2:1 晴れた日の太陽は神々しいほどに眩い
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雲一つ無い青い空!
眩しく輝く太陽!!
今日はなんと素晴らしい日だろう!
まさに――
まさに絶好の洗濯日和である!!!!
私は洗濯物を求め、ガープの部屋に駆け込んだ。
「ガープ! 洗濯物は? 洗濯物はありませんか?」
「今日は無いな」
非常にがっかりだ。
こんな天気の良い日に洗濯をしないなんて勿体無い。
「ホントーッに無いんですか?」
「だって、昨日全部洗濯しただろ? 俺の着ていた服まで剥ぎ取って」
然り。確かに昨日も洗濯した。しましたよ。快晴だったから。
何もかも洗濯したから、昨日ガープは着るものが無く、服が乾くまでの間、丸裸で過ごしていた。
だけど、この家は人里から遠く離れているし、レムも私も男だし、裸だどうだなんて気にする事もない。さしあたって、ガープが風邪を引くか引かないか、ぐらいだ。
私は窓の向こうの蒼穹に目を遣り、溜息をついた。
空はあんなにも青く澄み渡っているというのに、洗濯するものがないだなんて嘆かわしい!
ああそうだ、とガープが閃いた様に手を叩いた。
「レムなら洗濯物あるんじゃないか?」
「レム……。です…か」
その名前を聞いただけでも寿命が縮む。
奴隷生活一ヶ月。
掃除、洗濯、炊事等にはもう慣れた。
しかし、レムだけは……未だもって慣れない。慣れる気がしない。絶対無理だ。
私に向けられるレムのあの殺意が無くならない限りは。
この間なんか、目が合っただけで目玉をえぐられそうになったし、レムは正真正銘、人間が嫌いでたまらないのだ。
一つ屋根の下でありながら、私はできるだけレムに遭遇しないように避けてきた。
洗濯物を求めてレムの前に出向き、討ち殺されてはかなわない。
ガープの折角の提案だけど、却下させていただくしかない!
「洗濯物はあきらめます」
「まさか――、まだレムが怖いのか?」
そのとうり!
「あいつはすごく優しい奴だぞ」
異議あり!!
「優しい? 私は何度もその『優しい』レムに殺されかけたのですが!?」
「殺されかけただけだろ? 実際に殺されたわけじゃないんだから気にするなよ。は、は、は」
気にするよ!
殺されかけたって大問題だよッ!
実際殺されてから気にしたんじゃ、もう手遅れなんだからっ!!!
「ガープにとっては他人事だからそんな呑気な事いえるんですよ! あなたが私の立場だったらどうしますか?」
「簡単だ。決闘で決着つける!」
ハッキリキッパリ胸張って答えられても、賛同しがたい。
ガープと私とでは考え方がまるっきり違うという事を改めて認識した。
「私は戦いたくありません」
「どうして?」
「傷ついたり、傷つけたりするのは悲しい事です」
「なるほど。じゃあ、クリス、おまえは戦わずしてどう決着つけるんだ?」
戦わず、傷つけ合わずに済む方法――。
「回避…とか…」
私は小声でつぶやいた。
それに対し、間髪入れずに突っ込まれる。
「避けたら決着つくのか?」
ガープが眉を寄せて訝しんだ。
回避は一時しのぎにしかならない。
私はしぶしぶ、もう一つの方法を口に出した。
「わ、和睦を……」
「和睦か。それがベストと思っているなら勿体ぶらずにドーンと試せばいいだろ」
「えっ…、でも…!」
「レムに洗濯物ないか尋ねるついでに試してこいよ」
「やっ、そっ…!」
「俺も一緒にいってやるからさ!」
ガープに首根っこをつかまれて、私はレムの部屋へと強制連行されてしまった。
神よ、どうか御加護を…………。アーメン!