その日、世界に悪霊が量産された
私は全国の心霊スポットを巡っている。
今回の心スポは、住宅街から少し離れた場所にある少し大きめの公園だ。
ネットの有識者曰く、誰も乗っていないのに動くブランコ、お手洗いの鏡にだけ映る女の霊、
滑り台の上に頭のない人間が立っている。などなど、色々な噂があるそうだ。
私が心霊スポットを訪れるようになった理由はただ1つ。
インターネット上で行われている、霊は実際にいるのか、いないのか、そんな水掛け論の答えを確かめたいからだ。
私はホラーというジャンルにハマってから、霊がいると信じて疑わなかった。
しかし、そんな中私にとって、ノイズとなるものが生まれてしまった。
『これ、絶対ヤラセだろ。信じてるやついるの(笑)』
この一言を目にしたせいで、霊の存在が半信半疑になってしまったのだ。
そんなこんなで、考えても答えが出ないならば、実際に霊が視えたら確信に変わるよね!ということで、こうやって全国の心霊スポットを回っている。
私は早速、深夜の公園内に入っていく。
「もう少し服着てくれば良かったなぁ」
季節は、冬が始まりそうな時期で少し寒い。
それに加え、深夜で風が吹いていることも関係しているのだろう。
そんな寒さに身を震わせながら、私は噂にあるブランコ、お手洗いの鏡、滑り台などなど、を確認していった。結論としては何も視えなかった。
「まぁ、そんなもんよね」
何も出なかったことに少し落胆しつつも、いつものことではあるので、すぐに気持ちを切り替え、公園の出口へと歩き始める。
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あれ......?
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と、遠くない......?
公園の出口は見えているのに、一向に辿り着く気配がない。
「も、もしかしてやばい......?」
今まで経験したことのない現象が起き、頭では冷静にならないとと思っているのにも関わらず、心臓の鼓動が勝手に速くなっていく。
私は歩きを辞め、走り始める。
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・・・・・・・。
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・・・・・・・。
どのくらい走ったのだろうか、走っても、走っても、出口までいけない。
走っているのにも関わらず、体温が下がっていくのを感じる。
いくら走っても出口に辿り着かず、遂には体力が底を尽き足が止まってしまう。
あまりのしんどさに手を膝に付け、息を整える。
「それにしても寒すぎる。いくら風が......」
そこでやっと気づいた。
公園に入った時に感じた風が、全くといっていいほど吹いていないのだ。
それどころか、やけに静かすぎる。
いくら住宅街から離れているとはいえ、この静かさはありえない。
虫の鳴き声一つすら聞こえないのは流石に可笑しい。
嫌な事実に気づいてしまい、鼓動が更に速くなっていく。
怖さを紛らわす為に、スマホを取り出そうと上半身を起こしながら、ポケットに手を突っこんだ。
視線は自ずと地面から前方へ切り替わる。
いた。
全身が真っ黒で、顔だけが青白い、私より少し背の高い人状の何かが。
あまりの驚きで腰を抜かし、その場で尻もちをついてしまう。
目の前の人状の何かは、そんな私を見て、口に当たる部分をニヤッとさせた。
その瞬間、体に激痛が走った。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
今にも気絶しそうなくらいの痛みだ。
私はその場で転げまわってしまう。
痛みの中、目を開けると、人状の何かには足がないことに気づいた。つまり浮いているのだ。
やっぱり霊はいたんだ。私は正しかった。
なんて、思えるほどの胆力は当然なく、私は痛みで発狂する。
激痛が走ってから何分、何十分、何時間が過ぎたのだろうか、発狂しながら、あることを考えていた。
どうして、私だけがこんな辛い思いをしないといけないのか?
こんな状況にしたのは誰だ?誰が悪い?
……そうだよ、霊がいないって言った奴らだ。あいつらが全て悪い。
あいつらのせいだ。
あいつらのせいで、真相を知りたくなって心霊スポット巡りなどという危険な行為を始めてしまった。
その結果がこのざまだ。
最初から霊がいると断言していれば、私が真相を知るために心スポに近づくこともなかっただろう。
そうだよ、あいつらが悪い!!
誰が何と言おうとも。
他者から見たら、それは他責と言われるような言い分であろう。
しかし、痛みを感じる度、その思考は確固たるものになっていった。
幾度とも繰り返される激痛の中で、彼女はこのまま死ぬことを悟った。
......ああ、そうだ。そうじゃん。
実際に霊がいて、呪力的な何かで私を攻撃していると仮定したら、この恨みも、あいつらに届く可能性がある!!いや、届く。絶対に届く。届かせろ。道ずれだ。私をこんな目にしたんだ。道ずれにしてもいい。
そこから死ぬまでの間、ひと時も休むことなく呪詛を巻き散らした。
彼女は知る由もないが、その人状の何かは異界から偶然出てきた、悪魔の出来損ない。
厳密にいうと、本来の悪魔の数万分の一すら、その定義が埋まっておらず、あるとしたら多少の悪のみで、出来損ない未満かもしれない。
だからこそ、この世界に入り込めれたのだが、そこは置いておくとして。
要するに、霊でもなんでもないものであった。
しかし、そんな出来損ないは、彼女の呪詛を浴びたことによって、悪霊へと変貌してしまった。
元々、この世界に霊はいる。
勿論、そこら辺に大量にいるわけではなく、心霊スポットと呼ばれる場所であっても、いる方が稀であった。しかも、その全ては力の持たない霊であり、噂もほとんどが気のせいかデマであった。
しかし、そんな平和な世は過ぎ去っていった。
この悪霊を皮切りに、連鎖反応的に多くの悪霊が生まれ、各地で霊現象の報告が上がり始めた。
それに対抗すべく、新たな組織が生まれ、青春物語や血なまぐさい物語などを経て、無事騒動は収束を向かえるのだが、それはまた別の話。




