日常回② 午前中 妹と幼なじみ
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乳母さんいるなら娘いるんじゃね?
幼なじみその1ですな!
ちょっとお姉ちゃんにしよう。
あ、でも身分差どうしよ?
ま、いっか。(勢い)
さーて、母さまを見送った後はどうしようかな。
いつもこの時間は自由時間だ。
エリーゼはずっと付いていてくれる。
ウェンディはいつでもオレの傍にいたがるし、当然のように一緒だ。
腹ごなしの散歩がてら中庭に出る。
「タッケルさま~。おはようございま~す。」
おもむろに声を掛けられる。
声の方へ目を向けると活発そうな女の子が笑顔で駆けてくる。
この子はエリーゼの娘、オリーブ。
ちょっと歳上の5歳。
乳母の娘ということで、一緒になる機会の多かった子だが、乳児から幼児となって、物心がついたのか最近は特によく遊びに来ることが多くなった。
エリーゼと同じ赤みがかった髪をショートにしている、元気いっぱいの子猫みたいな可愛い女の子だ。
「きょうも、ごいっしょさせてください!」
オレのすぐ近くまで来るとニコニコと微笑んで手を取ってくる。
「むぅ……。」
ただ、困ったことに何故かいつもウェンディの機嫌が心なしか悪くなるんだよね。
相性悪いのかな。
まあ、オリーブの方は相手の身分が上なもんで、一応気を付けて接しているんだけど(多分エリーゼの教育)、何となくウェンディに対しては冷めている気がする。
「あ、ウェンディさま。いたんだ!全然気付かなかったよ。おはようございます。」
「……おはようございます。」
そう言って反対側の手を握るウェンディ。
「「………………。」」
そして、オレを挟んで向かい合う二人。
バチッ……
幻聴が聴こえる。
「あらあら、二人とも。タケルさまが困っていますよ。」
二人は、エリーゼの一声でようやく動いてくれた。
「タケルさま!あそぼう!」
「にいさま。あそびましょう!」
そして、ハモる二人。本当は仲良いのかな。
「あ、ああ。いいよ。何して遊ぶ?」
「おままごと!」
「鬼ごっこ!」
「……じゃんけんで決めようか。」
じゃんけんは、オレが教えた。
もっとオリーブが小さいときはウェンディとこういう時に少しだけ揉めてたからな。
「「じゃーーん、けーん…………ぽん!」」
勝者……オリーブ!
「じゃ、鬼ごっこしようか。」
「やったーー!」
「うぅ……。(にいさまとのしんこんせいかつが……)ボソッ」
まぁ、ウェンディは身体動かすのは、まだあまり得意じゃないのかもな。
ちなみに鬼ごっこは身体も動かすから、オレはけっこう好きだ。
「じゃあ、オレがさいしょのオニやるよ。」
「「うん。」」
「じゃあ、5つ数えたら追いかけるからね。いーち、にーい……」
ジリジリと離れていく二人。
……いやいや、もっと逃げようよ。
「……ご!いくよ!」
さぁ、つかまえる……ぞ?
「「キャー!」」
「いや、にげろよ!」
「「えー?」」
身をよじって、楽しそうにしてる二人。
可愛いけど、違うから!鬼ごっこそういうんじゃないから!
「はぁ……。とりあえず、はいタッチ。」
おい、何で二人で当たりにくるんだよ!?
「もー。じゃあ、つぎはふたりでオニな!オレをつかまえてみな!」
「「わかった!!」」
やっぱ仲良いだろ、お前ら。
「「いちにーさんしーご!」」
はやっ!ズルいぞ!
「うぉぉぉぉぉ!」
全力で逃げるオレ。
「まてー。」
「かんねんしろー。」
全力で追いかけてくる二人。
え?ウェンディさんまではやくね?
……だがしかし、簡単に負ける訳にはいかんのだよ!
「ま、け、る、かー!」
気分は加速する装置。あとは勇気だけだ!!
「「まーてー!」」
これだよ。鬼ごっこはこれなんだよ。変則の2対1だけど。
「ハァ……ハァ……。まってよぉ。にいさまぁ。」
うっ……。
ウェンディの悲しそうな声に思わず足が鈍ってしまう。
「えへへー。すきあり!」
ガバッ!
おおっと。危ない。
「ウェンディ、ちょっとズルいぞー。」
「ちぇっ。にいさまつかまえたとおもったのに。」
間一髪ウェンディの抱きつきをかわしたオレは再び、逃走を開始しようとする。
「すきありっ!」
「うぉぉぉぉぉっ!」
ガバッ
今のはマジで危なかった……。
いつの間にか横に回り込んでたオリーブの不意を突いた抱きつき。
こちらも何とか間一髪!
てか、君達……。
タッチならもうとっくに勝負はついてるのになぜに抱きつきにこだわるの?
まぁ、いいや。全力で逃げるだけだ。
こうして、謎の執念を感じた鬼ごっこはしばらく続いた。
けっこういい運動になったよね。
結果?
オレの惨敗でした。
なんだよ。あの不屈の執念。
結局二人に抱きつかれて、
疲れきってたオレはしばらく動けず……。
……でも、可愛い子二人に抱きつかれているのってご褒美な気もして、負けたのに複雑な気分でした。
いや、次こそは逃げ切ってやる!
そうオレは心に決めた!