついポロっと声に出してしまったのです。
『ルアート様……お慕いしております。もし、叶うならばわたくしをお嫁さんにしてほしいですわ……』と……
ルアート様は魔王と恐れられている方で魔国ルアートの王ですわ。
世界を統一するために我が国にも戦争を仕掛けています。
本来であれば憎むべき相手、しかしわたくしは自信に満ち溢れた赤く強い瞳に射ぬかれた時、恋に落ちてしまったのです。
だってあまりにもわたくしの理想通りの方で。
そもそもルアート様が戦争を仕掛けているのは迫害された者達のため。気高く、強く、やさしいお方……だとわたくしは思っているのです。
いけませんね、話が脱線してしまいました。
ルアート様への想いは今は一先ず置いといきます。
進展があったのは、わたくしが暇をもて余してとりあえず紅茶でもと呼び出しのベルをならそうとしたときでした。
ベルを鳴らす前にコンコンと、ドアがノックされたのです。
謹慎を言い渡された今、この部屋を訪れる者は一人だけ……
わたくしの専属メイド、マーラですわ。
マーラはわたくしの乳母の娘で幼いときから一緒に育ち、彼女が7才の時、メイドになりました。
次の年にはわたくしの専属になったのでとても優秀ですわ。
マーラは足音もたてずに入室すると……「失礼します」恭しく礼をしました。
「マーラ、ちょうどいいタイミングですわね。お茶を頼もうと思っていたの」
「いえ、姫様。王がお呼びです……準備をいたしますので、こちらに着替えてください……」
「お父様が……? 何故、今ですの……?」
わたくしの予想だと、このまま別の国の側室にでもと婚約の算段をしていると思っていました。
少なくてもあと半月は放置されるものだとばかり……
とりあえず着替えが終わり、王の間に向かったわたくしに父は婚約者が決まったと告げたました。
そこは予想通りでしたがその婚約者が予想だにしない方でした。
この国の勇者……シャルル様、わたくしは叫ばすにはいられませんでした。
「どう言うことですの! なぜ、シャルル様なのですか?」
わたくしはこれでも王族ですから望まぬ結婚をすることはわかっていました。
その婚約者がシャルル様でなければわたくしは納得していたでしょう。
なぜよりにもよってあの方が選ばれたのかわたくしにはわかりませんでした。
別にわたくしはシャルル様のことが嫌いと言うわけではありません。
寧ろとても素敵な方だとは思っています。
誰にでも優しく、勇敢で、気高い。正直言って……わたくしの好みです。
ですが、結婚など出きるはずがないのです。
わたくしは女、シャルル様も女、天地がひっくり返っても結婚は無理です。
わたくしがいくら魔王に恋い焦がれていようとも結婚できないのと同じくらい、いえそれ以上に無理です。
でもシャルル様との結婚がまかり通るならばわたくしとルアート様の結婚もまかり通るのでは?
ふとそういう考えに至ったわたくしはお父様に訪ねました。
「お父様…、シャルル様と結婚ができるならルアート様と結婚しても構わないのではないのですか?女性同士で結婚するより現実的です」
いくらか落ち着きを取り戻したわたくしの一言にお父様も控えていた近衛もどよめいていますが関係ありません。
「お前は何をバカなことを考えるている。……それに勇者が女なのにお前の婚約者に選ばれたのには理由がある」
「理由ですか……? 一体どんな理由があれば女性同士で婚約と言う事になるのです?」
お父様は渋面を浮かべて押し黙ってしまった。
「それは私から話しますよ……リクルー様」
いつの間に入室していシャルル様が近づいて来ました。
「シャルル様は理由を知っていますの?」
「表向きの理由は国民達が望んでいるからです。リクルー様が城下に行くときは私も一緒に行くじゃないですか、その時仲の良さそうに話している私達を見て『二人が結婚すれば王国も安泰だ』という話になっているんです。私は男だと思われてますからね。本当の理由は……」
シャルル様は言葉を切りました。
なかなか続きを言わないシャルル様にしびれを切らし、続きをうながします。
「表向き……? 本当の理由はなんですの?」
「魔王を好きになった二人を一緒に監視するためですね。婚約者ならば一緒に行動してても不自然ではないですから。私もルアート様に恋してるんだ……」
そう言ったシャルル様の顔はリンゴのように赤くなってます。
シャルル様にこんな可愛い一面があるとは……ってそんなことは今はいいのです。
「シャルル様もルアート様を……? 本気ですの?」
わたくしには信じられませんでした。
だって、魔王を倒すために選出されたのが勇者なのですよ?
その勇者が魔王に恋?
「本気だよ。私は昔、ルアート様に助けてもらったことがあるんだ。勇者になったのはルアート様に逢うにはそれが一番の近道だと思ったからなんだ。力をつけないと魔王城にはたどり着けないから国に支援してほしくてね」
今まで沈黙していたお父様が口を開く。
「国を利用するなど本来なら極刑ものだか、城下の者に人気のある勇者を処分すると色々問題がある。お前と一緒に行動させて監視をつけようと思ってな」
「シャルル様はこれから魔王討伐の旅に出掛けるんですわよね? 私もついていくということですか?」
「そうだ。お前は治癒職として共に旅立つのだ」
レベルの低いわたくしがシャルル様と?
「正直、自殺行為だと思いますわ」
「すぐに旅立つわけではない。しばらくはお前のレベル上げを勇者と監視のもので行う。せめてレベル20まで上げてから旅だってもらう」
「それならば大丈夫かもしれませんが、わたくしが着いていっても宜しいのですかシャルル様?」
「構わないよ。お互いに同じ人を求めてる。恋のライバルとはフェアでいたい。でもルアート様の妃の座は私がもらうからね」
そう言ったシャルル様は手を私に差し出しました。
「シャルル様……私も譲るつもりはありませんわ」
わたくしはその手を握り、固く握手を交わしたのです。
「余は選択肢を間違えたかもしれん……」
お父様が頭を抱えてしまいましたが、わたくし達は構わずこれからのことについての話をし始めました。
作者の語彙力がなくて申し訳ありません。
相変わらずいきなり話が進んだりするので読みにくかったらすみません⤵⤵