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「espresso」

時は遡ること10年前 カフェドエル 全ての話しは此処から始まった

                <・・・10年前・・・>


カラン カラン


「いらっしゃいませ」


「あっお姉さんいらっしゃい」


店主の若いマスターがそう言うと


「いやいや たっちゃんいつまでも暑いねもう秋だって言うのに


 これは温暖化とかいうやつの影響だね絶対こっちは心も財布も氷河期だって

  

  いうのにさぁ あついのは心の中と財布くらいでいいんだよね」


このあっけらかんとした調子の良い女性の名前は美優夢


妹夫妻の経営する


この喫茶店 カフェ・ド・エルに昼休みの合間を見ては毎日のようにやってくる


「あれ?お姉ちゃんまたきたの?」


呆れた顔をして妹の依里加が厨房から顔を出す


美優夢は笑いながら


「なんだよ 依里加 お姉ちゃんが来てうれしいくせに


 それにねここのエスプレッソ最高なんだよ他のお店なんかいけないよ」


そう言って笑いながら席に着くと


夫の達矢が洗った食器を布巾で拭きながら嬉しそうな顔をして


「嬉しい事いってくれますね お姉さん 依里加もそんなに怒らなくて


  いいじゃないか 折角お姉さんがこうやって毎日来てくれてるんだ


                        姉妹が仲の良い証拠だよ」


そう言って依里加を宥める


依里加はどうしても納得できない様子で


「もう たっちゃんはお姉ちゃんに甘いんだから


  うちはボランティアとかじゃなくて商売なんだよ


   いくら姉妹だからっていってもお金をもらわなくちゃ


                 今日はちゃんと払ってよねお姉ちゃん」


依里加は手を腰にあてキッとした表情で睨んでそう言うと


美優夢は


「あら 依里加 さっきの話し聞いてなかったの?お姉ちゃんさ


  心も財布も氷河期なんだよ 困った姉を助けると思ってさ

    

      ツケにしといてよ 出世したら出世払いで払うからさ」


それを隣で聞いていた達矢は苦笑いを浮かべ


依里加は本当に呆れた顔をして


「もう しょうがないんだから 出世なんてしないでしょお姉ちゃん


  いつまでもそんなバカな事ばっかり言ってないで早くいい人見つけなさいよ


   もういい歳なんだから しっかりしてよね」


そうやって皮肉っぽく言うと


美優夢は別に気にした様子もなく


「ハイハイ 依里加さんのおっしゃる通り私は負け組女ですよ


  それよりさ依里加そんなに怒ってばっかりいると顔にシワが増えて


                        達矢君に逃げられちゃうぞ」


おどけてそう言い返した


「もう お姉ちゃんたら知らない!!!!」


そう言って依里加は怒ってドシドシと足音を立てて厨房の奥へと歩いていった


その姿を見て困惑した表情の達矢に


「やだねぇあの子は昔からああやって怒りっぽい所があるからね


                たっちゃんも大変でしょ?」


そうやって美優夢が言うと


達矢は笑いながら


「あれはあれで依里加の可愛い所なんですよ


               お姉さんに言った言葉も本心ではないでしょうし」


そう答える


「ハイハイ相変わらずお熱い事でごちそうさま


 まぁ私も依里加のあんな所が可愛いんだけどね

  

  だからさっきのようにわざと意地悪したくなっちゃうんだよね」


美優夢も笑いながらそう答えると


厨房の中へと入っていった依里加を呼んだ


「依里加  依里加 お姉ちゃんが悪かったからさ もう怒らないで


  機嫌直して出ておいでよ 今日はちゃんとお金も払うからさ


   それよりこの間 舞の所に遊びにいったんだけどそれで面白い話しが


                           あるんだよこっちにおいで」


すると依里加は不貞腐れた表情で渋々厨房の中から顔を出し


「本当? 本当に払ってよね・・・それで面白い話って何?」


そう言いながら美優夢が座るカウンター席の前の達矢の横に立った


それを見て美優夢は待ってましたとばかりに話をはじめる




                     (続く)



           次回第3話「drugstore」ですwお楽しみに♪



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