授業中のやり取り
(キーンコーンカーンコーン)
一時限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
私は、心臓の音がうるさくて授業にあまり集中できなかった。
(ガタッ・・・ガタッ)
一時限目が終わるとともに、クラスのほとんどが、東さん目掛けてやって来た。
「東さんってどこから来たの?」
「東さんってハーフか何か?」
「東さん、俺と付き合ってください!」
「いや・・・それ無理があるだろ!」
「ははははは!」
一瞬にして東さんの周りには人が溢れかえり、東さんは質問攻めにあう。
「えっ・・・えっと・・・」
皆の質問攻めに東さんはオドオドとして私を見る。
(あーあー・・・仕方ない・・・)
私はそう思いながら椅子から立ち上がり
「皆―、あんまり質問攻めし過ぎだよ?東さんがびっくりしてどう返していいかわからないみたいだよ?」
と皆に言う。
(やっぱり、一人じゃちょっと説得力にかけるな・・・)
私は、そう思いながら前から後ろを見る朱莉に目をやる。
「そうだよ?質問は一人ずつだよ?」
私の訴えに気が付いた朱莉は頷いてそう皆に言った。
「あっ・・・そうだよね?ごめんね?」
「関川と崎川の言うとおりだな・・・びっくりさせて悪い」
私たちの言葉に皆は東さんに頭を下げた。
そうこうしてる間に、二時限目が始まるチャイムが鳴った。
「あー・・・何も聞けなかったー」
「まぁ、次の休み時間でいいじゃない」
「今度は、一人ずつ質問しないとな!」
皆は、それぞれの席に戻っていく。
「朱莉、ありがとう」
私は、朱莉に手を合わせてお礼を言った。
「いいよ!その代り、ジュース一本ね?」
「ハイハイ」
私は、笑いながら朱莉にそう言った。
私の前の席の朱莉・・・崎川 朱莉は私の幼馴染だ。家も近くで、幼いころから一緒に遊んでいた。朱莉は、正義感強くて、スポーツは得意で、私が困った時は助けてくれる、頼れる親友だ。
朱莉は、私の返事にニコニコしながら前を向き座り、二時限目が始まる。
(トントン)
授業中肩を叩かれた私は横を向く。
《さっきは、ありがとう》
東さんはノートの端に可愛い字でそう書いて私に見せた。
《どういたしまして!後で、朱莉にもお礼言ってね?》
私は、自分のノートにそう書いて東さんに見せた。
《もちろん!》
東さんはそう書いて又も私に見せる。
《教科書見えにくくない?》
私は、またもノートにそう書く。
《いや、大丈夫!》
東さんがそう書いて見せた時、私たちの目があい、お互いニコリと笑った。
気が付くと一時限目では、あんなに緊張していたはずなのに、今では不思議とそれがなくなっている事に気が付く。
(恋したって思ったけど、勘違いだったかな?)
一瞬そう思ったが、でも、やっぱり東さんを見てしまうのは恋している証拠だと、私は思いながら授業に耳を傾けた。