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日常回③ 午後から

ソロモンよ。私は帰ってきた。

さて、沢山身体を動かして遊んだ後は、軽く汗を拭いてお昼ごはんだ。


 ちょうど、イーシェも午前中の職務を終わらせて、食堂へやってきた。


 「おお、タケル、ウェンディちょうどよかった。おや、オリーブもこちらにいたのか。一緒に昼食をとろう。」


 「「「うん!」」」


ちなみにイーシェは公式の場でない限りオレにもウェンディにもフランクな話し方をしてくれる。

そこは必殺<敬語に対して寂しそうな顔>を使った結果です。


こうか は ばつぐん だった。


閑話休題


オレたちは和気あいあいとお昼ごはんを食べる。

席順決めは若干もめるけどね

今日は一番小さいウェンディが俺の隣で、向かいにオリーブ、斜めにイーシェが座った。

「そうか、午前中はいっぱい遊んだか。」

「うん。でもいつかは二人から逃げ切ってみせるよ!」

おっと、ウェンディが悲しそうな顔で

「にいさま、ウェンディがきらいなの……」

なんて言ってきた。

オリーブもジッとこっちを見ている。


漢タケル。ここは引くわけにはいかぬっ。


「はははっ。ウェンディやオリーブを嫌いになるわけないだろう。でも、鬼ごっこは本気でやったほうが楽しいんだよ。二人ともちゃんと追っかけてくれよ。」

うん。体のトレーニングにもなるしね!


「「うん!絶対どこまでも追いかける!(一生逃がさない)」」


……ぞくっ。


なんだ?今のプレッシャーは!

ええい!気のせいだ!


「おう、どんとこい!」

ウェンディもオリーブもいい笑顔だなあ。


「ふっ。楽しそうでよかったな。みんな。」

「イーシェねえさまはこの後どうするの?」

「ん?この後は鍛錬だな。」

「ぼくも一緒していいかな?」

「ふふ。もちろんいいぞ。一緒に鍛錬しようか。」

「「わたしもっ!!」」


こうして、午後はみんなでトレーニングすることになった。

あ、話すときは一人称はぼくって言ってるんだぜ。


…………


……


「ハア……ハア……。」


トレーニングといってもそこは幼児。

まだまだ、身体は出来ていない。

ウェンディとオリーブはすぐに飽きたのか木陰に座り込んでこちらをジーッと見つめるモードに早々と突入したようだ。


でも、オレはあきらめずに汗だくになりながら、反射神経を鍛え、体幹を鍛え、剣を持ち、イーシェにも教えを請いながら自身の身体をいじめぬく。


「……タケル。どうしてタケルはそんなに頑張るんだ?」


まあ、この世界なら当然の疑問なんだろうな。

男ってだけで甘やかされる世界でオレも無茶なことをしても怒られた記憶はない。

なんならみんなダダ甘。

でもそれに甘えることは「神宮」の男として絶対にできない。


「ぼくは男だけど……かあさまやねえさま、ウェンディやエリーゼ、オリーブそして屋敷のみんなを守れるくらい強くなりたいんだ。みんなぼくに良くしてくれるからおおきくなったらみんなに少しでもありがとうが返せるように!」


これは紛れもないオレの本心だ。

前世の爺ちゃんや父ちゃんとの約束もあるけど、オレは絶対にもう後悔はしない。

魔族のいる世界。大好きな家族の幸せはこの手で守って見せる!


そんな思いをのせて、まだ舌足らずながらもはっきりと言い切る。

言い切ることで目標が明確になり、また体と心に力が漲ってくる。


「……………………//////」


みんな黙っちゃったな。

でも、これは譲れないんだ。

オレは前世のトレーニングに比べたらなんてことないと自らに言い聞かせその後も一心不乱にトレーニングに打ち込んだ。


…………


……


 日も傾いてきたころ

 「よし。そろそろあがろうか。タケル、メリハリも大事だぞ。」

 「ハア……ハア……。うん。わかった。ねえさま。」


 オレは息を整え、整理体操を始める。

 ふと、視線を向けるとウェンディとオリーブは仲良く木の下で眠りこけていた。


 「やれやれ。」

 イーシェは頬を緩めると二人を両手にそれぞれ抱えて、

 「それでは、タケル。家に帰ろう。」

 と言った。


 オレも「うん!」と返事をしてイーシェと並んで歩きだした。

 

 途中で寝てた二人も目を覚まし、みんなでお風呂タイムだ。

 

ちなみにこの世界、お風呂は生活魔法で割と簡単に入れるので一般にも大分普及しているようだ。

元日本人としてはうれしい限りだ。

しかもしっかりと湯舟に浸かるタイプである。


「あらあら。こんなに汗をかいて、しっかりお風呂に入りましょうね。」


 お風呂に入るときはエリーゼがどこからともなく現れ、布タオルや着替えなどを準備して一緒に入るのも日課である。


 シングウ家のお風呂は広くみんなで入っても余裕であるのだ。

 

 大体はウェンディ、エリーゼ、オリーブと一緒で、イーシェはタイミング次第、アンは休日ぐらいかな。


「タケルさま!背中流してあげる!」

「あー、ずるい。わたしがにいさまのからだをあらうの。」

「あらあら、二人ともまずは自分の体をキレイにしましょうね。タケルさまに嫌われちゃうわよ。」

「「えー。」」

わたわたと体を洗い出す幼女たち。……可愛い。


「ふむ。タケル、髪を洗ってやろう。こっちに来い。」

「あら?じゃあ私がお体を洗って差し上げますね。」

「ずるーい。わたしもあらうのー。」

「わたしだってあらいたいよー。」


いや、自分で洗わせてくれませんか。だめですか。そうですか。


こうして今日もオレはもみくちゃに洗われる運命だった。

いや、嬉しいよ!嬉しいのだけど!


……たまには一人ゆっくりお風呂に入りたいなあ。なんて思うのは贅沢なんだろうな。

なんだかんだ幼女二人も大人組に洗ってもらってるし。


お風呂からあがってさっぱりしたら、少し休んで夕食だ。

お風呂あがりは女性陣が心なしかツヤツヤしてる。


夕食の時間はアンもよっぽどのことがない限り合流する。


大体はオリーブも夕食を一緒に食べる。

アンはそこらへん大らかで、エリーゼにも席についてほしいようだが、エリーゼがオレたちの世話を譲らないようだ。


夕食はしっかりタンパク質が取れる魚か肉がメインで、華美過ぎず、質素過ぎない美味しい料理が出てくる。

うちの料理長は腕が良い。40過ぎの豪快な人だがたまにお菓子をくれるので、とても優しいし。


「してタケルよ。今日はどうだったのだ。」

夕食の時は大体家族の報告時間だ。

隣に座ったアンが聞いてくる。


それを、逆隣のウェンディが

「にいさま。今日もかっこよかったよ。」

なんて言ったり。


向かいのオリーブが

「おにごっこであそんでいただきました!」

なんて報告したりする。


イーシェからトレーニングが少しハードだと聞かされると

「なに、タケル。そなたそんなことをしておるのか。」

と心配され、でも引かずに頑張る決意表明をしたりしている。

エリーゼは甲斐甲斐しくみんなの世話を焼いてくれるし、良い食卓だと思う。


……あーんは恥ずかしいけど。




…………


 美味しい夕食を食べた後は、アンに勉強や魔法を教えてもらっている。

 本来ならば親子水入らずの時間だが、オレが頼み込んだ。


 忙しくて疲れているのに、いやな顔一つしないで子どもの相手をしてくれるアンは立場は偉いが本当に良い女性だと思う。


 ちなみに魔法はイーシェもある程度使えるが、アンのほうが得意だ。

 アンが子どもたちとの触れ合いの一環としてほぼ毎日付き合ってくれる。


 魔力の練り方や、この世界の歴史、貴族としての振る舞いなど様々なことを教えてもらっている。

 もう少し成長したら戦略や戦術なんかも教えてほしい。


 そのうちウェンディがうつらうつらしてくるので、三人でベッドに入り眠りにつく。

 

 眠る時もこっそり魔力を練っているが、アンは気付いているだろうが注意はしない。

 

 



 本当に幸せな日々だ。


 そう思いながら、オレはゆっくりと眠りに落ちていくのだった。


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