氷の雷神
タイトルは意味不明ですが。
あるところに、”氷の雷神”と呼ばれる神がいた。
雷の戦士であり、ファラライズやヴォルティアの家族だった。つまり、ヴォルティアの兄だった。
彼の名は、グロウシャス、といった。
彼は、体は熱い。なぜなら、雷の神だからだ。しかし、性格は冷たい。だから、”氷の雷神”と呼ばれるのだ。
彼は、ガドウォルドでも最強のランクに入っていた。
だからこそみんなに尊敬されていたが、めったに人前に姿を現さない。
冷静かつ俊敏で、天才的センスを持つヴォルティア、好戦的で喧嘩っ早く、恐ろしく攻撃的なファラライズとは対照的、冷静ではあるものの、そこまで俊敏というわけでもなく、喧嘩っ早くもなく、攻撃的でもない、単純に冷たいだけの神だった(印象は)。しかし、まったく動かずに、走ってくる敵を一掃するほどの実力者であった。
だから彼は、ファラライズやヴォルティアとは仲は良くなかった。
グロウシャスは、ガドウォルドの路地を歩いていた。昼は煌びやかで、皆が騒ぐこの地でも、夜では誰も出歩かず、いるのは数人の神だけ。しかもその数人は、めったに顔を現さないようなやつだけ。
グロウシャスは、神々のエネルギー源である”樹”へと向かった。彼はそこで、神の誓いの言葉を述べた。
「世界が暗闇に包まれようと、世界が炎に包まれようと、いかなる悪をも見逃しません。我々は、いつでも正義とともにあります」
すると彼がケンカで負った傷が、みるみる内に治っていった。
ある日、レジアスとファラライズがケンカをし始めた。
「大体、お前はいつもそうなのだ! 好戦的で喧嘩っ早い。それに酒好き女好き! この変態雷神めが!」
レジアスは叫んだ。ファラライズは言い返す。
「そういうお前は何にも興味を持たない! 面白くないやつだ!」
レジアスは怒っていた。大広間の空気が張りつめている。レジアスのせいで、暖炉の火がライオン、どっかの怪物など、いろいろな形に変わった。シャンデリアが割れた。悲鳴が上がった。
「レジアス、怒ってんのか? ならやめてもらおう。俺も無駄なことにエネルギーは使いたくない」
「ファラライズ、戦うんだ。俺は怒っている。俺を止めるんだ」
「嫌だね、面倒だ。大体、息子二人に実力を抜かされたこの老いぼれの私めが、格闘、狩猟という、過激なスポーツの神に好戦的と言われる意味も分からないからな」
「ファラライズ、なら私が一方的にやろう」
レジアスが振り向いた。エネルギー波が、広間を襲う。テーブルの食べ物が、ぐちゃぐちゃにひっくり返った。
「レジアス、もう我慢ならんよ。クソ野郎が!」
ファラライズの指から、多分一発で2000世帯の家が10年は賄えるほどの電力を持った雷が飛び出す。
レジアスは、それを食らって数メートル吹き飛んだ。
「ファラライズ……、それで……いい……」
ファラライズは、にやりと笑う。
と、そこにヴォルティアが帰ってきた。また、偶然本を読みながら屋敷を歩き回っていたグロウシャスがやってきた。
ヴォルティアは叫ぶ。なんと、父親の指から煙が立ち上り、自分の尊敬する神が一人、壁に突っ込んでいたからだ。
「父上! 主神たるレジアス様に何を!」
ヴォルティアは、怒ってファラライズの雷の数倍は強いものを撃った。それはファラライズに直撃したが、ファラライズには全く効いていない。
そこで、冷たい空気が全員の首を冷やした。
グロウシャスが、口を開いたのである。
「ヴォルティア、やめろ……。父上は、やはりおじとケンカしたいのだ」
「しかし、兄上……」
「くどいぞ。黙れ」
ファラライズが、叫ぶ。
「グロウシャス、その態度はなんだ! 仮にも相手は神だ!」
「私も神だぞ。忘れたのか?」
「親であり主神の兄弟である私に、なんという口のきき方をするのだ!」
「黙れ。俺にすら勝てないくせに」
「なにをォ?」
ファラライズは、雷を撃った。グロウシャスはそんなものは受け流し、まったく動かずにファラライズを屋敷から外へ出した(つまり、ぶっ飛ばした)。
彼は、にやりと笑った。
彼の背後では、ヴォルティアが怒りの形相で立っている。
そしてグロウシャスは、雷の大轟音と、閃光に紛れて消えた。
グロウシャスは、その後消息を絶った。
彼は、噂によれば、ストラウォルドで敗北したとのこと。
そして彼の墓が、ストラウォルドにひっそり立っているらしい。
しかし、新しい情報によれば(さっきのも信頼性はない)、ガドウォルドの屋敷のそばで民間神が目撃したらしい。
少なくとも彼は、王室からは消えた。
ものすごく曖昧な終わり方です。