嵐の終わり
豪雨と雷鳴が交錯し、周囲は闇に包まれる。
一瞬経つと、またもや稲光が空を焼き尽くす。
空は果てしなく広く、嵐はこれでもかと言うほど厳しい。
しかし誰でも、悪天候には終わりがあるということを知っている。
そう、誰でも……
若い頃は寄る辺がなく、地道に稼いで生きてきた。
親族の血縁は、土地に縛られていない人間には無意味だ。
当てもなく放浪し、誰かに迷惑を掛けたり、また掛けられたりする。
迷惑、という言葉が合っている間だけだったが……
世の中には、私のように苦戦して生きている輩がたくさんいるだろう。
彼らには「迷惑」なんて言葉を使う事ができない。
それ以前の生に関わる問題が山積みであったから、
口を閉ざして、ただただ強者の言うことを聞くだけであった。
私は彼らの、そして自分の、そのような姿勢を見つめ続けていた。
そして今でも、その耐え忍ぶ姿が目に焼きついて離れないのだ。
まるで自分と彼らが同一であるかのごとく。
ふいに雷が空に光り、闇に慣れ親しんだ目が眩んだ。
この嵐も、いずれ終わるだろう。
歴史は繰り返すかもしれない、しかしいつか必ず晴れるのだ。
私は人知れず亡くなった、記録には決して残らない人々に手を合わせた。