「drugstore」
姉と妹の他愛も無い世間話が続きゆっくりとした時間が流れていく・・
「うん この間さ あんまり暇だったんで舞の働いてる
ドラッグストアに行ったんだよ それも普通にじゃなくて
帽子を深く被ってサングラスをかけてさ」
その話しを聞いてさっきまで不貞腐れていた依里加は
興味が沸いたのか
「なんでまたそんな事したの?お姉ちゃん普通に行けばいいじゃん
それで舞お姉ちゃんはどうしたの?」
さっきまで怒っていた事を忘れ普通に美優夢に聞いた
このように与えられた才能と言うべきなのか
美優夢はいくらふざけて相手を怒らせても話し方一つで
相手を自分のペースに引き込み
まるで何事も無かったかのようにしてしまう
そんな魅力がある
「あぁ それでね舞の所に近付いていってからさ声を変えてね
すいません薬剤師さん 胸の動悸が止まらないんです
何か良い薬はないですか?って聞いたんだよ」
依里加はその話しが気になって仕方がないらしく
カウンターに身を乗り出し
「うんうん そしたら舞お姉ちゃんは何ていったの?」
もう依里加の中で先程までの怒りは完全に消えていた
こうなると もういつもの美優夢のペースである
「そしたら舞はね薬を持ってきて真剣な顔で動悸ですとこちらがよろしいかと
思いますがって言ってね 動悸も様々な症状がありますので
どういった場合に動悸が起きますかって聞いてきたんだよ」
カラン カラン・・・・
依里加と達矢は美優夢の話しに夢中になっているのか
一人男性客が入って来たのに気付かずにいた
その男性客は静かに奥にある窓際の席へと腰を下ろした
「当たり前だよ舞お姉ちゃん薬剤師なんだから
それでそれで?お姉ちゃんは何て答えたの?」
そう依里加に聞かれた美優夢は真剣な顔でこう答えた
「うん そこでお姉ちゃんはね 私あの人の事を想うと
動悸が止まんないんですって言ったんだよ」
すると真剣な表情でバカな事を言ったのが面白かったのか
「ばかだねぇ お姉ちゃんそれでも舞お姉ちゃんは美優夢お姉ちゃん
だって事に気が付かなかったの?」
依里加は笑って美優夢に聞き返す
その横では達矢も必死で笑いを堪えているのか肩が揺れていた
「うん お姉ちゃんがそうやって言ったらサ 舞は一瞬ハイ?って顔したけど
あの子って昔から天然じゃんそれでも気がつかなくてもっと他に症状は
ないですか?詳しくお聞かせ下さいとか言ってきたんだよ」
それを聞いて笑うのを必死で堪えていた達矢もついに吹き出し
笑い始めた
「舞お姉ちゃんらしいねぇ」
依里加も笑いながらそう言った
「それでさぁ あんまりにも気付かないんでちょっと可愛そうになってさ
お姉ちゃんそこでサングラスを外したんだよ そしたらね舞ったら
鳩が豆鉄砲くらったような顔して・・・・あっ お姉ちゃん・・・・・って
言って持っていた薬をポトッて落したんだよ なんかのコントみたいに」
美優夢も笑いながら言う
「アハハ もう笑いすぎてお腹いたいよ それでどうなったの?」
依里加はもう笑いが止まらず涙まで出てきている
「それでお姉ちゃん懲りずに 薬剤師さんすいません金欠と恋に効く薬も
探しているんですけどって言ったら 舞がね怒ってからさ
馬鹿につける薬はありません!!だって超ウケルでしょ?
アハハ ゴホッゴホッ」
テーブルを叩きながら大笑いをし少し咽る美優夢
「アハハ もうやめてお姉ちゃんお腹痛いよ 本当にバカだねぇ
なんで妹に会いにいくのにそんなことするんだよ
絶対そんなことお姉ちゃんしかやんないよ」
そう言って笑いが止まらない依里加の横で必死に笑声を押し殺していた
達矢も
「本当にお姉さんは面白いなぁ ある意味才能ですよそれ ハハハ」
そう言って声を出して笑い始めた
午後のランチタイムが過ぎた静かな店内に3人の笑い声が響き渡っていた
次回第4話「water」ですwお楽しみに♪