辺境の飢饉と、神速の「再生」
「アキト、あなたに同行をお願いしたい依頼があるの」
統括ギルドの食堂。ミラはいつもの硬い表情を少しだけ和らげ、アキトに向き合っていた。彼女の装備は、いつもの査察官の正装ではなく、動きやすい開拓用の上質な革鎧に変わっている。
「辺境の『アルタ村』……。相次ぐ魔物の襲撃と異常気象で、今年の収穫が完全に絶たれたわ。私が現地へ行って【建築】で家を直し、【農業】で土を蘇らせるつもりだけど……。村人が明日の朝を越せるだけの『即効性の食糧』が足りないの」
「なるほどな。土を耕しても、芽が出る前にみんな死んじまったら意味がないってわけか」
アキトはエプロンを脱ぎ、予備の包丁セットを腰に差した。
「いいぜ。料理人なら、飢えた奴を見過ごすわけにはいかないからな」
数日後。辿り着いたアルタ村は、惨状を極めていた。
土は枯れ果て、村人たちは虚ろな目で地面に座り込んでいる。だが、ミラが村に入った瞬間、彼女の多才なスキルが火を吹いた。
「【林業・一斉伐採】【建築・簡易住宅構築】!」
ミラが手をかざすと、周囲の枯れ木が一瞬で整理され、清潔な避難所が組み上がっていく。さらに【農業・土壌改良】を並行して発動し、死んでいた土地に再び生命の鼓動を戻していく。その光景はまさに「一人称の復興軍」だ。
「……ミラ様、素晴らしい。でも……もう動く気力も……」
村長が弱々しく呟く。ミラのスキルは素晴らしいが、空腹までは満たせない。
「ここからは俺の番だ」
アキトが前に出る。彼が用意したのは、統括ギルドから持ってきたわずかな備蓄米と、道中で狩った低ランクの魔獣の骨、そしてミラが【農業】スキルで無理やり成長させたばかりの野草だ。
「クズ米に、ただの野草……? そんなもので何が……」
村人たちが疑う中で、アキトの手が「消えた」。
一瞬で野草のアクが抜かれ、魔獣の骨からは数日煮込んだような濃厚なスープが抽出される。
【超バフ飯:万能再生の七草リゾット】
村中に、奇跡のような香りが広がった。
一口食べた村人たちの顔に、劇的に赤みが戻る。
アキトの神速調理は、ミラが土壌改良したばかりの「大地の生命力」が詰まった野草の力を、1%も逃さず料理に封じ込めていた。
「……力が、湧いてくる……! それに、病気だった子供の熱が下がったぞ!?」
付与されたバフは【生命力継続回復】および【全病理・汚染耐性】。
ミラの【農業】で蘇った大地と、アキトの料理。二人のスキルが噛み合った瞬間、飢饉の村は「最強の要塞都市」へと変貌し始めた。
一方。
『鳳凰の絆』の遠征隊は、同じく食料不足に陥っていたが、彼らには助けてくれる「料理人」も「再建者」もいない。
「おい、なんで俺たちが、こんな不味くて泥みたいな保存食を奪い合わなきゃならねえんだよ!」
ガストンが吠える。アキトがいれば、そこにある草ころですら王宮料理に変えていたはずなのに。
アキトの超バフ飯レシピ解説:万能再生のリゾット
現実の「七草粥」や「リゾット・アッラ・ピラータ」をベースに、極限まで消化吸収率を高めたレシピ。
■ 材料(村人全員分を想定)
米:端材のクズ米(アキトのスキルで砕け米を選別し、食感を統一)
野草:セリ、ナズナ、ハコベ等(ミラが急成長させた高魔力野菜)
スープ:魔獣の骨(アキトが超振動で骨髄の旨味を秒速抽出)
塩、岩塩:少々
■ 料理のポイント
「神速アルデンテ」の管理:
通常、弱った胃には粥が良いが、アキトは米の表面だけを神速で糊化させ、芯にわずかなエネルギー(魔力)を残す。これにより、食べた瞬間に糖分が吸収されつつ、持続的に力が湧くように調整。
野草のクロロフィル固定:
野草を投入する瞬間、0.1秒だけ超高温の蒸気にさらす。これにより、ビタミンを壊さず、色は鮮やかな緑のまま、薬効だけを活性化させる。
骨髄エキス(ボーンブロス):
現実でも注目される「ボーンブロス」。アキトは通常12時間かかる抽出を、超スピードの攪拌と圧力調整により10分で完了。アミノ酸とコラーゲンが、飢えた村人の粘膜を修復する。




