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魔法王国の黄昏:灰色の聖樹と、絶望の女王

カエルム魔法王国の王都。かつては七色の魔力が満ち溢れていたというその街は、今やどんよりとした灰色の空気に包まれていた。中心にそびえ立つ国の象徴「聖樹カエルム」は、葉を落とし、まるで巨大な骸骨のように無残な姿を晒している。


「……ひどいものね。魔力の循環が完全に止まっているわ」


ミラが眉をひそめて呟く。彼女の【鑑定】スキルで見れば、街全体の魔力濃度が危険水域まで下がっているのが一目瞭然だった。


カエルム王宮の謁見の間。

そこにいたのは、病床に伏せているかのように青白い顔をした女王メリサンドだった。聖樹と命を共有する彼女の衰弱は、そのまま国の終わりを意味していた。


「ドリア皇国よりの特使……。よくぞ参られた。だが、見ての通り、我が国の魔導師たちが総出で魔力を注いでも、聖樹は応えてくれぬ。もはや、滅びを待つのみかと……」


女王の傍らには、カエルムの宮廷魔導師や宮廷料理人たちが並んでいる。彼らは皆、疲弊し、どこか投げやりな空気を漂わせていた。


「陛下、ご安心を。こちらのアキトが、聖樹を……いえ、まずは陛下を救います」


ミラの言葉に、カエルムの宮廷料理長が鼻で笑った。

「馬鹿げたことを。ドリア皇国の『料理人』ごときが何をする? 我ら魔法王国が誇る最高級の魔力回復薬ポーションを混ぜた粥ですら、女王様は受け付けぬのだぞ。ただの飯で何が変わるというのだ」


アキトは、そんな雑音を無視して厨房へと向かった。

「ミラ、聖樹の根元に少しだけ【農業】スキルで刺激を入れといてくれ。俺は陛下に『心臓の鼓動』を思い出させてくる」


アキトが厨房で手に取ったのは、カエルム特産の「魔力を含みすぎて発酵してしまった古い果実」と、少しの香辛料。誰もが「ゴミ」として捨てようとしていた代物だ。


【超バフ飯:精霊の雫と完熟果実の魔力煮込み(コンポート)】

アキトの神速調理が、発酵した果実から「毒」となる成分だけをミリ秒単位で分離し、残った魔力の結晶を最高級の甘味へと変換する。


「お待たせ。冷めないうちに、陛下に食べさせてやってくれ」


皿の上に載ったのは、宝石のように輝く赤いコンポート。

女王が一口、そのシロップを喉に通した瞬間、謁見の間に「鐘の音」のような澄んだ魔力の共鳴が響き渡った。


「……っ!? な、なんだ……この、温かな力は……!」


女王の頬に赤みが差し、絶え絶えだった魔力の脈動が、力強い鼓動へと変わる。

アキトの料理に付与されたバフは【魔力根源の活性化】および【精霊との共鳴】。


女王の魔力が安定したその瞬間、王宮の中庭にある巨大な聖樹が、ボウッと淡い光を放ち始めた。


「ば、馬鹿な! 聖樹が……眠っていた聖樹が、自ら魔力を吸い上げ始めたぞ!」


宮廷魔導師たちが叫ぶ。

アキトは額の汗を拭い、呆然とする宮廷料理長に笑いかけた。

「魔法で無理やり流し込むから拒絶されるんだよ。腹を空かせてたのは、陛下だけじゃなくて聖樹も同じだ」


一方。

『鳳凰の絆』の拠点では。

更生を誓ったガストンたちが、ボロボロの箒を持って必死に拠点を掃除していた。

「アキト……。お前、いつもこんなに大変なことを、一瞬でやってたのかよ……」

彼らはようやく、自分たちが踏みにじっていた「日常」という名の奇跡に、本当の意味で気づき始めていた。


アキトの超バフ飯レシピ解説:完熟果実のコンポート

現実の「赤ワインとスパイスのフルーツコンポート」をベースに、疲労回復とエネルギー補給を極限まで高めたレシピだ。


■ 材料(1人分)

リンゴ、梨、または桃:1個


赤ワイン(またはブドウジュース):200ml


砂糖(または蜂蜜):大さじ3


シナモンスティック:1本


クローブ:2粒


レモン汁:少々


■ 料理のポイント

「神速の皮剥き」と表面積最大化:

アキトは果実の皮を一瞬で剥き、表面に微細な隠し包丁を入れる。これにより、煮込み時間を極短縮しながら、中心部まで味と栄養を浸透させる。


スパイスの薬効抽出:

シナモンやクローブを長時間煮ると苦味が出るが、アキトは「超振動」で香気成分と血行促進成分だけを秒速で抽出。女王の冷え切った体を内側から温める効果を狙っている。


アルコールの完全揮発と旨味の凝縮:

赤ワインを沸騰させる際、アキトは鍋の中の気圧を微調整。アルコール分を一瞬で飛ばし、ポリフェノールと旨味だけを凝縮させることで、衰弱した胃にも負担をかけない仕上がりにしている。

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