行き違いとお礼のジュース
「これでよし!やっと終わったー」
「お疲れ、千沙!」
「朱莉もね!」
全ての作業が終わった私と朱莉は背伸びをしながらお互いにそう言いあった。
「そういえば、あの転校生の子は?」
「えっ?教室の中いない?」
「いないよ?」
朱莉からそう言われ私は辺りを見渡す。
「あれ?」
辺りをいくら見渡しても東さんはいない。
「東さん?」
「・・・」
返事もない。
「図書室にでもいったんじゃない?」
朱莉は立ち上がりながらそう言った。
「そうかな?」
東さんが暇を潰せるように、生徒会室に来る途中に図書室の案内をしていて、朱莉からそう言われて私も立ち上がった。
「あーごめん千沙、今彼から待ってるってメール来たから私行くね!」
「相変わらず・・・分かった!お疲れ様!」
「お疲れ!」
朱莉はそう言って手を振り去っていった。
「さてと、図書室に行ってみるか!」
私は、ぼそりとそう言い生徒会室のドアに鍵を閉め図書室へと向かった。
(ガラッ)
「東さん?」
図書室のドアを開け、私は静かにそう言う。
「・・・」
私の声に返事はなく、図書室はシーンと静まり返っていた。
(ここじゃない?)
私は、少し焦り気味になり、図書委員の子に東さんの特徴を話聞いてみることにした。
図書委員に聞いたところ、そんな生徒は来ていないと首を振られ私は急いで図書室から駆け出した。
(東さん!どこ行った?校舎内で迷子になってるんじゃ・・・)
「こういうことなら先に校内案内しとくんだった!」
私はそう言いながら、校内を走り東さんの姿を探した。
「はぁはぁ・・・どこ行った?」
息を荒げながら私は東さんを探す。
「はっ!もしかして」
私はそう言いある場所へと駆け出した。
「はぁはぁはぁ・・・やっぱり・・・ここにいた」
「関川さん?どうしたの?汗、ビッショリだよ?」
「よかった!」
私は、東さんに近寄り思いっきり抱きしめる。
「えっ?えっ」
東さんは、何が何だかわからないようでアワアワしていた。
「どこ行ってたの?」
私は落ち着きを取り戻し、東さんにそう尋ねる。
「これを買いに・・・」
東さんはそう言うと三本のジュースを私に見せた。
「これは?」
私は、首を傾げながら東さんに聞く。
「二人とも作業が終わったら喉乾くんじゃないかと思って、買いに行ってたの」
東さんは、そう言いながら私を見た。
「ふっ・・・そっか・・・ありがとう。でも、それなら一言声かけてくれれば良かったのに。」
私は、少し笑ってそう言う。
「関川さんも崎川さんも真剣にやっていて、声がかけずらくて・・・ジュース買ってすぐ戻って来たんだけど、生徒会室の鍵しまってて・・・」
東さんは俯きながらそう答えた。
「そっか・・・ごめんね。終わってから、東さんがいないことに朱莉が気づいて図書室に行ってると思って鍵占めてそっちに向かったんだ・・・私たちきれいに行き違いになった見たいだね、でも会えてよかった。」
「はぁ、そうだったんだ・・・よかった」
東さんはそう言いホッと一息ついた。
「もしかして、置いて行かれたと思った?」
私は、ホッとする東さんを見て言う。
「少し・・・」
東さんは苦笑いをしながらそう言った。
「嫌いじゃないのにそんなことしないよ?」
「それもそうだね!」
私たちは二人して顔を見合わせて笑った。
東さんの笑った表情は輝いていて私は愛おしい表情で東さんを見ていた。
「好き・・・」
私は、ぼそりとそう言いハッとなる。
「ん?なんか言った?」
東さんに私の言葉が聞こえていなかったみたいで私はホッ胸を撫でおろした。
「じゃあ、東さん今からでも学校案内していいかな?あと、そのジュースもらっても?」
「あっうん!そういえば、崎川さんは?」
「あー朱莉なら、彼氏が待ってるって言って先に帰ったよ?」
私はジュースを受け取り朱莉を探す東さんにそう言った。
「そうなんだ・・・お礼もかねてのジュースだったんだけど・・・」
「まぁ、お礼は明日でもいいと思うよ?」
私は落ち込む東さんにそう言い飲み終わったジュースの殻をゴミ箱に捨てそう言った。
「そうだね」
東さんもジュースを捨てそう言う。
「あっ・・・でも、このジュースどうしよう・・・」
「あっ・・・」
私たちはジュースを見ながら固まる。
そこに
「職員会議長かったなぁー」
と背伸びをしながら先生が通る。
「あっ!先生、いいところに」
私はすかさず先生を呼び止めた。
「あっ、関川さん、東さん、生徒会の作業は終わったの?」
「はい、作業が終わったので今から東さんに学校案内しようかと思っていたんです。」
「そうなのね」
「ところで先生、喉・・・乾いていませんか?」
私は、先生にそう尋ねる。
「飲んでないからもうカラカラ・・・」
先生は肩を落としながらそう言う。
「じゃあ先生にこれあげます!余ってしまったので・・・」
「えっ?ジュース?わぁーありがとう」
先生はそう言うとジュースを飲みほし殻をゴミ箱に捨てると、生き返ったかのようにニコニコしながら
「川崎さん、東さん、ありがとうね!」
と言い去っていった。
「ほんと、子供みたいな先生だな・・・」
「そうだね・・・」
私たちは先生の背中を見ながらそう言いまた二人でクスリと笑った。