父と息子
今回は、ファラライズとヴォルティアの話です。過去の物語。
ヴォルティアは幼かった。まだ大した年齢ではなかった。きっと、神の年齢でいう230~250歳ぐらいだった。しかしヴォルティアは、幼いころから神としての実力を現しはじめた。彼の雷は、ファラライズに追いつこうとしていた。
ファラライズはあの頃、まだヴォルティアをかわいがっていた。だから、2人はよく、ヴォルティアの兄であったグロウシャスと一緒に、遊びに出掛けた。
彼らが一番のお気に入りだったのは、ゲームだった。物体を雷で撃ちぬくゲームだった。でももちろん、グロウシャスはヴォルティアより500年は長く生きていたし、ファラライズももう1000年は生きていたから(これでも若い方)、ヴォルティアが勝つはずはなかった。
彼らは食事をとったあと、家路についた。グロウシャスは、帰ろうと思ったらしく、空を飛び始めた。飛ぶ原理がなんなのか、ファラライズは教えてくれた。
「電気が起こると、磁力が発生する。それを使い、このガドウォルドの磁気に乗って飛ぶんだ」
ヴォルティアは意味が分からなかったけれど、何故か納得した。父だったからだろう。
彼は感心して、グロウシャスを見ていた。彼の青い稲妻が、プラズマを形成しながら光っていた。
その時だった。
何か黒い影が飛んできたかと思うと、それはグロウシャスに命中した。グロウシャスはそのまま落下した。黒い影から次第に煙が立ち込めはじめた。
煙じゃない。
ただの靄だ。
氷だった。
グロウシャスはそれとなぐり合っていた。氷の神だ。チリアス。聞いたことはある。チリアスはグロウシャスを捕まえて離さない。ヴォルティアは何もできなかった。
ファラライズは隣にいなかった。いつの間にかグロウシャスのもとにいた。もちろん、そのあとに暴風が吹き荒れた。ファラライズはチリアスを雷で吹き飛ばした。グロウシャスはヴォルティアのほうに逃げてくる。グロウシャスはヴォルティアの隣に来た。こんな時でも、グロウシャスはヴォルティアを気遣ってくれた。
「けがはないか?」
「ああ、大丈夫」
ファラライズはチリアスと格闘していた。稲妻はチリアスを撃つが、チリアスの手からは冷気が漂う。いつの間にかファラライズの足元は、氷でロックされていた。
温和なファラライズが、こんなに戦うなんて――。ヴォルティアは感心していた。助けようがなかった。何しろ彼には、まだ何もできなかった。放電ぐらいしか。
グロウシャスが、見てられないとばかりに飛び出し、チリアスを横から吹っ飛ばした。チリアスはグロウシャスの電気をぶち込まれる前に、氷の壁を形成した。氷に電気が走り、粉砕される。
意外にも大きな爆発だった。破片がヴォルティアの目の前に刺さった。
そこにもう1つの影が忍び寄った――。
ファラライズが叫ぶ。
「リバーシオか!」
彼は心から残念そうな声をしていた。グロウシャスは、
「リバーシオって?」
と訊く。チリアスは2人の電気を同時に食らって倒れた。
ファラライズがリバーシオのことを説明する間もなく、リバーシオから放たれた黒い煙が、ファラライズとグロウシャスを捉えた。
「あああああ!!!!!」
グロウシャスは悲痛な叫び声をあげる。
ファラライズは至って冷静だった。しかしその煙は、内側から迸る光で破られた。ファラライズだ。ファラライズはそのままリバーシオを吹き飛ばして、グロウシャスとヴォルティアをつれ、帰った。
ファラライズはその後、話してくれた。
「リバーシオは、最後まで相手をつかんでいれば、悪を正義に、正義を悪にできる。中途半端に終わったから、俺たちは性格が逆転するやもしれん」
それはヴォルティアにとっては、あまりに残酷なことだった。
あいまいなエンディングになってしまいました。
でも、なぜファラライズ、グロウシャスがあんな性格なのか、解き明かされたと思います。