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日常回① いつもの朝

 オレはタケル。

 現在4歳半ば。

 そんなオレのある日の1日。



 チチチ……チュンチュン……


「う、うーん。」

 窓から射し込む光を顔に受け、ゆっくりと意識が浮かび上がってくる。


 心地良いまどろみを感じながら、オレは微かに目を開ける。


 目の前には……胸!

 少し視線を上げると、そこには切れ長の目を細めて、とても穏やかな顔をしてこちらを眺めている美女がいた。

 明るい茶色の髪の毛は肩にかかるくらいの長さで、鼻筋はスッと通っていて、いつもは凜としている美人も、今はとても柔らかい表情をしている。


 子供を一人産んでいるとはまるで信じられないようなプロポーションを誇るこの女性こそ、今世のオレの養母であるアンネリーゼ様だ。


「おや、目が覚めたか。おはよう、タケル。」

「おはようございましゅ……。」


 少し寝起きで舌足らずなしゃべりだが、しっかりと挨拶を返す。

 挨拶大事!!


「…………。う、うむ。いい朝だな。」


 朝日に照らされた彼女の顔は赤く染まっているようにも見え、やはりとても綺麗だ。


「……ぅ。にいたま?」


 ふと、後ろから声が聞こえてくる。

 ウェンディだ。母親譲りの茶髪とその整った顔がとても愛おしい。

 オレは振り向くと笑顔でウェンディに挨拶する。


「おはよう。ウェンディ。」

「お、おはようございます。にいさま。あ……。」

 

 ふと、ウェンディが悲しそうな顔をする。

 見ると、彼女の寝ていたところに小さな世界地図が。


「ぅぅぅ、ご、ごめんなさい。」

 

 まだ、夜のオムツ卒業は早かったか……。


「しょうがないよ。だいじょうぶ。ウェンディはいいこだから。」


 頭を撫でながら、慰める。

 手触りいいなあ……。


「ん?ああ、やってしまったのか。どれ。」

 そう言って、状況を確認した母さまはベルを鳴らす。


 少ししてノックの音が聞こえてきた。

「アンネリーゼ様。いかが致しました?」

 ついで、柔らかな声が聞こえてくる。

「エリーゼか。入ってきてくれ。」

「はい。失礼いたします。」

 

 寝室の扉を開けて入ってきたのは、赤みがかった髪を三つ編みに束ねた、温和な顔をした乳母のエリーゼだった。

「おはようございます。」

 エリーゼは入室とともに朝の挨拶をする。

「うむ、おはよう。」

「おはようございます。」

「ぅぅ……グスッ……おはよう……ごじゃいましゅ……ヒック。」


 それぞれ挨拶を返す。若干一名とても可愛いのがいたけれども……。

 その声を聞いたエリーゼは、視線を未だオレに撫でられ続けている妹に移した。

 そして、

「あらあら。」

 と言って手を胸の前で叩くと、状況を理解したようだ。

 そして手早くウェンディと隣で寝ていたオレの服を脱がせ、身体を拭いてくれる。


 ……気のせいか。念入りだな、オレのほうが。


 そうして、まずウェンディを脇に畳んであった服に着替えさせる。

 

 この隙にオレも自分で服を着る。気恥ずかしいんだよ。

「「あぁ……。」」

 何で、そんな残念そうな声を出すの?

 しかも母さままで……。


 というか、母さま……。手を出そうとしてエリーゼにやんわり止められて、そんな切なそうな顔をしないでください。

 エリーゼは手早く洗濯物と、ベッドの布をまとめる。


 一応、母さまの名誉のために言っておくけど、母さまは自分で子供の面倒を見ようとしてくれるんだけど、

 立場的にあまりよろしくないらしい。

 特に今の不安定な状況では。


 後は、実は母さま意外に不器用だからね。周りにやんわり止められてよくしゅんとしている。

 ギャップってやつかな。言えないけどすごく可愛い。


「こちらはお洗濯しておきますね。それとご朝食が出来ておりますので、食堂の方へどうぞ。」

「ふむ。わかった。」


 そうして、皆で朝の身支度を整え、食堂へ向かう。


「ごっはっん。ごっはっん。」


 鳴いたカラスが何とやら。

 ウェンディはご機嫌な様子で、オレと繋いだ手をぶんぶん振り回す。


「フフッ。」


 母さまも手を繋ぎながら微笑む。

 うん。幸せな光景だ。


 ……ただ、何で三人で手を繋いでいるのに、真ん中がオレなんだろうね。

 普通母さまじゃね?


 広い食堂の中で、親子三人だけでテーブルに座る。

 母さまは、朝と夜は極力皆で食べるようにしてくれているみたいだ。

 忙しいのにとても感謝している。

 壁には、侍女の皆が控えている。

 

 エリーゼはオレとウェンディの傍でお世話してくれている。

 でも、やっぱり、慣れないし、落ち着かないよなぁ。

 食べていると、なんとなく視線を感じるし。単純に三人だけでこの広さはさびしい。

 仕方ないんだけどね。


 この世界の女の人って、綺麗な人が多いなあ。

 屋敷の中しか知らないけれど。


 あ、侍女の人たちにもお世話になることが多いから、挨拶とお礼はしっかりしているよ。


 さて、朝ごはんだ。

 ご飯って言ってもこの世界でお米はまだ見てないんだけどね。意訳です。


 なんて訳わからないことを考えたこともあったな。お米恋しい。

 今日のご飯は、パン・スープ・サラダ・ハム・ミルクだ。

 一般庶民的にはかなり豪華な朝食らしいが、領地を持つ貴族としては全然みたいだ。

 母さまはそんなに贅沢をしない。


 身分相応に恥ずかしくない程度の生活をしている。そんな母さまは好ましいと思う。


 皆で朝食前に祈りの動作をして(前の世界で言う『いただきます』のようなもの)食べ始める。


「おいしいね!」

「うん。おいしいね。」


 ウェンディとそんなことを言い合いながら食べる朝ごはんは最高だ。


「にいさま。あーん。」

「お、おい。ウェンディ。はずかしいよ。」

「いやなの?]


 そんな潤んだ目で見ないでくれ……。

「わかったよ。」

 パクッ。

「おいしい?」

「うん、おいしいよ。」

「えへへぇ。」


 ……ピリッ。

 なんだ?今悪寒がしたぞ?


「……ッゴホン。タケル、口を開けるんだ。」

「かあさま?」

「はやくっ。」

「は、はい」

 パクッ

「フフフッ。」


 ……ピリッ。


「あらあら、タケル様。あーんしてくださいませ?」

 エ、エリーゼさん?

 そんな首を傾げないで下さい。……仕方ない。

 パクッ

「うふふふ。」


 ……ピリッ


 さっきからなんとなく空気が重いなあ。


「にいさま、にいさま。」

 呼ばれて振り向くと、ウェンディが雛のように口を開けている。

 あらやだ。可愛い。


「ウェンディ?」

 じー。


 ぬう。これは、シングウ家の長兄として逃げること能わず。

「ウェンディ。あーん。」

「あーーーん。おいしぃ!にいさま!」


 ……ピリッ。

(……クッ。さすがにあれは、私には無理だ。)ボソッ

(あらー。私もこの場でタケル様のものをいただくわけにはいきませんねえ。)ボソッ

「えへへぇ。」


 まあ、可愛いからいいか!


 そんなこんなで、和気藹々とした楽しい(?)朝食の時間は過ぎていった。


 朝食後のまったりとした時間を過ごした後は、母さまの見送りだ。

 ちなみにこの時間は、たまにイーシェがやって来るのだが、今日は来ないようだ。

「では、私は仕事へと行ってくる。二人ともいい子にしていろよ。」

「「かあさま。いってらっしゃい。」」

「フフッ。行ってくるぞ。」


 そうして、母さまはいつも頬にキスをしてくれるので、オレ達も頬にキスを返す。

 母さまはとても軽い足取りで仕事へと向かうのだった。


 ……しかし、なんでオレはウェンディとも頬にキスをしなければいけないんだろうな。


 まあ、大体こうしてオレの朝は過ぎていく。


次は、日常回②


しかし、小説って進まないものですね。

他の作者様ってすごいと思いました。

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