恋って?
恋って何だろう・・・好きって何だろう・・・気になるって何だろう。
「私さ、実は杉下君が好きなんだよね」
「えーそうなの?私は影山君が気になってる・・・」
「何々?なんの話してんの?」
「乙女の話!」
女の子は、恋バナが好きだ。特に女子高生はそんな話ばかりしている。
私は、今まで生きてきて恋をしたことがない・・・。
だから、私はその手の話が苦手である。
高校二年春、皆新しいクラスにも慣れての放課後、クラスの女子の話に耳を傾けて、私は頬笑みを浮かべる。
「千沙は?好きな人とかいないの?」
不意にクラスメイトの朱莉から、そう話を振られる。
「んー・・・」
私は考える振りをする。
「千沙は勉強優秀、スポーツ万能、それに一年で生徒会長になって、引き続き生徒会長頼まれて、ルックスもいい。告白も何回も受けてるでしょ?それなのに千沙、全部断るって、ありえないよ?」
「確かに、気持ちは嬉しいけど、私は好きじゃない相手と付き合うって相手にも悪い気がして嫌なんだ。」
私は、朱莉に苦笑しながらそう返した。
「うーん・・・確かにそれもそうだけど・・・」
「朱莉―、帰ろうぜ!」
「あっ、陽くん。」
「相変わらずラブラブで幸せ者だね?」
「もう・・・からかわないでよ」
私が、ニヤニヤしながらそう言い話を逸らす。
私のからかいに朱莉は顔を真っ赤にさせながら、私の背中を軽くたたいた。
「じゃあ、また明日ね!皆もまたね」
「あっ、朱莉、旦那が迎えに来たんだねー」
「相変わらず仲がいいよねーこのオシドリ夫婦」
話に夢中になっていた女子たちもそう言いながら朱莉をからかう。
「もう!皆からかい過ぎだよ!」
朱莉は笑いながらそう言うと
「バイバイ」
と皆に手を振り、彼氏のもとに駆け寄る。その横顔はとても幸せそうで、宝石のように輝いていた。
「じゃあ、私もそろそろバイトがあるから帰るね!」
「うん!バイバーイ」
朱莉が帰って数分後、皆に手を振りながら私も教室を後にした。
「恋かー・・・人を好きになったことがないから、わかんないんだよね」
私は、ぶつくさ言いながらバイトに向かう。
(ザー!)
学校を出て川の横の桜道を歩いている途中、どこからともなく強い風が吹き私は目を瞑る。
風が吹き去り、私は瞑っていた目を開けた。
目を開けた私は、目の前の幻想的な光景に目を奪われ声も出なかった。
私が目にしたのは、桜の花びらが風に乗って舞い上がる中、川の向こう岸に、ロングヘアで私と同じくらいの女の子が髪をかき分けながら佇む光景だった。
小柄な体系に、透き通るようにな肌、長い髪はユラユラと風に揺れ、例えるならそう・・・春に訪れた可愛い妖精みたいだった。
私が、その子に見とれていると、バッとその子と目が合う。
(ドクン!)
目が合った瞬間、今までに感じたことのなかった感情が込み上げてきた。
(バッ)
私は、急いで顔を下げる。
(なっ・・・何これ・・・)
私は、自分の心臓の脈打つ速さに少しパニックになりながら、胸を掴む。
(一旦、深呼吸)
私は、そう自分に言い聞かせながら深呼吸をする。
そして、もう一度顔を上げた。
「あっ・・・あれ?」
私が、顔を上げた時、さっきまでいた女の子の姿はなかった。
私は、キョロキョロと辺りを見るが、その子は見当たらない。
首を傾げながら私は幻覚だったのかと考えるが、幻覚にしてはリアルすぎると頭を振るじゃあ、幽霊?いやいや、生きていて此の方、幽霊なんて見たことないし、私には霊感なんてこれっぽっちもないとまた頭を横に振る、うーん・・・。
「妖精?いやいや・・・そんなはずは・・・あっ!バイトバイト。」
私は気になりつつ、その場を後にバイトへと急いだ。